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あの時
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「翔! いつまでそうしてるの ベンチ…空けなきゃ………いけないんだか…ら……っ!
」
まきの声は聞こえていた
ただ聞こえていた
分かっていた
ベンチ空けなきゃ
次 入ってくるから
ぐっ!っと腕を?肩を?掴まれて
無理やり動かされた
ベンチの外に行くように
球場の出入口の小さな階段
いつもの癖で 立ち止まり帽子をとり
かかとをつけて 一礼
「ありがとうございました」
心を込めて言った
「行くぞ!」
言葉が出ないが
体はノロノロとついていった
外に出ると 帰り支度をしていて
大きな野球バックを幾つも肩にかける
後輩達
俺もやらなきゃ……
3年近く前のこと
「翔 どうする?
ひむかい高校から 野球の推薦きてるが
受けても受けなくてもいいぞ」
「え!俺にですか?」
「ああ」
野球部監督の吉川先生から呼ばれて
進路指導室にきていた
「俺よりも 樹の方が……」
「お前に来てるんだよ」
中学で抑えで1年間投げてきた
最初から投げさせて欲しいと
頼んだら1度だけ
いつも負けている市内の学校相手に
投げさせてくれた
「負け試合しろってことかよ
俺のこと嫌いなのか」
3年間で顧問の先生は3度変わった
1年目の田中先生は
先生の最後の試合で 4番に座らせてくれた ヒット出た 嬉しかった
凄くよく怒られた
でも俺からしたら生徒の事をよく考えてくれてる先生だった
贔屓もなかった
2年の時の顧問は
「お前にやる背番号とか
どうでもいいけど 仕方ないから
やるわ」
と 投げて渡してきた
小学校からソフトボール
中学で野球 5年近くやってきて
初めて 辞めたいなぁと 思った
母親に ボソッと「辞めたい」
と 告げたら
根掘り葉掘り聞いてきた
よく話し合った
晩ごはんも食べないで
翌日顧問に抗議してくれた
嬉しかった
贔屓の凄い先生だった
生徒会をしていれば 遅刻してきても
良い子だから 試合にだしていた
3年目はよくわからない先生だった
だが 先発で投げさせてくれる
相手は負けたことしかないけど
投げれるならいいや
結果は0-0の引き分けで終わった
勝てなかったけど 負けなかった
今年初めての事だった
相手チームの人に
「お前の球 打てないよ」
そう言われて 本当に嬉しかった
中学最後の大会 これに勝てば
地区の試合に進める
勝っていた
いつもなら 俺が投げる勝ち試合の最終回
エースの奴が
「まだ投げれます 投げたいです」
俺も
「いつも俺投げてます 最終回俺でいかせてください!」
エースが続投した
逆転されて負けた
最終試合出れなかった
「俺の采配ミスだ
皆すまん」
中学の野球が終わった日
「ひむかい高校…」
地域では2つある進学校の1つ
兄が通っている
中学と高校が一緒の公立の学校
「工業に行きたいんです
そっちは……」
「そっちは お前学力あるから
推薦は学力の低い奴らに決まるだろう」
「そうですか…」
考えて
来て欲しいといってくれた高校へ
そこは 公立とはいえ
中学からの内進の組
外部から推薦ばかりで集められた組
ボーイズで引っ張られた組
「なんか レベル高そう…」
確かに高かった
1年生の大会で優勝
高校の数が多くて2つの地区に分けられての優勝だけど
ピッチャー2本立てのうちの1人で
投げてきた
決勝では エースのもうひとりが
メインで投げた
調子が下った所で交代で投げた
相手のしつこいデッドボールのアピールで
塁に出られた
すぐ替えられた
そこで
自分の中で何かが壊れた
多分物凄く小さな 気にもしなかった
小さなもの
2年になり 春先に練習試合が始まりだす
壊れた小さなものが 凄く大きなものに
気が付かないうちに変わっていた
練習試合の為のウォームアップ
1球投げた
「届かない」
キャッチャーが
「お前ふざけないで ちゃんとやれよ」
「あぁ わりぃ」
次投げた
届かない………
「お前届かないの?」
「なんで?」
それからは 色々調べた
イップスかなと思って
口に出したら 笑われた
投げれないまま いろいろ試して
1年経って
ようやく
「ブルペン行って来い」
「はい!」
1回を投げきり0で抑えてきた
久しぶりに気分が良かった
最後の夏の大会が始まり
初戦で投げるかと思った
1回だけ投げて終わりの
野球人生 あとは趣味でやろう
ところが登板なし
勝ち進み 今度こそはと思ったが
今度も登板なし
そして最終試合
俺の登板はなかった
チームで負けたのは 悔しかった
でも心のなかでは 自分が試合に出れない
事も悔しかった
ベンチでぼーっとしてたら
まきから声をかけられ
ベンチから出て
声を殺して泣いた
そして今
「かけるコーチ
ここどうすればいい?教えて」
最高気温 暑い中
小学生の後輩と白い球
ちょっと大きい球だけど
また 追っかけてる
なにやってんだろ
母親が
「仕方ないんじゃない?
あんた 野球 ソフトやってて
楽しいっていってたじゃん
やめないでしょ どんな形でも」
」
まきの声は聞こえていた
ただ聞こえていた
分かっていた
ベンチ空けなきゃ
次 入ってくるから
ぐっ!っと腕を?肩を?掴まれて
無理やり動かされた
ベンチの外に行くように
球場の出入口の小さな階段
いつもの癖で 立ち止まり帽子をとり
かかとをつけて 一礼
「ありがとうございました」
心を込めて言った
「行くぞ!」
言葉が出ないが
体はノロノロとついていった
外に出ると 帰り支度をしていて
大きな野球バックを幾つも肩にかける
後輩達
俺もやらなきゃ……
3年近く前のこと
「翔 どうする?
ひむかい高校から 野球の推薦きてるが
受けても受けなくてもいいぞ」
「え!俺にですか?」
「ああ」
野球部監督の吉川先生から呼ばれて
進路指導室にきていた
「俺よりも 樹の方が……」
「お前に来てるんだよ」
中学で抑えで1年間投げてきた
最初から投げさせて欲しいと
頼んだら1度だけ
いつも負けている市内の学校相手に
投げさせてくれた
「負け試合しろってことかよ
俺のこと嫌いなのか」
3年間で顧問の先生は3度変わった
1年目の田中先生は
先生の最後の試合で 4番に座らせてくれた ヒット出た 嬉しかった
凄くよく怒られた
でも俺からしたら生徒の事をよく考えてくれてる先生だった
贔屓もなかった
2年の時の顧問は
「お前にやる背番号とか
どうでもいいけど 仕方ないから
やるわ」
と 投げて渡してきた
小学校からソフトボール
中学で野球 5年近くやってきて
初めて 辞めたいなぁと 思った
母親に ボソッと「辞めたい」
と 告げたら
根掘り葉掘り聞いてきた
よく話し合った
晩ごはんも食べないで
翌日顧問に抗議してくれた
嬉しかった
贔屓の凄い先生だった
生徒会をしていれば 遅刻してきても
良い子だから 試合にだしていた
3年目はよくわからない先生だった
だが 先発で投げさせてくれる
相手は負けたことしかないけど
投げれるならいいや
結果は0-0の引き分けで終わった
勝てなかったけど 負けなかった
今年初めての事だった
相手チームの人に
「お前の球 打てないよ」
そう言われて 本当に嬉しかった
中学最後の大会 これに勝てば
地区の試合に進める
勝っていた
いつもなら 俺が投げる勝ち試合の最終回
エースの奴が
「まだ投げれます 投げたいです」
俺も
「いつも俺投げてます 最終回俺でいかせてください!」
エースが続投した
逆転されて負けた
最終試合出れなかった
「俺の采配ミスだ
皆すまん」
中学の野球が終わった日
「ひむかい高校…」
地域では2つある進学校の1つ
兄が通っている
中学と高校が一緒の公立の学校
「工業に行きたいんです
そっちは……」
「そっちは お前学力あるから
推薦は学力の低い奴らに決まるだろう」
「そうですか…」
考えて
来て欲しいといってくれた高校へ
そこは 公立とはいえ
中学からの内進の組
外部から推薦ばかりで集められた組
ボーイズで引っ張られた組
「なんか レベル高そう…」
確かに高かった
1年生の大会で優勝
高校の数が多くて2つの地区に分けられての優勝だけど
ピッチャー2本立てのうちの1人で
投げてきた
決勝では エースのもうひとりが
メインで投げた
調子が下った所で交代で投げた
相手のしつこいデッドボールのアピールで
塁に出られた
すぐ替えられた
そこで
自分の中で何かが壊れた
多分物凄く小さな 気にもしなかった
小さなもの
2年になり 春先に練習試合が始まりだす
壊れた小さなものが 凄く大きなものに
気が付かないうちに変わっていた
練習試合の為のウォームアップ
1球投げた
「届かない」
キャッチャーが
「お前ふざけないで ちゃんとやれよ」
「あぁ わりぃ」
次投げた
届かない………
「お前届かないの?」
「なんで?」
それからは 色々調べた
イップスかなと思って
口に出したら 笑われた
投げれないまま いろいろ試して
1年経って
ようやく
「ブルペン行って来い」
「はい!」
1回を投げきり0で抑えてきた
久しぶりに気分が良かった
最後の夏の大会が始まり
初戦で投げるかと思った
1回だけ投げて終わりの
野球人生 あとは趣味でやろう
ところが登板なし
勝ち進み 今度こそはと思ったが
今度も登板なし
そして最終試合
俺の登板はなかった
チームで負けたのは 悔しかった
でも心のなかでは 自分が試合に出れない
事も悔しかった
ベンチでぼーっとしてたら
まきから声をかけられ
ベンチから出て
声を殺して泣いた
そして今
「かけるコーチ
ここどうすればいい?教えて」
最高気温 暑い中
小学生の後輩と白い球
ちょっと大きい球だけど
また 追っかけてる
なにやってんだろ
母親が
「仕方ないんじゃない?
あんた 野球 ソフトやってて
楽しいっていってたじゃん
やめないでしょ どんな形でも」
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