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91話 隊長はエゲツない強さでした

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 リンゼイ隊長との勝負は2日後に練習場で行われることになった。SSSランクハンター同士の遠慮のない勝負ということで、念のためウラノスに観戦者や建物自体にも結界を張ってもらう。

 いまアトリアにいる特務隊のメンバーはもちろん、ファルコ団長を連れてランベール国王まで観戦に来ていた。国王は実力の確認のためとか言ってるけど、ワクワクした顔を隠せていない。本当Sランクハンターってこんなのばっかりだ。


 クレイグに聞いた情報だと、隊長は全属性の魔法が使えるうえに剣の腕も一流だ。遠距離も近距離も強いとか反則に近いんじゃないかと思う。国内最強というのもうなづける。
 だけど、オレも目的の為にこの勝負に勝たないといけない。確実にレグルスを葬るためには、特務隊の協力もほしいんだ。


「では始めるぞ」

「よろしくお願いします」

 隊長が両手をかざして構える。まだ腰にさした剣は使わないようだ。

「リュカオン、やるぞ」

『一番手ごたえのありそうな奴だな』

「そうだな、最初から全力で行く。うなれ、雷神」

 雷神の青い剣身から雷魔法が躍り出ている。バチバチと音を鳴らしながら、獲物はどこだと探しているようだ。オレは魔力を体中に巡らせて、身体能力も上げていく。

 エンジンがかかった状態で、まずは隊長の死角から攻め込んだ。それを見越していたかのように、雷魔法が効きにくい土魔法で防御される。

大地の守り ロック・ガード

 そしてガードされたと思った瞬間には、次の攻撃魔法が放たれた。

氷の骸骨龍 アイシクル・ボーン

 氷魔法か! それなら雷魔法で相殺する!

青い雷龍 ブルー・ラグロス!」

 冷気をまとう白い龍と、雷をまとう青龍がぶつかり合って白霧に変わる。衝撃を受け流して雷神を振り切った。

 ガキィィィン!!

 隊長は腰にさしていた剣を引き抜いていた。黒い剣身の片手剣だ。オレの雷神は片手で受け止められている。

「喰い尽せ、闇星 やみぼし

 黒い剣身から闇魔法があふれて、雷神の魔力を吸っていく。
 隊長相手じゃ、クレイグに使った方法は効かないだろうな。

青い一撃 ブルー・インパクト

 雷魔法で隊長の意識がそれた瞬間に、距離をとった。今度は隊長から次々と魔法攻撃が繰り出される。

「ファイアストーム」
「ショック・ウォーター」
「サンダーボルト」
「ロック・ランス」
「アイス・ブリザード」

 間違いなく今まで戦った相手の中で最強だった。炎魔法が来たかと思えば水魔法が来る。そうかと思えば雷魔法が来て、土魔法で攻撃もしてくる。
 魔法の属性が変われば、攻撃範囲や躱し方も変わってくる。後手後手に回っていた。



     ***



 ランベール国王は全く違和感なくハンターたちに馴染んで観戦している。思わずこぼした言葉に返したのはクレイグだった。

「うわ、リンゼイの奴本気だな」
 
「だって奥さんと離れるから、出張は絶対に行きたくないって言ってましたよ」

 クレイグに相槌を打つのはオリヴァーだ。年の近いふたりは特別仲がよかった。

「レグルス討伐だと1週間はかかるもんな」

「あぁ、それは全力でつぶしに来ますね」

 納得といった表情でララも相槌を打つ。オリヴァーは隊長就任時の逸話を思い出していた。

「そうそう、奥さんと娘と離れるくらいなら隊長やって毎日家に帰るってなったんだもんな」

「だからこそ、今回の対決を組んだんだよ。これでどちらが負けたにしても、実力の証明にもなるし納得できるだろう? 何より僕がこの対決を見たかったしね」

 ランベール国王はとても爽やかな笑顔で、ポロリと今回の大戦を組んだ理由を口にした。

(((……ホントいつも黒いな、この人)))

 その場にいた隊員たちは同じことを思うが、この興味深い対戦を実現したのも国王なのだ。誰も文句はなかった。ちなみに、リナとウラノスはカイトの応援に夢中で、この会話は全く聞いていなかった。


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