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58話 僕は思い悩む②
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大勢の前でリアは僕のものだと宣言したし、今日のデートではいわゆる恋人繋ぎをしてリアは僕のものだと知らしめた。
この指南書がなければ、手を繋ぐことすらなかったかもしれない。
僕が目下挑戦中なのは次の項目だ。
【お付き合い中級編 その⑧二回目のキスはしたか?】
そうだ、二回目のキスだ。
一度目は目的が明確だったのと勢いもあって実践できたが、二回目がなかなかうまくできなかった。
できることなら毎日したいくらいなのだが、如何せん僕は不器用なのでそういう流れに持っていけていない。
予習のためにも上級編まで目を通してはいるが、こちらはさらに過激だ。
同じキスでも、濃厚で具体的な方法まで書かれている。この項目が該当のものだ。
【お付き合い上級編 その⑤恋人をメロメロにさせよう!】
メロメロになるのは間違いなく僕だと断言できる。この指南書の通りのキスをして、自分を保てるのかすらわからない。
そもそもこの本は大衆向けであるから貴族の教育とはまだ別なのかもしれない。閨のことまで丁寧に説明されていた。
僕とリアは結婚するまでは清く正しい関係でいなければいけないが、後々参考になりそうだ。
ただ、なかなか刺激的なのでジークがいない時にこっそり読んでいる。
「ライオネル様の場合は、シチュエーションがよくてもヘタレすぎて行動に移せないので、いっそハーミリア様に気付いてもらうのはいかがですか?」
「リアに気付いてもらうか……だが、気付いてもらった後はどうすればいいのか。思い切って口づけさせてくれと頼んでみるか?」
「いやいやいやいや、直接頼むのだけはやめてください。ライオネル様の鬼気迫る様子で頼んだら雰囲気とか台無しですよ。絶対にやっちゃダメです」
「そ、そうか……」
やはりジークに相談して正解だった。
次にダメなら真剣に頼んでみようかと思っていたのだ。
「いいですか、ベストなのはハーミリア様に空気で察してもらって、ご対応いただくことです。ハーミリア様が目を閉じて待ってくだされば、さすがにライオネル様も本懐を遂げられるでしょう?」
「リアが瞳を閉じて……う、うん、大丈夫だと、思う」
まずい想像しただけで、心臓がバクバクとうるさい。僕を見上げて瞳を閉じたリアはなんて危険なんだっ!
「はー、あんまり気が進みませんが練習しますか?」
「頼めるのか!?」
「ライオネル様のためですから、協力しますよ」
嫌そうなジークには申し訳ないが、やはり練習しないと自信がないので頼むことにした。
「それじゃあ、私がライオネル様役を一旦やりますから、その後同じように私にやってみてください」
「わかった」
僕の方が身長が高くてやりづらいという理由で、ジークは立ったままで僕はソファーに座ったまま教えてもらう。
確かにリアは僕の肩より少し低いくらいだから、この高さがちょうどいいようだ。
「くっそ、これがお嬢様なら役得なのに……ていうかいっそ実地訓練するのに……!」
ジークがなにか呟いているけど、よく聞こえない。きっとジークなりにいろいろと考えくれているのだと思う。
「はあ、よし。いきますよ、ライオネル様」
「ああ、よろしく頼む!」
ジークは僕が腰掛けているソファーの前にやってくる。
ソファーに片膝を乗せて、僕を挟み込むようにソファーの背もたれに手をついた。
ジークの瞳は真剣そのもので、これが女性だったなら確かに胸がときめくだろう。ジークの紅い瞳が熱に浮かされたみたいに揺れていた。
「なにを考えてるんですか? 余計なことは考えちゃダメでしょう?」
「いや、余計なことなど……」
ここでジークの人差し指が僕の唇に触れて、言葉を続けさせてもらえない。
「今は私のことだけ見て、私のことだけ考えてください」
そう言って、ゆっくりと紅い瞳が近づいてくる。
僕は思わず目を閉じた。
「はいっ! こんな感じです! どうですか?」
「っ! こ、これはなかなか難しいな……!」
「うーん、そうですねえ、全部を同じにしなくてもいいんですけど、空気の作り方はこんな感じです。さすがに通信機は映像も入っちゃうんで使えないですし、後は練習して頑張ってください」
一瞬で切り替えたジークが「場所交代です」と言って、ソファーに腰を下ろす。
さっきのやり方でリアにアピールできるように、練習をするしかない。
「ジーク、ダメなところは遠慮なく言ってくれ」
