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71話 ミリオンパーティーの行く末は 17
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「こら! お前らまたへばってんのか!? 本当にハンターだったのかよ!! 早くこの鉱石運び出せよ!!」
「うっ……うぅ」
「待って……くれ、まだ……」
「チッ……」
ミリオンたちは重犯罪者が送られる流刑地の中でも、特に厳しいとされる魔聖石の採掘場に送られていた。魔聖石は魔力に敏感なので、魔法の使用はいっさい禁止されている。唯一許されるのは、坑道が崩れた際や山崩れがおきた時の人命救助の時のみだ。
すべてを手作業で地盤が緩い山を補強しながら掘り進め、いつ崩れるかわからない恐怖と狭い坑道の中での休みない作業に心身共に疲弊していた。
もう死んだほうが楽だと思うほどの過酷な環境だ。ミリオンたちは初日で音をあげたが、許されるはずもなく強制労働をさせられている。
ティーンだけは女性ということもあって、坑道の中で作業はしないが、魔聖石の洗浄や仕分けといった炎天下や強風にさらされながらの重労働に配置されている。
「さっさと動け! ウスノロ共が!! 雷魔法食らわせるぞ!!」
「「「ひっっ!」」」
坑道の管理者によって容赦なく働かされ、休もうとするなら外まで連れ出されて雷魔法で罰を受ける。そんな毎日だった。
(何で……なんで、俺がこんな目にあうんだ!? カイト……カイトさえいなければ、アイツに出会ってさえいなければ……)
極限の環境の中、ミリオンを支えていたのはカイトに対する深い恨みだった。一度は全てを理解したはずなのに、ミリオンの中では現実逃避からすべての責任をカイトに押し付けていた。やがてそれは、明確な殺意へと変化していく。
(殺す、殺す、カイトを殺す……殺してやる!!)
『へぇ、君のそのドス黒い憎悪、とてもいいね』
一日の仕事が終わり、やっとの思いで収容所に戻ってきたミリオンに声をかけるものがいた。
「誰だ……?」
ここは収容所でも、重犯罪者向けの独房だ。トレットやサウザン、ティーンも部屋は違えど独房に収監されている。
そんな警備体制も厳しいところに、誰がいるというんだ?
『僕はレグルス。魔聖石の調達に来たら、君の憎悪を感知してね。役に立つんじゃないかと思って声をかけたんだ』
ミリオンの独房の奥には白金色の艶やかな髪に、琥珀色の瞳をした美形の青年が、壁にもたれて立っていた。
「レグルス……? 聞いたことがないな。どう俺の役に立つんだ?」
『そうだな、僕が君の憎い相手を殺してあげよう』
「何……? カイトを? カイトを殺してくれるのか!?」
ミリオンは思いがけない提案に飛びついた。ここに収監されている限りは、ミリオンには恨みを募らせるだけで何も出来ることはなかったのだ。相手が誰であろうと、望みが叶うならそれで構わなかった。
ずいぶん前から正気は失っていて、今のミリオンを生かしているのは憎しみの感情だけだった。
『いいけど、条件がある』
「何だ!? 言ってみろ!」
『君の仲間の命を僕に差し出して』
「はっ! そんなことか!? 好きなだけ持っていけ!」
ミリオンは一瞬も悩まず、他の3人の命を差し出す。
『よし、それじゃぁ、僕についてきて』
その日、ミリオンパーティーは送られた流刑地から、忽然と姿を消した。
***
「ちょっとミリオン! どこまで行くの?」
「そうだよ、あそこから抜け出せたのはありがたいけど、こっちは何もないぞ?」
「ガハハ! 道にでも迷ったのか?」
ふん、うるさい奴らだ。カイトを追い詰める時も、何の役にも立たなかったのに文句だけは一人前なんだ。
レグルスの指示では、たしかこの辺まで連れてくればいいと言われたんだが……。
ミリオンたちはレグルスによって、あの地獄のような魔聖石の採掘場から抜け出していた。自分の影に沈んだと思ったら、すでに外に出ていてどこかの山の中にいたのだ。きっとレグルスの魔法なのだろうと理解する。ミリオンはレグルスに言われたとおり、パーティーメンバーを山頂にむかって登らせていた。
