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54話 収穫祭でデートですわ!!②
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当日はわたくしがシルビア様のお屋敷にお邪魔して準備を整えてもらっていた。
時間になれば王太子殿下とライル様が乗った馬車が迎えにくる手筈だ。
警備の兼ね合いもあるので、王都の中心部までは飾りのない馬車で向かうことになっている。
「シルビア様! 本当の女神様のようですわー!! 王太子殿下がこの美しさに失神してしまわないかしら?」
「ハーミリアさんも、なんてキュートなのかしら! これならライオネル様の心に一生残るわ!」
シルビア様は月の女神アルテミスに、わたくしは魔女の使役する黒猫を模した仮装をしていた。
スタイルのいいシルビア様はヒラヒラと舞うような純白のドレスを着こなし、優雅な立ち居振る舞いで見るものを魅了している。
いつもはきっちり巻いている水色の髪は、緩くウェーブをつけて下ろしていて妖艶な美女となっていた。
わたくしは髪の色を魔道具で黒に変えて、猫耳をつけて膝丈のレースがあしらわれた黒いドレスに尻尾をつけた衣装に身を包んでいる。
手には触感にこだわった肉球付きの手袋をはめて、蜘蛛の巣模様のストッキングに黒のショートブーツを合わせた。首元のチョーカーには猫らしく鈴もあしらっている。
ふたりで鏡の前で褒めたたえあっていたら、家令から声がかかった。
「シルビア様、ハーミリア様、王太子殿下とライオネル様がお迎えにいらっしゃいました」
「わかったわ、今行きます」
迎えにきたライル様たちの前に姿を現すと、ピシリと固まったまま動かなくなった。
わたくしもライル様の仮装のレベルの高さに、息が止まるほどの衝撃を受けた。
漆黒のマントをはおり、血を思わせるようなベストに細身の黒いパンツを合わせ、繊細な刺繍が施されたシフォンブラウスの首元には真っ赤なシミがついていた。
口元には鋭い牙をはめて、乙女を狙うヴァンパイア姿のライル様が佇んでいた。
嫌だわ、カッコよすぎるのよ——っ!!
ライル様にならわたくしの血でも心でも捧げますわ——!!!!
ちなみに王太子殿下は頭から爪先まで包帯に巻かれ血に塗れたミイラ男に仮装していた。なるほど、これなら王太子殿下だとわからない。
そして当然だがシルビア様の女神っぷりに圧倒されて、なにも言えないでいた。
女神とミイラ男が並んだ異様さにはそっと目をつぶった。
それよりもライル様だ。このまま外に出たら、女性が寄ってきて危険ではないかしら!?
どうしましょう、今から参加を取りやめる方法はないの!?
「リア、今日の収穫祭に行くのを止めないか?」
「まあ、ライル様。奇遇ですけれど、わたくしも同じことを考えてましたの」
「おい、ふたりともなにを言っている。今日のために死に物狂いで公務も片付けてきたんだ。絶対に取りやめないぞ」
「そうですわ! 私、ハーミリアさんとも収穫祭を楽しみたいのよ」
あっけなく王太子殿下とシルビア様に反対されてしまった。当然なのだが、ライル様が他の女性に言い寄られるのではないかと不安になってしまう。
「リア、すまない。あまりにも可憐でかわいくて僕だけが今のリアを堪能したいと思ってしまった」
「いいえ、わたくしもライル様があまりにも素敵で他の女性に言い寄られるのではと不安になってしまったのです」
「それなら心配いらない。僕はリアしか目に入らない」
「わかったから、そろそろ行くぞ」
王太子殿下の声でわたくしたちは馬車に乗り込み、大広場を目指した。
時間になれば王太子殿下とライル様が乗った馬車が迎えにくる手筈だ。
警備の兼ね合いもあるので、王都の中心部までは飾りのない馬車で向かうことになっている。
「シルビア様! 本当の女神様のようですわー!! 王太子殿下がこの美しさに失神してしまわないかしら?」
「ハーミリアさんも、なんてキュートなのかしら! これならライオネル様の心に一生残るわ!」
シルビア様は月の女神アルテミスに、わたくしは魔女の使役する黒猫を模した仮装をしていた。
スタイルのいいシルビア様はヒラヒラと舞うような純白のドレスを着こなし、優雅な立ち居振る舞いで見るものを魅了している。
いつもはきっちり巻いている水色の髪は、緩くウェーブをつけて下ろしていて妖艶な美女となっていた。
わたくしは髪の色を魔道具で黒に変えて、猫耳をつけて膝丈のレースがあしらわれた黒いドレスに尻尾をつけた衣装に身を包んでいる。
手には触感にこだわった肉球付きの手袋をはめて、蜘蛛の巣模様のストッキングに黒のショートブーツを合わせた。首元のチョーカーには猫らしく鈴もあしらっている。
ふたりで鏡の前で褒めたたえあっていたら、家令から声がかかった。
「シルビア様、ハーミリア様、王太子殿下とライオネル様がお迎えにいらっしゃいました」
「わかったわ、今行きます」
迎えにきたライル様たちの前に姿を現すと、ピシリと固まったまま動かなくなった。
わたくしもライル様の仮装のレベルの高さに、息が止まるほどの衝撃を受けた。
漆黒のマントをはおり、血を思わせるようなベストに細身の黒いパンツを合わせ、繊細な刺繍が施されたシフォンブラウスの首元には真っ赤なシミがついていた。
口元には鋭い牙をはめて、乙女を狙うヴァンパイア姿のライル様が佇んでいた。
嫌だわ、カッコよすぎるのよ——っ!!
ライル様にならわたくしの血でも心でも捧げますわ——!!!!
ちなみに王太子殿下は頭から爪先まで包帯に巻かれ血に塗れたミイラ男に仮装していた。なるほど、これなら王太子殿下だとわからない。
そして当然だがシルビア様の女神っぷりに圧倒されて、なにも言えないでいた。
女神とミイラ男が並んだ異様さにはそっと目をつぶった。
それよりもライル様だ。このまま外に出たら、女性が寄ってきて危険ではないかしら!?
どうしましょう、今から参加を取りやめる方法はないの!?
「リア、今日の収穫祭に行くのを止めないか?」
「まあ、ライル様。奇遇ですけれど、わたくしも同じことを考えてましたの」
「おい、ふたりともなにを言っている。今日のために死に物狂いで公務も片付けてきたんだ。絶対に取りやめないぞ」
「そうですわ! 私、ハーミリアさんとも収穫祭を楽しみたいのよ」
あっけなく王太子殿下とシルビア様に反対されてしまった。当然なのだが、ライル様が他の女性に言い寄られるのではないかと不安になってしまう。
「リア、すまない。あまりにも可憐でかわいくて僕だけが今のリアを堪能したいと思ってしまった」
「いいえ、わたくしもライル様があまりにも素敵で他の女性に言い寄られるのではと不安になってしまったのです」
「それなら心配いらない。僕はリアしか目に入らない」
「わかったから、そろそろ行くぞ」
王太子殿下の声でわたくしたちは馬車に乗り込み、大広場を目指した。
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