「わかりました。今回はさっさと終わらせたいんで、遠慮しません」
その後、本当にズケズケと遠慮なく的確な指摘をもらい、なんとかジークの許可が出るまで頑張った。
この指南書がなければ、手を繋ぐことすらなかったかもしれない。
僕が目下挑戦中なのは次の項目だ。
【お付き合い中級編 その⑧二回目のキスはしたか?】
そうだ、二回目のキスだ。
一度目は目的が明確だったのと勢いもあって実践できたが、二回目がなかなかうまくできなかった。
できることなら毎日したいくらいなのだが、如何せん僕は不器用なのでそういう流れに持っていけていない。
予習のためにも上級編まで目を通してはいるが、こちらはさらに過激だ。
同じキスでも、濃厚で具体的な方法まで書かれている。この項目が該当のものだ。
【お付き合い上級編 その⑤恋人をメロメロにさせよう!】
メロメロになるのは間違いなく僕だと断言できる。この指南書の通りのキスをして、自分を保てるのかすらわからない。
そもそもこの本は大衆向けであるから貴族の教育とはまだ別なのかもしれない。閨のことまで丁寧に説明されていた。
僕とリアは結婚するまでは清く正しい関係でいなければいけないが、後々参考になりそうだ。
ただ、なかなか刺激的なのでジークがいない時にこっそり読んでいる。
「ライオネル様の場合は、シチュエーションがよくてもヘタレすぎて行動に移せないので、いっそハーミリア様に気付いてもらうのはいかがですか?」
「リアに気付いてもらうか……だが、気付いてもらった後はどうすればいいのか。思い切って口づけさせてくれと頼んでみるか?」
「いやいやいやいや、直接頼むのだけはやめてください。ライオネル様の鬼気迫る様子で頼んだら雰囲気とか台無しですよ。絶対にやっちゃダメです」
「そ、そうか……」
やはりジークに相談して正解だった。
次にダメなら真剣に頼んでみようかと思っていたのだ。
「いいですか、ベストなのはハーミリア様に空気で察してもらって、ご対応いただくことです。ハーミリア様が目を閉じて待ってくだされば、さすがにライオネル様も本懐を遂げられるでしょう?」
「リアが瞳を閉じて……う、うん、大丈夫だと、思う」
まずい想像しただけで、心臓がバクバクとうるさい。僕を見上げて瞳を閉じたリアはなんて危険なんだっ!
「はー、あんまり気が進みませんが練習しますか?」
「頼めるのか!?」
「ライオネル様のためですから、協力しますよ」
嫌そうなジークには申し訳ないが、やはり練習しないと自信がないので頼むことにした。
「それじゃあ、私がライオネル様役を一旦やりますから、その後同じように私にやってみてください」
「わかった」
僕の方が身長が高くてやりづらいという理由で、ジークは立ったままで僕はソファーに座ったまま教えてもらう。
確かにリアは僕の肩より少し低いくらいだから、この高さがちょうどいいようだ。
「くっそ、これがお嬢様なら役得なのに……ていうかいっそ実地訓練するのに……!」
ジークがなにか呟いているけど、よく聞こえない。きっとジークなりにいろいろと考えくれているのだと思う。
「はあ、よし。いきますよ、ライオネル様」
「ああ、よろしく頼む!」
ジークは僕が腰掛けているソファーの前にやってくる。
ソファーに片膝を乗せて、僕を挟み込むようにソファーの背もたれに手をついた。
ジークの瞳は真剣そのもので、これが女性だったなら確かに胸がときめくだろう。ジークの紅い瞳が熱に浮かされたみたいに揺れていた。
「なにを考えてるんですか? 余計なことは考えちゃダメでしょう?」
「いや、余計なことなど……」
ここでジークの人差し指が僕の唇に触れて、言葉を続けさせてもらえない。
「今は私のことだけ見て、私のことだけ考えてください」
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「うーん、そうですねえ、全部を同じにしなくてもいいんですけど、空気の作り方はこんな感じです。さすがに通信機は映像も入っちゃうんで使えないですし、後は練習して頑張ってください」
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さっきのやり方でリアにアピールできるように、練習をするしかない。
「ジーク、ダメなところは遠慮なく言ってくれ」
「わかりました。今回はさっさと終わらせたいんで、遠慮しません」
その後、本当にズケズケと遠慮なく的確な指摘をもらい、なんとかジークの許可が出るまで頑張った。
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