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74話 私はこの人にすべてを賭けます
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初めてみる外の世界は、色彩にあふれてとてもキレイだった。炎極の谷は岩ばかりだったから、とても新鮮ですべてのものに心がときめいた。
でも、さすがに仲間と離れるのは怖くて、ずっと寄り添っていた。
「おい、ウラノス少し離れろよ。近すぎるよ」
「あ、ごめんね。初めてだから怖くて……」
「大丈夫だよ。この辺は人間も来ないしさ」
「うん……でも、やっぱり怖いよ」
「あー、もうウザいんだよ! いいから離れろ!」
ツワイスは急に機嫌が悪くなって怒りだした。私はビックリして、謝ることしかできない。
「ご、ごめんなさい!」
「はー、面倒くせぇ奴……もうこの辺でいいか」
私が離れた途端にツワイスは空へ羽ばたいていく。
「え……ツワイス! 待って! ねえ、私帰れないよ!!」
「あはは、お前バカだなぁ! 俺が本気で誘うと思ってんの? しばらくそこでベソでもかいてろよ!」
「そんな! 待って! ねえ、ツワイス!! 待ってー!!」
「気がむいたら、あとで迎えに来てやるよ!」
そうしてツワイスは飛び去ってしまった。
私は途方に暮れた。空も飛べなければ、不死鳥が得意な聖魔法も炎魔法も使えないのだ。もし魔獣や人間につかまったら、どうなるかわからない。
怖かったけど、どうにかしたくて山の中をさまよっていた。そこで出会ったのは、5人の人間の男たちだった。全員蛇のマークがついたバンダナをつけている。なんだか怖い雰囲気だったから逃げようと思ったけど、すぐに捕まってしまった。
「何でこんなところに聖獣がいるんだ?」
「さあな、でもコイツ使えば魔獣をおびき寄せられるぜ」
「それいいな! コイツを餌にして魔獣を狩りまくれば楽勝じゃん!」
「じゃぁ、逃げ出さないように首輪つけるか」
「飛んで行かれたら困るからな。逃げようとしたら雷魔法が流れるヤツにしようぜ」
「よし、これでいいな。ほら、魔獣の餌になって来い!」
餌……? 私は魔獣の餌にされるの!?
それからは魔獣に食べられないように、必死に逃げた。男たちは魔獣を狩って生活する、ハンターと呼ばれる者たちだった。何度も餌にされて、その度に逃げまどう。地獄のような日々だった。
でも10日前のことだ。いつものように餌として、魔獣に追いかけられていた。でも今回は白い大きな熊みたいな魔獣が、いきなり6匹も出てきた。ハンターたちは、顔を青くしてあわてて逃げていった。
いつものように魔獣を狩ってくれない。これは、逃げ切らないと食べられてしまう!
私は山の中を走り抜けた。いま自分がどこにいるのかなんて、わからない。ただ食べられないように、逃げていた。途中で何度も首輪から雷魔法が放たれたけど、歯を食いしばって走ったんだ。
だって、何にもできない役立たずかもしれないけど、あのキラキラした色彩あふれる世界を、もう一度見たかった。
そうして見つけたのが、あの洞窟だった。熊の魔獣がどうなったのか、ハンターたちがどうなったのかはわからない。
洞窟の入り口に、ありったけの魔力を込めて結界を張って眠ったのが最後の記憶だった。
***
「すみません、長々と話してしまって」
シンとしてるので、私の話し方が悪かったのかと謝った。すると私を抱いているリナという女の子が、ギュッと強く抱きしめてくれた。
「ウラノスは、これからどうしたい?」
最初に部屋にいた黒髪の男、カイトが優しく尋ねてくる。
私はどうしたいんだろう? 元の場所に戻りたい? あの岩だらけの炎極の谷へ戻って、また笑われながら生きていくの? それは、イヤだ。
じゃぁ、あのハンターの元にもどる? いや、あんな地獄はもう二度と味わいたくない。
それともひとりで生きていく? 私が? ううん、空も飛べない、魔法もろくに使えない私は、すぐに魔獣に喰われてしまうだろう。
それなら、この人間はどうだろう? あのハンターたちとは全然違って、とても優しい感じがする。
暖かい寝床と食事も用意してくれた。怪我をしたはずの左足も、全然痛くないから治してくれたんだろう。
この人間なら、信じてもいいのかもしれない。何より、もうこの人間しか頼れるところなんてない。
