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一部序章「人魚護送編」

EP5.いい奴だけど貧弱なヤツ。ボコボコにされてるんですけど!?(1)

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 アカシャが宿屋に戻ると、そこでは何故か酒盛りが行われていた。

「……え?なんでみんな飲み始めてるの?」

後を追って戻ったカルロもわけがわからないらしく、呆然と酔っ払いたちを眺めている。アカシャは人混みをかきわけ、パズルとソーンの元へ向かった。
そこには、すっかり出来上がった二人がいた。人魚ちゃんもいつの間にかリンゴジュースで乾杯に参加している。
アカシャは赤ら顔のパズルに尋ねた。

「あたしが席外してる間に、なんでこんな二次会みたいになってるの??」

「ん~?あ、アカシャしゃん。実は、今日誰かの誕生日だったらしいんれすよ。ん~?誰だったかな?まぁいいや、ハッピーバースデー!!!」

「ハッピーバースデー!!!」

ソーンも珍しく酔っ払って上機嫌だ。宿屋にいる魔族たちは、すっかり盛り上がっている。

「ええ……知らない人の誕生日って、そんなに盛り上がるものだっけ……?」

「何言ってるんだぁ、誕生日はみんなでお祝いするもんだろぉ?」

「ほらアカシャしゃんも飲んで。未成年らから、リンゴジュースでいいですかね?」

有無を言わさずアカシャの元に、並々リンゴジュースの入ったジョッキが渡される。そのままアカシャは、しばらく続く二次会に付き合わされることになった。

「…………。」

一方、カルロはこの誕生日の宴の主役を、じっと観察していた。


 宴の熱が冷め、そろそろ個室や各自の寝床に戻ろうとする人々が増える中、アカシャは酔っ払って眠ってしまったパズルを介抱していた。ソーンは酒に強いのか、千鳥足ではあるが自力で寝室に戻ることが出来そうだった。
パズルを担いでアカシャは呟く。

「よいしょっと。なんでこんな時に酔っ払うかなぁ……!大人って節度ないの?」

人々の様子を観察していたカルロは、再びアカシャに声をかけた。

「君。何度もすまない、頼みがある。」

「何よ、今両手が塞がってるんだけど?」

カルロはアカシャの肩に、肩掛け紐のついた楽器ケースをかけた。

「これをどうか預かっておいてくれ、命より大事なものなんだ。」

アカシャはこれが、カルロの弾いていた楽器であり、それが彼の商売道具であることは理解していた。

「なんであたしに……ってちょっと!?」

カルロは訳も話さず、宿屋の外へと走り出ていってしまった。

「はぁ……なんなのあいつ……。」

アカシャはため息をつきつつ、パズルを部屋まで送り届けることにした。
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