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73話 弱った不死鳥を保護しました

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 痛い……お願い、この首輪をとって! いうこと聞きますから! 大人しくしてますから! もう逃げ出しませんから!!
 お願い……お願いだから置いていかないで!!
 誰かたすけて————





「ごめんなさい! 許してください! 置いていかないで!!」

「うわ! 起きたのか……ていうか、聖獣って話せるのか?」

 目が覚めたら温かい掛布に包まれて、フカフカのクッションの上に寝かされていた。
 ここは……どこ? たしか私は洞窟で結界を張って……そのあとの記憶がない。あの白い熊みたいな魔獣からは逃げ切れたみたいだけど……。

「おい、大丈夫か? 一度起きたけど混乱してたみたいで、回復魔法かけたあとしばらく眠らせていたんだ」

 え……もしかして、この人間は私に話しかけているの?

「あの、ここはどこですか……?」

「ここはアルファルド王国、アルキオーネって街にあるギルドの医務室だ」

「アルファルド!? そんな、隣国まで来ていたなんて……」

 どうしよう、私もとの場所に戻れるのかな? ううん、戻る場所なんてあるのかな? これから、どうしたらいいんだろう?

「あのさ、飯でも食いながら何があったのか教えてくれないか? もしよかったら力になるよ」

「っ! 本当ですか!? どうしようかと困っているんです……話だけでも聞いてもらえたら嬉しいです」

「もちろん、いいよ。オレはカイトだ。よろしくな」

「はい! カイトさん、私はウラノスです。よろしくお願いします」

 私は軽くなった体を起こして、黄色から赤へとグラデーションに彩られた翼を広げた。



     ***



「へぇぇ、聖獣って人の言葉も話すんだね!」

 リナは不死鳥が話せるとわかると、興味津々で食いついてくる。そうか、リナは黒狼が好きというより、話せる動物が好きなのか。それならオレは黒狼に負けた訳ではないな。

「はい、どちらかというと思念伝達に近いのですが、そう間違っていません」

「それで、何があったんだ? あの結界も相当強力だったし、ホワイトキングベアーもあんだけ集まってたんだ。余程のことなんだろう?」

 不死鳥が何を食べるのかわからなかったけど、基本は何でも食べるらしい。くちばしでも食べやすそうなものを用意すると、人間の食事はおいしいと満足そうにしていた。ひと通り食べ終わっていまはリナの膝の上だ。
 ちょっと羨ましい。黒狼じゃ大きくて膝の上には乗れないんだ。

「……始まりは、不死鳥が住む炎極えんごくの谷でした————」



     ***



「ウラノス! お前まだ飛べないのかよ! ほんとダメな奴だよな!」

「不死鳥なのに飛べないなんて、ありえないわよ?」

「本当に不死鳥なの? ただの黄色い鳥なんじゃないの?」

「「「アハハハハハハ!!」」」


「…………」

 私は不死鳥のくせに空を飛べなくて、いつも仲間にバカにされていた。みんなができることが、私にはできない。どんなに頑張って練習しても、飛べるのはほんの数メートルだけですぐに地面に落ちてしまう。

 だから、友達だとか仲良くしてくれる不死鳥なんていなかった。話しかけてくるのは、さっきみたいに私をバカにしたい仲間だけだった。いや、もう仲間とすら認識されていなかったかもしれない。

 そんなある日、いつも私をからかってくるツワイスが話しかけてきた。またからかわれるのだと警戒していたら、思いもよらない言葉をかけられた。

「なぁなぁ、ちょっとさ、外の世界に行かないか?」

「え!? 私は行けないよ……飛べないもん。それにフェニン様に行ったらダメだっていわれてるし……」

「そんなの黙ってればバレないよ。俺がつれて行ってやるからさ、行こうぜ!」

 私は嬉しかった。本当に嬉しかった。不死鳥の長であるフェニン様にはダメだといわれていたけど、仲間からの初めての誘いが嬉しすぎて言い付けを破ってしまった。

「それなら、私も行きたい!」


 この決断が私の運命を大きく変えた。



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