「もし、できるならカイトさんのところに、置いてもらえませんか?」
私は、この人に賭けてみる————
でも、さすがに仲間と離れるのは怖くて、ずっと寄り添っていた。
「おい、ウラノス少し離れろよ。近すぎるよ」
「あ、ごめんね。初めてだから怖くて……」
「大丈夫だよ。この辺は人間も来ないしさ」
「うん……でも、やっぱり怖いよ」
「あー、もうウザいんだよ! いいから離れろ!」
ツワイスは急に機嫌が悪くなって怒りだした。私はビックリして、謝ることしかできない。
「ご、ごめんなさい!」
「はー、面倒くせぇ奴……もうこの辺でいいか」
私が離れた途端にツワイスは空へ羽ばたいていく。
「え……ツワイス! 待って! ねえ、私帰れないよ!!」
「あはは、お前バカだなぁ! 俺が本気で誘うと思ってんの? しばらくそこでベソでもかいてろよ!」
「そんな! 待って! ねえ、ツワイス!! 待ってー!!」
「気がむいたら、あとで迎えに来てやるよ!」
そうしてツワイスは飛び去ってしまった。
私は途方に暮れた。空も飛べなければ、不死鳥が得意な聖魔法も炎魔法も使えないのだ。もし魔獣や人間につかまったら、どうなるかわからない。
怖かったけど、どうにかしたくて山の中をさまよっていた。そこで出会ったのは、5人の人間の男たちだった。全員蛇のマークがついたバンダナをつけている。なんだか怖い雰囲気だったから逃げようと思ったけど、すぐに捕まってしまった。
「何でこんなところに聖獣がいるんだ?」
「さあな、でもコイツ使えば魔獣をおびき寄せられるぜ」
「それいいな! コイツを餌にして魔獣を狩りまくれば楽勝じゃん!」
「じゃぁ、逃げ出さないように首輪つけるか」
「飛んで行かれたら困るからな。逃げようとしたら雷魔法が流れるヤツにしようぜ」
「よし、これでいいな。ほら、魔獣の餌になって来い!」
餌……? 私は魔獣の餌にされるの!?
それからは魔獣に食べられないように、必死に逃げた。男たちは魔獣を狩って生活する、ハンターと呼ばれる者たちだった。何度も餌にされて、その度に逃げまどう。地獄のような日々だった。
でも10日前のことだ。いつものように餌として、魔獣に追いかけられていた。でも今回は白い大きな熊みたいな魔獣が、いきなり6匹も出てきた。ハンターたちは、顔を青くしてあわてて逃げていった。
いつものように魔獣を狩ってくれない。これは、逃げ切らないと食べられてしまう!
私は山の中を走り抜けた。いま自分がどこにいるのかなんて、わからない。ただ食べられないように、逃げていた。途中で何度も首輪から雷魔法が放たれたけど、歯を食いしばって走ったんだ。
だって、何にもできない役立たずかもしれないけど、あのキラキラした色彩あふれる世界を、もう一度見たかった。
そうして見つけたのが、あの洞窟だった。熊の魔獣がどうなったのか、ハンターたちがどうなったのかはわからない。
洞窟の入り口に、ありったけの魔力を込めて結界を張って眠ったのが最後の記憶だった。
***
「すみません、長々と話してしまって」
シンとしてるので、私の話し方が悪かったのかと謝った。すると私を抱いているリナという女の子が、ギュッと強く抱きしめてくれた。
「ウラノスは、これからどうしたい?」
最初に部屋にいた黒髪の男、カイトが優しく尋ねてくる。
私はどうしたいんだろう? 元の場所に戻りたい? あの岩だらけの炎極の谷へ戻って、また笑われながら生きていくの? それは、イヤだ。
じゃぁ、あのハンターの元にもどる? いや、あんな地獄はもう二度と味わいたくない。
それともひとりで生きていく? 私が? ううん、空も飛べない、魔法もろくに使えない私は、すぐに魔獣に喰われてしまうだろう。
それなら、この人間はどうだろう? あのハンターたちとは全然違って、とても優しい感じがする。
暖かい寝床と食事も用意してくれた。怪我をしたはずの左足も、全然痛くないから治してくれたんだろう。
この人間なら、信じてもいいのかもしれない。何より、もうこの人間しか頼れるところなんてない。
「もし、できるならカイトさんのところに、置いてもらえませんか?」
私は、この人に賭けてみる————
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