75 / 104
75話 飛べない不死鳥が仲間になりました
しおりを挟む
「オレのところに来たいのか?」
「はい、カイトさんのところがいいんです。お願いできませんか?」
まさか、そんなこと言われるとは思わなかった。聖獣ってどういう扱いになるんだろう? 寮につれて行けるのか?
「戻りたいとか、ないのか?」
「さっきお話しした状況なので、特に戻りたいとも思いません」
「そうか……」
たしかに、さっき聞いた話は本当ならウラノスはどれほど辛い思いをしてきたんだろう。そんなヤツをオレは放っておけない。……痛いほど気持ちがわかるから。
リナにも視線をむけると、問題ないとうなずいてくれた。
「わかった。ウラノス、お前の都合のいい間だけオレのパーティーに入れよ。そうしたら少なくとも衣食住は心配しなくていいから」
「本当ですか!? ありがとうございます!! ありがとうございます!! 役立たずですが、精一杯がんばります!!」
「…………聖獣も仲間にするなんて、さすがカイトだよ」
あれ、なんかレモニーさんの顔が引きつってる。いや、でもこんな不憫な不死鳥おいて行けないだろ? というか、不死鳥の姿だと目立つな……。
「あのさ、ウラノスは人の姿になれないのか?」
「ごめんなさい、私は魔力の扱いが下手くそで空も飛べないんです。得意のはずの聖魔法と炎魔法も使えなくて……」
『カイト、こいつはまだ未成熟なのに魔力が多すぎて、上手く操れんのだ。そうだな、リナが魔力を吸ったらちょうどよいのではないか?』
「そうなのか? リナ頼める?」
リュカオンの声はレモニーさんには届いていないので、不思議そうな顔をしている。ウラノスには声が聞こえているのか、キョロキョロ辺りを見まわしていた。
『リナの訓練にもなって、一石二鳥だな。ククク……』
「リュカオンが鬼すぎる……」
リナはゲンナリしながらも、マジックイーターの魔力吸引量を調整し始めた。ウラノスはリナが手をかざすと、どんどんスッキリした顔になっていく。
「え? え? 何をしたんですか?? なんだか今までにないくらい、調子がいいんですけど!」
「こんなもんかな? ウラノス、いま私が魔力を吸ったから、ちょっと魔法使ってみて」
「えええ!? 本当ですか!? そんなことできるなんて……じゃぁ、試してみます」
ウラノスはリナの膝から降りて、何もない空中にむけて魔法を放った。
「聖なる雨」
その下には観葉植物があって、淡い金色の光が降り注いでいる。光を浴びた枯れかの葉は緑色に復活して、垂れ下がりそうだった枝はシャッキリと上をむいていく。
正しく回復魔法がかけられていた。しかも、聖魔法が得意な不死鳥だけに効果は抜群だ。
「ウソ!? ちゃんとできた!?」
『そうだ、お前はまだ年若い聖獣であろう。未熟ゆえ魔力が扱いきれておらんのだ』
「そうだったんだ……というか、この声の主はどなたですか?」
『リュカオンだ。千年前は魔獣王と呼ばれていた』
「リュカオン!? 聞いたことあります!! 近寄ってはいけないと……あ、もう遅いですね」
たまりかねたレモニーさんが、訳がわからないと声をかけて来た。
「ねえ、さっきから話が飛び飛びでよくわからないんだけど……」
「リュカオン、あとでレモニーさんと一戦交えるから頼む」
そうだよな、申し訳ないことをした。こう言えばリュカオンが喜ぶから、声が聞こえるようになるはずだ。実際に特務隊のメンバーもあの洗礼のおかげで話せるようになったからな。まぁ、みんなそこそこ驚いてたけど。
『そうか! そういうことなら早く言うのだ!』
「うわ! なんだ!? 誰だ!?」
『レモニーといったか、我はリュカオンだ。あとでカイトと戦うと聞いておる。よろしく頼むぞ』
「あー、そうか! そういうことだったんだ! わかった、いいよ。カイトと手合わせもしよう」
パーティーメンバーの他は、戦ったヤツとしか話さないとか……ズルいぞ、リュカオン。
「じゃぁ、ウラノスは人の姿になれるか試してみてよ。念のため聞くけど、女の子でいいんだよな?」
「はい! 間違いありません!」
「それなら、私が準備を整えてあげる。一旦宿屋に戻るね。ウラノス、おいで」
そういってリナとウラノスは医務室を後にした。
「はい、カイトさんのところがいいんです。お願いできませんか?」
まさか、そんなこと言われるとは思わなかった。聖獣ってどういう扱いになるんだろう? 寮につれて行けるのか?
