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43話 僕のハーミリアを守るために①

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 ——まだ足りない。
 僕の愛する人を守るために、まだ足りないものがある。

 ありとあらゆる害悪を排除する方法はないのか?
 そこで導き出された答えはひとつ。王族が権力や立場を使って害してくるなら、それ以上のもので叩き潰せばいい。

 僕は基本的に争い事は苦手だけど、リアを傷つける存在なら話は別だ。
 彼女の一片の曇りもない笑顔を守るためなら、全力で敵を排除する。
 それができるのは、この世界で認められる至高の存在。魔法連盟が認定する『マジックエンペラー』だけだ。

 あらゆる王族や皇帝までもがひざまずき、魔法連盟に所属する魔道士たちを束ねるこの世界の神。
 リアをこの手で守るため、僕は神になる。



 殿下に王女の処分を確認した後、僕は真っ直ぐにタックス侯爵家の屋敷へ戻った。
 ジークには今日の出来事を話して、僕の代わりにリアを毎日送迎すること、これからやろうとしていることを伝えておいた。

「ライオネル様、本気で言ってます?」
「なんにだってなってみせるさ、リアのためなら」
「はあ、さすがにマジックエンペラーを目指すとは思いませんでしたけど」
「それくらいでないと、何者からもリアを守れないとわかったんだ。いつもみたいにできるまで努力するだけだ」

 ただひとつ気がかりなのは、この認定試験は外界との接触を絶たなければいけないということだ。調べたところ、特殊な結界の中で試験を受けるらしい。これは万全の準備をしていかないと試験どころではない。

 殿下宛ともう一通、僕がいない間にリアのことを頼める人物シルビア公爵令嬢に手紙を書いた。なにかあれば魔法連盟宛に知らせを出してほしいこと、できるだけリアの力になってほしいとそれぞれに依頼する。
 万が一僕がいない時にリアの領地に被害が出ては困るから、全員に口止めしてある。

「よし、準備は整った。父上に挨拶してから行く。ジーク、リアを頼む」
「はい、お気を付けて。ハーミリア様ができるだけ平穏に過ごせるように尽力いたします」

 そうして父上に、なにがあってもリアとの婚約を破棄や解消はしないと宣言し、魔法連盟に行くと報告して屋敷を旅立った。



 僕たちの国がある大陸から南へ三百キロメートル進んだ海の上に、巨城が宙に浮いている。魔法の力なのか特別な魔石を使っているのか、その海のど真ん中に浮いている城が魔法連盟の拠点となっていた。
 当然空中に浮いているので、船でやってきても上陸できない。

 魔法を使って空から入らなければ、受け入れてすらもらえないのだ。空を飛べるくらいの風魔法は操れたので、難なく魔法連盟の城門へとやってきた。

 ここで第二の関門だ。城門には透明の魔石が嵌め込まれていて、鍵の役目を果たしているらしい。魔石の横に掲示されている説明では、一定以上の魔力を込めなければ扉は開かないと書かれている。

「属性は問わずか……それなら」

 僕は得意の氷属性の魔力を込めた。透明の魔石から光が流れ、城門いっぱいに装飾されている幾何学模様へと流れていく。やがてゆっくりと扉は開かれた。

「よし、最短で終わらせて戻ろう」

 城の中に入るとグレーのレンガ造りでガッチリとした建物で、華美な装飾はなく質素な印象を受けた。目の前に受付らしきものがあったので、受付の女性に声をかけた。

「すみません、ここで認定魔道士の試験を受けられると聞いてきたのですが」
「はい、受けられますよ。初めての受験ですか?」
「そうです、マジックエンペラーの認定試験をお願いしたい」
「えっ!? 初めてでマジックエンペラーですか!?」

 女性の声に周囲の注目が集まった。



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