『やぁ、待っていたよ』
目の前に立っていたのは、白金色の艶髪を風に靡かせた青年だった。
その瞳は琥珀色でどこか仄暗い光をたずさえていた。
「うっ……うぅ」
「待って……くれ、まだ……」
「チッ……」
ミリオンたちは重犯罪者が送られる流刑地の中でも、特に厳しいとされる魔聖石の採掘場に送られていた。魔聖石は魔力に敏感なので、魔法の使用はいっさい禁止されている。唯一許されるのは、坑道が崩れた際や山崩れがおきた時の人命救助の時のみだ。
すべてを手作業で地盤が緩い山を補強しながら掘り進め、いつ崩れるかわからない恐怖と狭い坑道の中での休みない作業に心身共に疲弊していた。
もう死んだほうが楽だと思うほどの過酷な環境だ。ミリオンたちは初日で音をあげたが、許されるはずもなく強制労働をさせられている。
ティーンだけは女性ということもあって、坑道の中で作業はしないが、魔聖石の洗浄や仕分けといった炎天下や強風にさらされながらの重労働に配置されている。
「さっさと動け! ウスノロ共が!! 雷魔法食らわせるぞ!!」
「「「ひっっ!」」」
坑道の管理者によって容赦なく働かされ、休もうとするなら外まで連れ出されて雷魔法で罰を受ける。そんな毎日だった。
(何で……なんで、俺がこんな目にあうんだ!? カイト……カイトさえいなければ、アイツに出会ってさえいなければ……)
極限の環境の中、ミリオンを支えていたのはカイトに対する深い恨みだった。一度は全てを理解したはずなのに、ミリオンの中では現実逃避からすべての責任をカイトに押し付けていた。やがてそれは、明確な殺意へと変化していく。
(殺す、殺す、カイトを殺す……殺してやる!!)
『へぇ、君のそのドス黒い憎悪、とてもいいね』
一日の仕事が終わり、やっとの思いで収容所に戻ってきたミリオンに声をかけるものがいた。
「誰だ……?」
ここは収容所でも、重犯罪者向けの独房だ。トレットやサウザン、ティーンも部屋は違えど独房に収監されている。
そんな警備体制も厳しいところに、誰がいるというんだ?
『僕はレグルス。魔聖石の調達に来たら、君の憎悪を感知してね。役に立つんじゃないかと思って声をかけたんだ』
ミリオンの独房の奥には白金色の艶やかな髪に、琥珀色の瞳をした美形の青年が、壁にもたれて立っていた。
「レグルス……? 聞いたことがないな。どう俺の役に立つんだ?」
『そうだな、僕が君の憎い相手を殺してあげよう』
「何……? カイトを? カイトを殺してくれるのか!?」
ミリオンは思いがけない提案に飛びついた。ここに収監されている限りは、ミリオンには恨みを募らせるだけで何も出来ることはなかったのだ。相手が誰であろうと、望みが叶うならそれで構わなかった。
ずいぶん前から正気は失っていて、今のミリオンを生かしているのは憎しみの感情だけだった。
『いいけど、条件がある』
「何だ!? 言ってみろ!」
『君の仲間の命を僕に差し出して』
「はっ! そんなことか!? 好きなだけ持っていけ!」
ミリオンは一瞬も悩まず、他の3人の命を差し出す。
『よし、それじゃぁ、僕についてきて』
その日、ミリオンパーティーは送られた流刑地から、忽然と姿を消した。
***
「ちょっとミリオン! どこまで行くの?」
「そうだよ、あそこから抜け出せたのはありがたいけど、こっちは何もないぞ?」
「ガハハ! 道にでも迷ったのか?」
ふん、うるさい奴らだ。カイトを追い詰める時も、何の役にも立たなかったのに文句だけは一人前なんだ。
レグルスの指示では、たしかこの辺まで連れてくればいいと言われたんだが……。
ミリオンたちはレグルスによって、あの地獄のような魔聖石の採掘場から抜け出していた。自分の影に沈んだと思ったら、すでに外に出ていてどこかの山の中にいたのだ。きっとレグルスの魔法なのだろうと理解する。ミリオンはレグルスに言われたとおり、パーティーメンバーを山頂にむかって登らせていた。
『やぁ、待っていたよ』
目の前に立っていたのは、白金色の艶髪を風に靡かせた青年だった。
その瞳は琥珀色でどこか仄暗い光をたずさえていた。
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