「戻りたいとか、ないのか?」
「さっきお話しした状況なので、特に戻りたいとも思いません」
「そうか……」
たしかに、さっき聞いた話は本当ならウラノスはどれほど辛い思いをしてきたんだろう。そんなヤツをオレは放っておけない。……痛いほど気持ちがわかるから。
リナにも視線をむけると、問題ないとうなずいてくれた。
「わかった。ウラノス、お前の都合のいい間だけオレのパーティーに入れよ。そうしたら少なくとも衣食住は心配しなくていいから」
「本当ですか!? ありがとうございます!! ありがとうございます!! 役立たずですが、精一杯がんばります!!」
「…………聖獣も仲間にするなんて、さすがカイトだよ」
あれ、なんかレモニーさんの顔が引きつってる。いや、でもこんな不憫な不死鳥おいて行けないだろ? というか、不死鳥の姿だと目立つな……。
「あのさ、ウラノスは人の姿になれないのか?」
「ごめんなさい、私は魔力の扱いが下手くそで空も飛べないんです。得意のはずの聖魔法と炎魔法も使えなくて……」
『カイト、こいつはまだ未成熟なのに魔力が多すぎて、上手く操れんのだ。そうだな、リナが魔力を吸ったらちょうどよいのではないか?』
「そうなのか? リナ頼める?」
リュカオンの声はレモニーさんには届いていないので、不思議そうな顔をしている。ウラノスには声が聞こえているのか、キョロキョロ辺りを見まわしていた。
『リナの訓練にもなって、一石二鳥だな。ククク……』
「リュカオンが鬼すぎる……」
リナはゲンナリしながらも、マジックイーターの魔力吸引量を調整し始めた。ウラノスはリナが手をかざすと、どんどんスッキリした顔になっていく。
「え? え? 何をしたんですか?? なんだか今までにないくらい、調子がいいんですけど!」
「こんなもんかな? ウラノス、いま私が魔力を吸ったから、ちょっと魔法使ってみて」
「えええ!? 本当ですか!? そんなことできるなんて……じゃぁ、試してみます」
ウラノスはリナの膝から降りて、何もない空中にむけて魔法を放った。
「聖なる雨」
その下には観葉植物があって、淡い金色の光が降り注いでいる。光を浴びた枯れかの葉は緑色に復活して、垂れ下がりそうだった枝はシャッキリと上をむいていく。
正しく回復魔法がかけられていた。しかも、聖魔法が得意な不死鳥だけに効果は抜群だ。
「ウソ!? ちゃんとできた!?」
『そうだ、お前はまだ年若い聖獣であろう。未熟ゆえ魔力が扱いきれておらんのだ』
「そうだったんだ……というか、この声の主はどなたですか?」
『リュカオンだ。千年前は魔獣王と呼ばれていた』
「リュカオン!? 聞いたことあります!! 近寄ってはいけないと……あ、もう遅いですね」
たまりかねたレモニーさんが、訳がわからないと声をかけて来た。
「ねえ、さっきから話が飛び飛びでよくわからないんだけど……」
「リュカオン、あとでレモニーさんと一戦交えるから頼む」
そうだよな、申し訳ないことをした。こう言えばリュカオンが喜ぶから、声が聞こえるようになるはずだ。実際に特務隊のメンバーもあの洗礼のおかげで話せるようになったからな。まぁ、みんなそこそこ驚いてたけど。
『そうか! そういうことなら早く言うのだ!』
「うわ! なんだ!? 誰だ!?」
『レモニーといったか、我はリュカオンだ。あとでカイトと戦うと聞いておる。よろしく頼むぞ』
「あー、そうか! そういうことだったんだ! わかった、いいよ。カイトと手合わせもしよう」
パーティーメンバーの他は、戦ったヤツとしか話さないとか……ズルいぞ、リュカオン。
「じゃぁ、ウラノスは人の姿になれるか試してみてよ。念のため聞くけど、女の子でいいんだよな?」
「はい! 間違いありません!」
「それなら、私が準備を整えてあげる。一旦宿屋に戻るね。ウラノス、おいで」
そういってリナとウラノスは医務室を後にした。
1
お気に入りに追加
1,665
あなたにおすすめの小説
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します
名無し
ファンタジー
レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。
彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる