73 / 104
73話 弱った不死鳥を保護しました
しおりを挟む
痛い……お願い、この首輪をとって! いうこと聞きますから! 大人しくしてますから! もう逃げ出しませんから!!
お願い……お願いだから置いていかないで!!
誰かたすけて————
「ごめんなさい! 許してください! 置いていかないで!!」
「うわ! 起きたのか……ていうか、聖獣って話せるのか?」
目が覚めたら温かい掛布に包まれて、フカフカのクッションの上に寝かされていた。
ここは……どこ? たしか私は洞窟で結界を張って……そのあとの記憶がない。あの白い熊みたいな魔獣からは逃げ切れたみたいだけど……。
「おい、大丈夫か? 一度起きたけど混乱してたみたいで、回復魔法かけたあとしばらく眠らせていたんだ」
え……もしかして、この人間は私に話しかけているの?
「あの、ここはどこですか……?」
「ここはアルファルド王国、アルキオーネって街にあるギルドの医務室だ」
「アルファルド!? そんな、隣国まで来ていたなんて……」
どうしよう、私もとの場所に戻れるのかな? ううん、戻る場所なんてあるのかな? これから、どうしたらいいんだろう?
「あのさ、飯でも食いながら何があったのか教えてくれないか? もしよかったら力になるよ」
「っ! 本当ですか!? どうしようかと困っているんです……話だけでも聞いてもらえたら嬉しいです」
「もちろん、いいよ。オレはカイトだ。よろしくな」
「はい! カイトさん、私はウラノスです。よろしくお願いします」
私は軽くなった体を起こして、黄色から赤へとグラデーションに彩られた翼を広げた。
***
「へぇぇ、聖獣って人の言葉も話すんだね!」
リナは不死鳥が話せるとわかると、興味津々で食いついてくる。そうか、リナは黒狼が好きというより、話せる動物が好きなのか。それならオレは黒狼に負けた訳ではないな。
「はい、どちらかというと思念伝達に近いのですが、そう間違っていません」
「それで、何があったんだ? あの結界も相当強力だったし、ホワイトキングベアーもあんだけ集まってたんだ。余程のことなんだろう?」
不死鳥が何を食べるのかわからなかったけど、基本は何でも食べるらしい。くちばしでも食べやすそうなものを用意すると、人間の食事はおいしいと満足そうにしていた。ひと通り食べ終わっていまはリナの膝の上だ。
ちょっと羨ましい。黒狼じゃ大きくて膝の上には乗れないんだ。
「……始まりは、不死鳥が住む炎極の谷でした————」
***
「ウラノス! お前まだ飛べないのかよ! ほんとダメな奴だよな!」
「不死鳥なのに飛べないなんて、ありえないわよ?」
「本当に不死鳥なの? ただの黄色い鳥なんじゃないの?」
「「「アハハハハハハ!!」」」
「…………」
私は不死鳥のくせに空を飛べなくて、いつも仲間にバカにされていた。みんなができることが、私にはできない。どんなに頑張って練習しても、飛べるのはほんの数メートルだけですぐに地面に落ちてしまう。
だから、友達だとか仲良くしてくれる不死鳥なんていなかった。話しかけてくるのは、さっきみたいに私をバカにしたい仲間だけだった。いや、もう仲間とすら認識されていなかったかもしれない。
そんなある日、いつも私をからかってくるツワイスが話しかけてきた。またからかわれるのだと警戒していたら、思いもよらない言葉をかけられた。
「なぁなぁ、ちょっとさ、外の世界に行かないか?」
「え!? 私は行けないよ……飛べないもん。それにフェニン様に行ったらダメだっていわれてるし……」
「そんなの黙ってればバレないよ。俺がつれて行ってやるからさ、行こうぜ!」
私は嬉しかった。本当に嬉しかった。不死鳥の長であるフェニン様にはダメだといわれていたけど、仲間からの初めての誘いが嬉しすぎて言い付けを破ってしまった。
「それなら、私も行きたい!」
この決断が私の運命を大きく変えた。
お願い……お願いだから置いていかないで!!
