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終章
EP.27祈りの終着点
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「コンソメポテトの匂いがする。」
九十九が現れ、そう言った。それもそのはずだ。僕は今コンソメポテトを食べているのだから。
「……コーラもありますよ、食べます?」
「……食べる。」
五リットルサイズのペットボトルに入ったコーラを九十九はコップに注ぎ、ごくりと飲み干す。そして気だるげにこう言った。
「おまえは世界再編のお供に、コンソメポテトとコーラを選ぶのか。」
「いいじゃないですか、おいしいですし。」
僕は神の権能を得て、神を殺し、次代の神として天界に君臨することにした。その権能を使って、先代の神に荒らされた世界を直している。
「とりあえず時間を、ハルマゲドンが起きる前に戻します。あとは細部の微調整をして、僕からする修正はおしまいです。」
「おまえは積極的に世界を変えようとはしないのか?」
コンソメポテトをつまみながら九十九は尋ねた。
「最近知ったことですが、地上って百年前に、全ての国で同性婚が認められてるんですよね。だから後は古臭い天界をなんとかすればいいだけ。だから別に弄らなくてもいいかなって。」
九十九は更に尋ねる。「今のおまえなら、ホムンクルスのない世界も、逆にホムンクルスが人間を支配する世界も作ることができる。そうはしないのか?」
「そうして僕に何のメリットがあるんですか?地上がどうなろうと、もう僕には関係のないことです。ホムンクルスを作り続けて人間が滅んだって、知ったことではありません。」
「放任主義的だな。」
「あなた程じゃないですよ、九十九……いや、『原初の神』よ。」
「九十九がいい。おまえにはそう呼ばれたい。」玉虫色の瞳が瞬いた。
「今更聞きますけど、なんであんなところにいたんですか?あなたこそ万能なんですから、食べたいものも同席する人も、作ればよかったのに。」
「わたしは二代目の神に神の座を譲って以来、生き物ごっこを続けているんだ。自分が神であることを忘れ、生き物になりきって生涯を生きる。そして死ぬと神であることを思い出し、また別の生き物になりきる。それを繰り返している。」
「生き物に何度も生まれて、何度も死ぬなんて、苦しくないんですか?僕だったらそんなことしませんけど。」
「わたしは楽しいぞ。神の視点ではわからないことがわかる。巨大な絵画を、ズームして見ると新しい発見があるだろう?」
「そうですか。まぁあなたの作った世界なんですから、あなたの好きに過ごせばいい。」
世界再編を一通り終え、九十九に尋ねる。
「確認ですけど、僕は善良な神様になんかなりませんよ。僕とニカさんだけが幸せであればいいし、地上の管理はたまにしかやりません。それでもいいですか?」
「ああ、構わない。例え人類が滅びようと、他の生き物がいずれ地球を埋め尽くす。全ての生き物がわたしの子なのだから、わたしの子が繁栄することに変わりはない。」
「ほんとに大雑把ですね。まぁ、たくさんの生き物を作って、その全てが死ぬ世界を作った神の考えることなんて、わからなくて当然。でいいんですかね。」
「そうだ。わたしは理解されることを欲しない。だからおまえたちも好きに生きたらいい。」
「はいはい……ほら、出来ましたよ。後はあなたもお好きにどうぞ。」
「ありがとう、わたしはまた生き物になってくる。今度はカマキリにでも生まれてこようか。」
「……どうぞ楽しんで。僕はニカさんと楽しんできますので。」
コンさんと唇が触れたと思った次の瞬間、気がつけば俺は天界の街中にいた。
街の天使たちは何事もなかったかのように過ごしている。いつの間にか俺の身体には翼が戻っていて、まるで先程までの騒動がまるでなかったことにされたかのようだ。
「よぉニカフィム!元気そうじゃん」
レヴィエルが、俺が堕天する以前のように気さくに話しかける。どう返していいかわからなくてしどろもどろしてると、レヴィエルは不思議そうな顔をして俺に尋ねた。
「あれ、その光輪黒いけど、どしたの?」
「光輪が黒い……?」
街のガラスに映る自分の姿を確認する。そこには、翼は確かに焼け落ちる以前のものが戻っていたが、光輪は確かに、そこだけ光を切り取ったように黒く輝いていた。
「そだ、俺伝言頼まれてたんだった。主がお呼びだぜ。修道院の五階で待ってるってさ。」
「主が……?」あれから主はどうなったのだろうか。真相を確かめるためにも、呼び出しには応じた方が良さそうだ。
「わかった、ありがとう、すぐ向かう」と俺は、久々に戻った翼で修道院に羽ばたいていく。
「全く、お熱いねぇ……ま、幸せそうで何よりだけどさ。」
とレヴィエルが呟いたのは、俺は聞くことができなかった。
修道院は、前は五階などなかった。ステンドグラスが立ち、高い天井を誇った礼拝堂だった場所は、今は見晴らしのいいバルコニーになっている。そこではコンさんが待っていた。
「ニカさん、わざわざ呼び出してすみません。聞きたいことが山ほどあるでしょうし、お茶にしませんか。」
白い衣装に身を包んだコンさんは、どこか神々しいような、しかしどこか着慣れていないような印象も受けた。
「ああ、そうだな……。」コンさんの言葉に同意して、席についてお茶を頂く。
それからコンさんに、事の顛末を聞いた。一度死んだ事、原初の神に神の権能を渡された事、神が実は代替わりしている事、神を殺した事。そして……
「成り代わったのか。今代の神として。」
「そうです。あれは正式な継承ではありません。ですから、今の僕は今代の神のふりをしている、偽神です。」
コンさんはティーカップを傾けて、淡々と話した。
「あの時用意していた手紙と鞄は、結局なんだったんだ?」コンさんに尋ねた。
「あれは神を欺くための仕掛けです。僕が原初の神に貰ったのは権能そのものであって、推薦状は僕が偽造したものです。神に嘘をついたり、神の前で奇跡を使ったりすると、僕が権能を継承しているのがバレますから。」
「神と一対一なら勝てる見込みがありましたが、天使の妨害に遭うと勝ち筋が削れました。だから、神を欺いてタイマンの状況を作る必要があったんですよ。鞄は手紙が偽造されているものであることを隠すためのカモフラージュです。」
「まぁ、権能を貰っている時点で、『推薦されている』ということは、嘘ではないでしょうけどね。」
「そういえば、あの時借りた鞄、まだ返してないですね。彼は生きているはずですし、返しに行かないと。」
コンさんは説明を終えて再びカップに口をつける。俺の中では、コンさんが神を殺したという事実を、どう受け止めるべきか迷っていた。
「俺の光輪が黒くなったのも、というかいつの間にか、堕天がなかったことになっているのも、コンさんの仕業か?」
「そうです。黒い光輪、堕天使っぽくてかっこいいでしょう?」
「まぁ今は僕が神なので、ニカさんを堕天させる理由がないんです。一度堕天した事実は消えませんが、翼を修復して、周りから堕天した記憶を消せば、あなたが堕天したことは誰も知りません。」
いいのか、それで━━と言いかけた言葉を、遮る存在が現れる。「失礼します!」と見慣れない天使三人がやってきた。
「どうしたんですか、今取り込み中なんですけど。」コンさんは塩対応気味だ。
「あっ、あの……!主と、ニカフィム殿は、こ、交際されていると伺いましたが……!」
「ええ、してますよ。それが何か?」
「……!主は同性愛をお禁じになられているのでは!?」
「ああ……その話ですか、そういえば昔、そんなこと言ったような。言っていないような。」
コンさんは完全にとぼけている。
「失礼ですが、主自らが掟を破るのは、いかがなものかと……!」
「そうですね。では天界でも同性愛を解禁します。皆好きに愛し合いなさい。」
「……!?ですが……!?」彼らはまだ何か言いたげだ。
「ああもう、まどろっこしいですね。」
そう言うとコンさんは立ち上がり、つかつかと俺に近づいてきて、彼らの前で俺に口づけをした。
「…………!」
「これでわかったでしょう。僕が良いと言っているのですから良いのです。これでこの話は終わり。帰りなさい。」
「……!し、失礼しました!」彼らは足早に立ち去っていった。俺はというと、人前で口づけをされることに慣れていないからか、胸の高揚が止まらない。
「あれ、ニカさん、もしかして今の、まずかったですか?」
「まずかったとか、そういうわけじゃないが……!」人前でされると、恥ずかしさと、未だに恐怖が湧き上がるんだ。
「……ちょっと鞄返しに行ってきます。少し、落ち着いててください。」
そう言ってコンさんはバルコニーを降りていった。
コンさんは、力技で俺が恐れていたものを破壊してしまった。俺は未だに冷たい目で見られるのが怖くてたまらないのに、コンさんは少しも恐れていないようだった。
「……コンさんはすごいな。」
息を整えながら、そう呟いた。
満月の夜。紺碧と抜け出して散歩した夜。気づけばオレはあの夜に戻っていた。
「……紺碧?」
辺りを探しても、紺碧はどこにもいない。それどころか、壊された街は戻っている。というよりも、破壊される前に時間が戻っているのだと気がついた。
「……上手くやったのか、あいつは。」
ふと呟く。神を殺すと言っていた。ハルマゲドンが起きる前に戻っていると言うことは、神を殺すことに成功したのだと、導き出すことができた。
それでも紺碧は、今はもうどこにもいないのだ。それが胸に風穴が空いたような、喪失感を身体が満たす。
ふと気づけば、オレは飲みかけのソーダを握っていることに気がついた。これ、紺碧は好きだって言ってたけど、オレは別に好みじゃなかったな。
ソーダを飲みかけのままゴミ箱に捨てて、オレは一人ホテルに戻り、眠りについた。
「ミド、おはよう。」
先生が何事もなかったかのようにオレに微笑みかける。オレは適当に返事をして、先生と向かい合う形で朝食を摂る。
「昨日君の輸送先が決まった。今日にはここを発つ。ここでの朝食は最後になるな。」
先生は相変わらず淡々と、けれど穏やかにオレに話しかける。
先生の死に顔を思い出す。あの時感じた胸の痛みは、「愛して欲しかった」と気づいた時の後悔は、確かに覚えている。そしてその言葉は今、手を伸ばせば手に入るかもしれないのだ。
「……先生。」
震える声を抑えて絞り出す。
「……せんっ、せいは、オレのこと……あ、い、してる?」
先生は一瞬瞬きした後に答えた。
「うん、愛してるよ。」
その言葉に、オレの身体に衝撃が走り━━はしなかった。ただのワンフレーズとして、その言葉はオレの中で処理されていった。
拍子抜け。その言葉が一番近かった。
あんなに欲しくて欲しくてたまらなかったのに、いざその一言を手に入れてみると、全然大したことないっていうか、知ってたって言うか。
オレはただ、確信したかっただけだった。今まで感じてきた愛情が、気のせいじゃないと確認したかっただけで、それ自体は既に貰っていたのだ。
なんだか全部つまらなくなってしまった。もっと色んなものが欲しい。美味い飯とか、他の人からの愛情とか、なんかこう甘美なものをめいっぱい味わいたい気分だった。
そのためには、目の前の先生は邪魔だった。確かにオレを愛してくれてるみたいだけど、この人はオレを閉じ込めもする人だ。
愛してるなら、このくらいいいよな?
オレは先生の手首をガッと掴んで、発電させて先生を軽く感電させる。先生はビクンと痙攣し、そのまま机に突っ伏した。
「すまん先生!オレやっぱ逃げるわ!」
「どっか行って、美味い飯食って、色んな人と会ってみたい!」
「あばよ先生!元気でな!」
食べかけの朝食を置いて、ホテルをダッシュで駆け出していく。宛もなく、行き先もない。ただ逃亡するだけの旅の始まりだったが、心は妙に晴れやかだった。
これから何する?何食う?何か困ったら、先生の娘のところに転がり込めばいいか?あの人には嘘ついちゃったし、取り消さないとな。
アスファルトを踏み締めて、全力で風を感じる。自由だと、これだけのことがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
朝の街並みを、気になる看板を見つけたままに突き進んで、オレは体力が尽きるまで走り続けていた。
「ホムンクルスは、これからどうなるんだ?」鞄を返して戻ってきた僕に、落ち着きを取り戻したニカさんが問いかける。
バルコニーの柵に寄りかかり、夕陽を眺めながら、揺れる髪を押さえて僕は答えた。
「見えている未来がそのまま起きれば、だいたい五十年後に、ホムンクルスの所持と製造が国際法で禁止されます。その辺はミドが上手くやってくれますよ。」
「……そうか。」
僕は続けた。「ホムンクルスは、作らなければ生まれません。製造されず、魂が正しく生命に宿ることが、ホムンクルスにとっての一番の幸せだと思います。」
そう口にはしたが、この未来は、自分の出自が祝福されざるものだということを、肯定することに他ならなかった。ホムンクルスが、ホムンクルスのまま権利を得て歩ける未来は来ないことに、一抹の悔しさを感じていた。
そうして唇を無意識に噛んでいたのか、ニカさんがそっと、僕の頬を撫でて言った。
「コンさんは変わらないな。」
「……変わらない?どこがですか?僕は肉体を失いましたし、権能を得て、ものの見方も随分変わりましたよ。」
「そうじゃない。そう言う枝葉じゃなくて、もっと本質的な部分だ。」
不安そうに見つめる僕をよそに、ニカさんは笑って言った。
「コンさんはいい子だなぁ、って。」
その言葉を聞いて、自分でもよくわからない感情が溢れてきた。神の権能を以てしても、自分の感情の種類まではわからないようだった。
僕はただ、わけもわからないまま、涙を溢していた。抗議するように、僕は震える声を出した。
「なんで……?なんでそんなこと言うんですかっ……!」
「僕はいっぱい悪いことしたのに、神だって殺してしまったのに!」
涙が溢れて止まらなくなる。突然泣き崩れた僕に、ニカさんは胸を貸してこう答えた。
「それは、俺のためにしてくれたことだろう?俺や人々が、苦しんでいたからしてくれたんだろう?」
「時々間違えることもあるけど……コンさんは、出会った時から、優しい人のままだ。」
ニカさんの服が濡れてしまう。僕は、悪魔になる覚悟はとうに決めていたのに。悪になれば、人を殺しても、善意を踏み躙っても、自分を責めずにいられるから。けれどこの人は、僕が悪になることを許してはくれないのだ。僕自身がずっとないものとして扱ってきた、身体から滲み出るような善意を肯定するのだ。それが良いものだと信じて疑わない。
ああ、この人には敵わない。純粋で善良なこの人の前では、僕は悪になることが出来なくなってしまうのだ。
袖を拭って、ニカさんに向き合う。
「僕がそんなにいい人に見えますか」
「見えるよ。実際にそうだと思ってる。」
「僕に……いい神様になれって言ってます?」
「なれとは言ってないが、なれるとは思う。」
「……そう、そうですか。」
「そんなに言うなら、もう少しだけいい子を続けてみましょうか。」
僕はニカさんを抱きしめた。ニカさんも僕を抱きしめ返してくれる。ニカさんの体温が暖かい。人の温もりは、祈りは、こんなにも暖かいのだと、僕はただ噛み締めていた。
それをほんの少しだけ、人々に分けてあげる仕事。少しくらいなら、やってもいいかなと思えた。
九十九が現れ、そう言った。それもそのはずだ。僕は今コンソメポテトを食べているのだから。
「……コーラもありますよ、食べます?」
「……食べる。」
五リットルサイズのペットボトルに入ったコーラを九十九はコップに注ぎ、ごくりと飲み干す。そして気だるげにこう言った。
「おまえは世界再編のお供に、コンソメポテトとコーラを選ぶのか。」
「いいじゃないですか、おいしいですし。」
僕は神の権能を得て、神を殺し、次代の神として天界に君臨することにした。その権能を使って、先代の神に荒らされた世界を直している。
「とりあえず時間を、ハルマゲドンが起きる前に戻します。あとは細部の微調整をして、僕からする修正はおしまいです。」
「おまえは積極的に世界を変えようとはしないのか?」
コンソメポテトをつまみながら九十九は尋ねた。
「最近知ったことですが、地上って百年前に、全ての国で同性婚が認められてるんですよね。だから後は古臭い天界をなんとかすればいいだけ。だから別に弄らなくてもいいかなって。」
九十九は更に尋ねる。「今のおまえなら、ホムンクルスのない世界も、逆にホムンクルスが人間を支配する世界も作ることができる。そうはしないのか?」
「そうして僕に何のメリットがあるんですか?地上がどうなろうと、もう僕には関係のないことです。ホムンクルスを作り続けて人間が滅んだって、知ったことではありません。」
「放任主義的だな。」
「あなた程じゃないですよ、九十九……いや、『原初の神』よ。」
「九十九がいい。おまえにはそう呼ばれたい。」玉虫色の瞳が瞬いた。
「今更聞きますけど、なんであんなところにいたんですか?あなたこそ万能なんですから、食べたいものも同席する人も、作ればよかったのに。」
「わたしは二代目の神に神の座を譲って以来、生き物ごっこを続けているんだ。自分が神であることを忘れ、生き物になりきって生涯を生きる。そして死ぬと神であることを思い出し、また別の生き物になりきる。それを繰り返している。」
「生き物に何度も生まれて、何度も死ぬなんて、苦しくないんですか?僕だったらそんなことしませんけど。」
「わたしは楽しいぞ。神の視点ではわからないことがわかる。巨大な絵画を、ズームして見ると新しい発見があるだろう?」
「そうですか。まぁあなたの作った世界なんですから、あなたの好きに過ごせばいい。」
世界再編を一通り終え、九十九に尋ねる。
「確認ですけど、僕は善良な神様になんかなりませんよ。僕とニカさんだけが幸せであればいいし、地上の管理はたまにしかやりません。それでもいいですか?」
「ああ、構わない。例え人類が滅びようと、他の生き物がいずれ地球を埋め尽くす。全ての生き物がわたしの子なのだから、わたしの子が繁栄することに変わりはない。」
「ほんとに大雑把ですね。まぁ、たくさんの生き物を作って、その全てが死ぬ世界を作った神の考えることなんて、わからなくて当然。でいいんですかね。」
「そうだ。わたしは理解されることを欲しない。だからおまえたちも好きに生きたらいい。」
「はいはい……ほら、出来ましたよ。後はあなたもお好きにどうぞ。」
「ありがとう、わたしはまた生き物になってくる。今度はカマキリにでも生まれてこようか。」
「……どうぞ楽しんで。僕はニカさんと楽しんできますので。」
コンさんと唇が触れたと思った次の瞬間、気がつけば俺は天界の街中にいた。
街の天使たちは何事もなかったかのように過ごしている。いつの間にか俺の身体には翼が戻っていて、まるで先程までの騒動がまるでなかったことにされたかのようだ。
「よぉニカフィム!元気そうじゃん」
レヴィエルが、俺が堕天する以前のように気さくに話しかける。どう返していいかわからなくてしどろもどろしてると、レヴィエルは不思議そうな顔をして俺に尋ねた。
「あれ、その光輪黒いけど、どしたの?」
「光輪が黒い……?」
街のガラスに映る自分の姿を確認する。そこには、翼は確かに焼け落ちる以前のものが戻っていたが、光輪は確かに、そこだけ光を切り取ったように黒く輝いていた。
「そだ、俺伝言頼まれてたんだった。主がお呼びだぜ。修道院の五階で待ってるってさ。」
「主が……?」あれから主はどうなったのだろうか。真相を確かめるためにも、呼び出しには応じた方が良さそうだ。
「わかった、ありがとう、すぐ向かう」と俺は、久々に戻った翼で修道院に羽ばたいていく。
「全く、お熱いねぇ……ま、幸せそうで何よりだけどさ。」
とレヴィエルが呟いたのは、俺は聞くことができなかった。
修道院は、前は五階などなかった。ステンドグラスが立ち、高い天井を誇った礼拝堂だった場所は、今は見晴らしのいいバルコニーになっている。そこではコンさんが待っていた。
「ニカさん、わざわざ呼び出してすみません。聞きたいことが山ほどあるでしょうし、お茶にしませんか。」
白い衣装に身を包んだコンさんは、どこか神々しいような、しかしどこか着慣れていないような印象も受けた。
「ああ、そうだな……。」コンさんの言葉に同意して、席についてお茶を頂く。
それからコンさんに、事の顛末を聞いた。一度死んだ事、原初の神に神の権能を渡された事、神が実は代替わりしている事、神を殺した事。そして……
「成り代わったのか。今代の神として。」
「そうです。あれは正式な継承ではありません。ですから、今の僕は今代の神のふりをしている、偽神です。」
コンさんはティーカップを傾けて、淡々と話した。
「あの時用意していた手紙と鞄は、結局なんだったんだ?」コンさんに尋ねた。
「あれは神を欺くための仕掛けです。僕が原初の神に貰ったのは権能そのものであって、推薦状は僕が偽造したものです。神に嘘をついたり、神の前で奇跡を使ったりすると、僕が権能を継承しているのがバレますから。」
「神と一対一なら勝てる見込みがありましたが、天使の妨害に遭うと勝ち筋が削れました。だから、神を欺いてタイマンの状況を作る必要があったんですよ。鞄は手紙が偽造されているものであることを隠すためのカモフラージュです。」
「まぁ、権能を貰っている時点で、『推薦されている』ということは、嘘ではないでしょうけどね。」
「そういえば、あの時借りた鞄、まだ返してないですね。彼は生きているはずですし、返しに行かないと。」
コンさんは説明を終えて再びカップに口をつける。俺の中では、コンさんが神を殺したという事実を、どう受け止めるべきか迷っていた。
「俺の光輪が黒くなったのも、というかいつの間にか、堕天がなかったことになっているのも、コンさんの仕業か?」
「そうです。黒い光輪、堕天使っぽくてかっこいいでしょう?」
「まぁ今は僕が神なので、ニカさんを堕天させる理由がないんです。一度堕天した事実は消えませんが、翼を修復して、周りから堕天した記憶を消せば、あなたが堕天したことは誰も知りません。」
いいのか、それで━━と言いかけた言葉を、遮る存在が現れる。「失礼します!」と見慣れない天使三人がやってきた。
「どうしたんですか、今取り込み中なんですけど。」コンさんは塩対応気味だ。
「あっ、あの……!主と、ニカフィム殿は、こ、交際されていると伺いましたが……!」
「ええ、してますよ。それが何か?」
「……!主は同性愛をお禁じになられているのでは!?」
「ああ……その話ですか、そういえば昔、そんなこと言ったような。言っていないような。」
コンさんは完全にとぼけている。
「失礼ですが、主自らが掟を破るのは、いかがなものかと……!」
「そうですね。では天界でも同性愛を解禁します。皆好きに愛し合いなさい。」
「……!?ですが……!?」彼らはまだ何か言いたげだ。
「ああもう、まどろっこしいですね。」
そう言うとコンさんは立ち上がり、つかつかと俺に近づいてきて、彼らの前で俺に口づけをした。
「…………!」
「これでわかったでしょう。僕が良いと言っているのですから良いのです。これでこの話は終わり。帰りなさい。」
「……!し、失礼しました!」彼らは足早に立ち去っていった。俺はというと、人前で口づけをされることに慣れていないからか、胸の高揚が止まらない。
「あれ、ニカさん、もしかして今の、まずかったですか?」
「まずかったとか、そういうわけじゃないが……!」人前でされると、恥ずかしさと、未だに恐怖が湧き上がるんだ。
「……ちょっと鞄返しに行ってきます。少し、落ち着いててください。」
そう言ってコンさんはバルコニーを降りていった。
コンさんは、力技で俺が恐れていたものを破壊してしまった。俺は未だに冷たい目で見られるのが怖くてたまらないのに、コンさんは少しも恐れていないようだった。
「……コンさんはすごいな。」
息を整えながら、そう呟いた。
満月の夜。紺碧と抜け出して散歩した夜。気づけばオレはあの夜に戻っていた。
「……紺碧?」
辺りを探しても、紺碧はどこにもいない。それどころか、壊された街は戻っている。というよりも、破壊される前に時間が戻っているのだと気がついた。
「……上手くやったのか、あいつは。」
ふと呟く。神を殺すと言っていた。ハルマゲドンが起きる前に戻っていると言うことは、神を殺すことに成功したのだと、導き出すことができた。
それでも紺碧は、今はもうどこにもいないのだ。それが胸に風穴が空いたような、喪失感を身体が満たす。
ふと気づけば、オレは飲みかけのソーダを握っていることに気がついた。これ、紺碧は好きだって言ってたけど、オレは別に好みじゃなかったな。
ソーダを飲みかけのままゴミ箱に捨てて、オレは一人ホテルに戻り、眠りについた。
「ミド、おはよう。」
先生が何事もなかったかのようにオレに微笑みかける。オレは適当に返事をして、先生と向かい合う形で朝食を摂る。
「昨日君の輸送先が決まった。今日にはここを発つ。ここでの朝食は最後になるな。」
先生は相変わらず淡々と、けれど穏やかにオレに話しかける。
先生の死に顔を思い出す。あの時感じた胸の痛みは、「愛して欲しかった」と気づいた時の後悔は、確かに覚えている。そしてその言葉は今、手を伸ばせば手に入るかもしれないのだ。
「……先生。」
震える声を抑えて絞り出す。
「……せんっ、せいは、オレのこと……あ、い、してる?」
先生は一瞬瞬きした後に答えた。
「うん、愛してるよ。」
その言葉に、オレの身体に衝撃が走り━━はしなかった。ただのワンフレーズとして、その言葉はオレの中で処理されていった。
拍子抜け。その言葉が一番近かった。
あんなに欲しくて欲しくてたまらなかったのに、いざその一言を手に入れてみると、全然大したことないっていうか、知ってたって言うか。
オレはただ、確信したかっただけだった。今まで感じてきた愛情が、気のせいじゃないと確認したかっただけで、それ自体は既に貰っていたのだ。
なんだか全部つまらなくなってしまった。もっと色んなものが欲しい。美味い飯とか、他の人からの愛情とか、なんかこう甘美なものをめいっぱい味わいたい気分だった。
そのためには、目の前の先生は邪魔だった。確かにオレを愛してくれてるみたいだけど、この人はオレを閉じ込めもする人だ。
愛してるなら、このくらいいいよな?
オレは先生の手首をガッと掴んで、発電させて先生を軽く感電させる。先生はビクンと痙攣し、そのまま机に突っ伏した。
「すまん先生!オレやっぱ逃げるわ!」
「どっか行って、美味い飯食って、色んな人と会ってみたい!」
「あばよ先生!元気でな!」
食べかけの朝食を置いて、ホテルをダッシュで駆け出していく。宛もなく、行き先もない。ただ逃亡するだけの旅の始まりだったが、心は妙に晴れやかだった。
これから何する?何食う?何か困ったら、先生の娘のところに転がり込めばいいか?あの人には嘘ついちゃったし、取り消さないとな。
アスファルトを踏み締めて、全力で風を感じる。自由だと、これだけのことがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
朝の街並みを、気になる看板を見つけたままに突き進んで、オレは体力が尽きるまで走り続けていた。
「ホムンクルスは、これからどうなるんだ?」鞄を返して戻ってきた僕に、落ち着きを取り戻したニカさんが問いかける。
バルコニーの柵に寄りかかり、夕陽を眺めながら、揺れる髪を押さえて僕は答えた。
「見えている未来がそのまま起きれば、だいたい五十年後に、ホムンクルスの所持と製造が国際法で禁止されます。その辺はミドが上手くやってくれますよ。」
「……そうか。」
僕は続けた。「ホムンクルスは、作らなければ生まれません。製造されず、魂が正しく生命に宿ることが、ホムンクルスにとっての一番の幸せだと思います。」
そう口にはしたが、この未来は、自分の出自が祝福されざるものだということを、肯定することに他ならなかった。ホムンクルスが、ホムンクルスのまま権利を得て歩ける未来は来ないことに、一抹の悔しさを感じていた。
そうして唇を無意識に噛んでいたのか、ニカさんがそっと、僕の頬を撫でて言った。
「コンさんは変わらないな。」
「……変わらない?どこがですか?僕は肉体を失いましたし、権能を得て、ものの見方も随分変わりましたよ。」
「そうじゃない。そう言う枝葉じゃなくて、もっと本質的な部分だ。」
不安そうに見つめる僕をよそに、ニカさんは笑って言った。
「コンさんはいい子だなぁ、って。」
その言葉を聞いて、自分でもよくわからない感情が溢れてきた。神の権能を以てしても、自分の感情の種類まではわからないようだった。
僕はただ、わけもわからないまま、涙を溢していた。抗議するように、僕は震える声を出した。
「なんで……?なんでそんなこと言うんですかっ……!」
「僕はいっぱい悪いことしたのに、神だって殺してしまったのに!」
涙が溢れて止まらなくなる。突然泣き崩れた僕に、ニカさんは胸を貸してこう答えた。
「それは、俺のためにしてくれたことだろう?俺や人々が、苦しんでいたからしてくれたんだろう?」
「時々間違えることもあるけど……コンさんは、出会った時から、優しい人のままだ。」
ニカさんの服が濡れてしまう。僕は、悪魔になる覚悟はとうに決めていたのに。悪になれば、人を殺しても、善意を踏み躙っても、自分を責めずにいられるから。けれどこの人は、僕が悪になることを許してはくれないのだ。僕自身がずっとないものとして扱ってきた、身体から滲み出るような善意を肯定するのだ。それが良いものだと信じて疑わない。
ああ、この人には敵わない。純粋で善良なこの人の前では、僕は悪になることが出来なくなってしまうのだ。
袖を拭って、ニカさんに向き合う。
「僕がそんなにいい人に見えますか」
「見えるよ。実際にそうだと思ってる。」
「僕に……いい神様になれって言ってます?」
「なれとは言ってないが、なれるとは思う。」
「……そう、そうですか。」
「そんなに言うなら、もう少しだけいい子を続けてみましょうか。」
僕はニカさんを抱きしめた。ニカさんも僕を抱きしめ返してくれる。ニカさんの体温が暖かい。人の温もりは、祈りは、こんなにも暖かいのだと、僕はただ噛み締めていた。
それをほんの少しだけ、人々に分けてあげる仕事。少しくらいなら、やってもいいかなと思えた。
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でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
錬金術師と銀髪の狂戦士
ろんど087
SF
連邦科学局を退所した若き天才科学者タイト。
「錬金術師」の異名をかれが、旅の護衛を依頼した傭兵は可愛らしい銀髪、ナイスバディの少女。
しかし彼女は「銀髪の狂戦士」の異名を持つ腕利きの傭兵……のはずなのだが……。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
深淵から来る者たち
zip7894
SF
火星周回軌道で建造中の巨大ステーション・アビスゲート。
それは火星の古代遺跡で発見された未知のテクノロジーを利用した星間移動用のシステムだった。
航宙艦キリシマは月で建造されたアビスゲート用のハイパー核融合炉を輸送する輸送船の護衛任務につく。
月の演習に参加していたパイロットのフェルミナ・ハーカーは航宙艦キリシマの航空部隊にスカウトされ護衛任務に参加する事になった。
そんな中、アビスゲートのワームホールテストと同時に月と地球半球に広範囲の電子障害が発生したが……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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