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25話 兄様の行方①
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「ヒギンズ伯爵、テオ団長についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?」
「ええ、私が知っていることでしたら……」
ヒギンズ伯爵の話によると、そのテオ団長は三年前に東の国リオーネ王国の辺境伯の騎士団に入り、世にも珍しい青い雷を剣をまとわせて戦いあっという間に魔物を制圧したという。
一年前に騎士団長へ任命されてからは魔物の被害がさらに減ったそうだ。
魔物の被害は各国でも頭を悩ませる問題で、外交担当のヒギンズ伯爵が視察に訪れ詳しく話を聞いたのがテオの存在を知るきっかけだった。
(青い雷の魔法剣——間違いない、テオ兄様だわ! でも兄様たちが養子に出されたのは八年前なのに、それまでの五年間はどうしていたの……?)
アマリリスは兄たちから一切の連絡がなかったことや、どこへ養子に出されたのかなんの情報もない。あまりの自分の無力さに奥歯を噛みしめる。
(兄様たちの身になにかがあったから、連絡すら寄越せなかったのよ。だって手紙が届いていたら、きっとケヴィンが渡してくれたはずだもの。それとも、その前にどこかで止めていた……?)
もしかしたら今更兄たちを探し出しても、迷惑なだけかもしれないとアマリリスはどこかで思っていたが、そんな杞憂は吹き飛んだ。
なんとしても兄とコンタクトを取り、会いたいという気持ちが込み上げる。
「ヒギンズ伯爵、お話を聞かせていただきありがとうございます」
「いえいえ、なにかありましたら、またお声がけください」
淑女の礼をして、アマリリスとルシアンは一旦バルコニーへ向かうことにした。
王城の庭園を眺められるバルコニーへ出ると会場内の騒めきが遠のき、兄の情報を掴んだアマリリスの熱は涼しい夜風に冷まされる。
ルシアンは侍従から受け取ったグラスを空にすると、静かに口を開いた。
「リリス。さっきのテオという騎士団長ってもしかして……」
「ええ、青い雷の魔法剣の使い手は、おそらくテオ兄様で間違いありませんわ」
アマリリスは確信に近いものがあった。
そもそも世界中で見たとしても魔法剣の使い手は百人前後で、その中でさらに雷魔法の使い手は二十人ほどだろう。さらに青い雷を操るとなるとほんの数人となる。
しかも二十代前半とテオドールと年齢も合致しており、他人だと思う方が難しい。
「テオドールに会いにいくの?」
珍しくルシアンの声が不安げに揺れている。
ルシアンはアマリリスが離れることが不安なのだろうと思い、問いかけに真摯に答えた。
「すぐにでも会いにいきたいと思っていますが……そのためにはルシアン様と国王陛下の許可が必要でございます。ですが、まだお役目を果たしておりませんので、すぐに行動するのは難しいと考えています」
「そう……リリスは、テオドールに会ったらどうするつもり?」
「私はただ、生き別れになってしまった兄様たちに会いたいだけです」
もしかしたらクレバリー侯爵家を取り戻せるかもしれないが、それについては正直なところあまり関心がない。ただ、兄たちの無事を確認して、昔のように家族としてそばにいたいだけだ。
ここで甘い言葉で安心させるのは簡単だが、例えルシアンが悲しむとしてもアマリリスは誠実でありたかった。三口ほど残っていたシャンパンを飲み干し、アマリリスは前を見据えてはっきりと自身の思いを言葉にする。
「ですので、ルシアン様の教育を早く終えて、テオ兄様に会いに行きますわ」
「……そう」
ルシアンは空になったグラスに視線を落とし、わずかに残っていたシャンパンをジッと眺めていた。
「ええ、私が知っていることでしたら……」
ヒギンズ伯爵の話によると、そのテオ団長は三年前に東の国リオーネ王国の辺境伯の騎士団に入り、世にも珍しい青い雷を剣をまとわせて戦いあっという間に魔物を制圧したという。
一年前に騎士団長へ任命されてからは魔物の被害がさらに減ったそうだ。
魔物の被害は各国でも頭を悩ませる問題で、外交担当のヒギンズ伯爵が視察に訪れ詳しく話を聞いたのがテオの存在を知るきっかけだった。
(青い雷の魔法剣——間違いない、テオ兄様だわ! でも兄様たちが養子に出されたのは八年前なのに、それまでの五年間はどうしていたの……?)
アマリリスは兄たちから一切の連絡がなかったことや、どこへ養子に出されたのかなんの情報もない。あまりの自分の無力さに奥歯を噛みしめる。
(兄様たちの身になにかがあったから、連絡すら寄越せなかったのよ。だって手紙が届いていたら、きっとケヴィンが渡してくれたはずだもの。それとも、その前にどこかで止めていた……?)
もしかしたら今更兄たちを探し出しても、迷惑なだけかもしれないとアマリリスはどこかで思っていたが、そんな杞憂は吹き飛んだ。
なんとしても兄とコンタクトを取り、会いたいという気持ちが込み上げる。
「ヒギンズ伯爵、お話を聞かせていただきありがとうございます」
「いえいえ、なにかありましたら、またお声がけください」
淑女の礼をして、アマリリスとルシアンは一旦バルコニーへ向かうことにした。
王城の庭園を眺められるバルコニーへ出ると会場内の騒めきが遠のき、兄の情報を掴んだアマリリスの熱は涼しい夜風に冷まされる。
ルシアンは侍従から受け取ったグラスを空にすると、静かに口を開いた。
「リリス。さっきのテオという騎士団長ってもしかして……」
「ええ、青い雷の魔法剣の使い手は、おそらくテオ兄様で間違いありませんわ」
アマリリスは確信に近いものがあった。
そもそも世界中で見たとしても魔法剣の使い手は百人前後で、その中でさらに雷魔法の使い手は二十人ほどだろう。さらに青い雷を操るとなるとほんの数人となる。
しかも二十代前半とテオドールと年齢も合致しており、他人だと思う方が難しい。
「テオドールに会いにいくの?」
珍しくルシアンの声が不安げに揺れている。
ルシアンはアマリリスが離れることが不安なのだろうと思い、問いかけに真摯に答えた。
「すぐにでも会いにいきたいと思っていますが……そのためにはルシアン様と国王陛下の許可が必要でございます。ですが、まだお役目を果たしておりませんので、すぐに行動するのは難しいと考えています」
「そう……リリスは、テオドールに会ったらどうするつもり?」
「私はただ、生き別れになってしまった兄様たちに会いたいだけです」
もしかしたらクレバリー侯爵家を取り戻せるかもしれないが、それについては正直なところあまり関心がない。ただ、兄たちの無事を確認して、昔のように家族としてそばにいたいだけだ。
ここで甘い言葉で安心させるのは簡単だが、例えルシアンが悲しむとしてもアマリリスは誠実でありたかった。三口ほど残っていたシャンパンを飲み干し、アマリリスは前を見据えてはっきりと自身の思いを言葉にする。
「ですので、ルシアン様の教育を早く終えて、テオ兄様に会いに行きますわ」
「……そう」
ルシアンは空になったグラスに視線を落とし、わずかに残っていたシャンパンをジッと眺めていた。
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