誰かたすけて————
「ごめんなさい! 許してください! 置いていかないで!!」
「うわ! 起きたのか……ていうか、聖獣って話せるのか?」
目が覚めたら温かい掛布に包まれて、フカフカのクッションの上に寝かされていた。
ここは……どこ? たしか私は洞窟で結界を張って……そのあとの記憶がない。あの白い熊みたいな魔獣からは逃げ切れたみたいだけど……。
「おい、大丈夫か? 一度起きたけど混乱してたみたいで、回復魔法かけたあとしばらく眠らせていたんだ」
え……もしかして、この人間は私に話しかけているの?
「あの、ここはどこですか……?」
「ここはアルファルド王国、アルキオーネって街にあるギルドの医務室だ」
「アルファルド!? そんな、隣国まで来ていたなんて……」
どうしよう、私もとの場所に戻れるのかな? ううん、戻る場所なんてあるのかな? これから、どうしたらいいんだろう?
「あのさ、飯でも食いながら何があったのか教えてくれないか? もしよかったら力になるよ」
「っ! 本当ですか!? どうしようかと困っているんです……話だけでも聞いてもらえたら嬉しいです」
「もちろん、いいよ。オレはカイトだ。よろしくな」
「はい! カイトさん、私はウラノスです。よろしくお願いします」
私は軽くなった体を起こして、黄色から赤へとグラデーションに彩られた翼を広げた。
***
「へぇぇ、聖獣って人の言葉も話すんだね!」
リナは不死鳥が話せるとわかると、興味津々で食いついてくる。そうか、リナは黒狼が好きというより、話せる動物が好きなのか。それならオレは黒狼に負けた訳ではないな。
「はい、どちらかというと思念伝達に近いのですが、そう間違っていません」
「それで、何があったんだ? あの結界も相当強力だったし、ホワイトキングベアーもあんだけ集まってたんだ。余程のことなんだろう?」
不死鳥が何を食べるのかわからなかったけど、基本は何でも食べるらしい。くちばしでも食べやすそうなものを用意すると、人間の食事はおいしいと満足そうにしていた。ひと通り食べ終わっていまはリナの膝の上だ。
ちょっと羨ましい。黒狼じゃ大きくて膝の上には乗れないんだ。
「……始まりは、不死鳥が住む炎極の谷でした————」
***
「ウラノス! お前まだ飛べないのかよ! ほんとダメな奴だよな!」
「不死鳥なのに飛べないなんて、ありえないわよ?」
「本当に不死鳥なの? ただの黄色い鳥なんじゃないの?」
「「「アハハハハハハ!!」」」
「…………」
私は不死鳥のくせに空を飛べなくて、いつも仲間にバカにされていた。みんなができることが、私にはできない。どんなに頑張って練習しても、飛べるのはほんの数メートルだけですぐに地面に落ちてしまう。
だから、友達だとか仲良くしてくれる不死鳥なんていなかった。話しかけてくるのは、さっきみたいに私をバカにしたい仲間だけだった。いや、もう仲間とすら認識されていなかったかもしれない。
そんなある日、いつも私をからかってくるツワイスが話しかけてきた。またからかわれるのだと警戒していたら、思いもよらない言葉をかけられた。
「なぁなぁ、ちょっとさ、外の世界に行かないか?」
「え!? 私は行けないよ……飛べないもん。それにフェニン様に行ったらダメだっていわれてるし……」
「そんなの黙ってればバレないよ。俺がつれて行ってやるからさ、行こうぜ!」
私は嬉しかった。本当に嬉しかった。不死鳥の長であるフェニン様にはダメだといわれていたけど、仲間からの初めての誘いが嬉しすぎて言い付けを破ってしまった。
「それなら、私も行きたい!」
この決断が私の運命を大きく変えた。
1
お気に入りに追加
1,665
あなたにおすすめの小説
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します
名無し
ファンタジー
レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。
彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる