29 / 104
29話 ミリオンパーティーの行く末は 7
しおりを挟む
ミリオンたちは新しく受けた魔獣討伐のために、プロキオンの街よりほど近い、カラカンの森まで来ていた。
「っはぁ! はぁ、はぁ、もう……追ってきてないな?」
「はぁ、はぁ、もう大丈夫みたいよ……はぁ」
ミリオンとティーンは後ろを振り返り、なんの気配もないことを確認した。
今回は、無駄な体力を使わないように、逃げられる魔獣は戦わないようにして進んできたのだ。
そろそろ討伐対象の、Aランクでも弱めの魔獣グレートホーンがいるはずだ。
「チッ……体力が……おい、誰か回復薬くれよ」
「はぁー、ほら、これでも飲んどけ」
一番体の大きいサウザンが、体力の消耗がはげしい。トレットが出発前に買った回復薬をわたした。
サウザンはいきおいよく飲み干してゆく。空き瓶をポイっと投げ捨て、長いため息を吐いた。
「チッ、この前から思ってたけど、最近の回復薬は効き目が悪くないか?」
「サウザンもそう思ってたか? 実は俺もなんだ。前のヤツは、半日くらい回復効果があったのになぁ……」
ミリオンも不思議に思っていた。最近は一度飲んで、すぐにまた飲まないと、体力が回復しないのだ。
「おかしいわね。いつも通り道具屋で買ってるのにね」
「まぁ、多めに持って来るしかないだろ。これしか売ってないんだから」
トレットがどうでもよさそうに答える。無い物ねだりしても仕方ない。
カイトが用意していた、リジェネ効果のある回復薬の存在に、ミリオンたちが気づくのは、もう少し先のことになる。
「おい、いたぞ! グレートホーンだ!」
ミリオンが討伐対象の魔獣に気がついた。グレートホーンは大きな渦巻き状の角をもつ鹿の魔獣だ。俊敏性がたかく、角による攻撃は一撃でハンターを葬る。
「いつもの連携で行くぞ。ティーン!」
「ファイアストーム!!」
前回は威力が弱かったかもしれないと、ティーンは自身が使える最大魔法を放つ。
続いてトレットが魔力を込めて両手剣を振り下ろす。
「おらぁ!!」
「チッ! くたばれ!!」
間髪入れずにサウザンも槍に魔力をまとわせて、攻撃を叩き込んだ。最後にミリオンが魔法剣でとどめを刺す。
「これでとどめだ!!」
だが、グレートホーンは倒れなかった。
攻撃は効いているが、決定打には欠けるようだった。フラついているグレートホーンが、体勢をたてなおす。
目の前のミリオンに狙いを定めたグレートホーンは、頭から突っ込んできた。
「クソッ! まただ! なぜこれで倒れないんだ!?」
ギリギリで攻撃を避けたミリオンは、魔法剣で応戦する。
ジリジリとグレートホーンの体力を削っているが、倒すまでは至らない。
当然、ミリオンたちの体力も限界を迎える。
「トレット! 回復薬は!?」
「さっきミリオンに渡したので最後だよ! お前らは持ってねぇのか!?」
「チッ! もう、体力が……はぁ、はぁ、持たない」
「ウソ!? これじゃぁ、下手したら全滅しちゃうわ!」
2時間に及ぶ戦いで、回復薬が切れた。メンバーを見れば、みんな満身創痍だ。
ミリオンはギリギリと奥歯を食いしばる。
「クソッ!! 撤退だ!!!!」
またしても、ミリオンパーティーの討伐は失敗に終わった。
「っはぁ! はぁ、はぁ、もう……追ってきてないな?」
「はぁ、はぁ、もう大丈夫みたいよ……はぁ」
ミリオンとティーンは後ろを振り返り、なんの気配もないことを確認した。
今回は、無駄な体力を使わないように、逃げられる魔獣は戦わないようにして進んできたのだ。
そろそろ討伐対象の、Aランクでも弱めの魔獣グレートホーンがいるはずだ。
「チッ……体力が……おい、誰か回復薬くれよ」
「はぁー、ほら、これでも飲んどけ」
一番体の大きいサウザンが、体力の消耗がはげしい。トレットが出発前に買った回復薬をわたした。
サウザンはいきおいよく飲み干してゆく。空き瓶をポイっと投げ捨て、長いため息を吐いた。
「チッ、この前から思ってたけど、最近の回復薬は効き目が悪くないか?」
「サウザンもそう思ってたか? 実は俺もなんだ。前のヤツは、半日くらい回復効果があったのになぁ……」
ミリオンも不思議に思っていた。最近は一度飲んで、すぐにまた飲まないと、体力が回復しないのだ。
「おかしいわね。いつも通り道具屋で買ってるのにね」
「まぁ、多めに持って来るしかないだろ。これしか売ってないんだから」
トレットがどうでもよさそうに答える。無い物ねだりしても仕方ない。
カイトが用意していた、リジェネ効果のある回復薬の存在に、ミリオンたちが気づくのは、もう少し先のことになる。
「おい、いたぞ! グレートホーンだ!」
ミリオンが討伐対象の魔獣に気がついた。グレートホーンは大きな渦巻き状の角をもつ鹿の魔獣だ。俊敏性がたかく、角による攻撃は一撃でハンターを葬る。
「いつもの連携で行くぞ。ティーン!」
「ファイアストーム!!」
前回は威力が弱かったかもしれないと、ティーンは自身が使える最大魔法を放つ。
続いてトレットが魔力を込めて両手剣を振り下ろす。
「おらぁ!!」
「チッ! くたばれ!!」
間髪入れずにサウザンも槍に魔力をまとわせて、攻撃を叩き込んだ。最後にミリオンが魔法剣でとどめを刺す。
「これでとどめだ!!」
だが、グレートホーンは倒れなかった。
攻撃は効いているが、決定打には欠けるようだった。フラついているグレートホーンが、体勢をたてなおす。
目の前のミリオンに狙いを定めたグレートホーンは、頭から突っ込んできた。
「クソッ! まただ! なぜこれで倒れないんだ!?」
ギリギリで攻撃を避けたミリオンは、魔法剣で応戦する。
ジリジリとグレートホーンの体力を削っているが、倒すまでは至らない。
当然、ミリオンたちの体力も限界を迎える。
「トレット! 回復薬は!?」
「さっきミリオンに渡したので最後だよ! お前らは持ってねぇのか!?」
「チッ! もう、体力が……はぁ、はぁ、持たない」
「ウソ!? これじゃぁ、下手したら全滅しちゃうわ!」
2時間に及ぶ戦いで、回復薬が切れた。メンバーを見れば、みんな満身創痍だ。
ミリオンはギリギリと奥歯を食いしばる。
「クソッ!! 撤退だ!!!!」
またしても、ミリオンパーティーの討伐は失敗に終わった。
1
お気に入りに追加
1,665
あなたにおすすめの小説
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します
名無し
ファンタジー
レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。
彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる