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幼少期
見つけたもの
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春先の寒さが肌を芯から冷やすような真っ白な早朝。
太陽はまだ昇っておらず、まだ夜が明けたばかりで薄暗い。
昔の私ならまだ熟睡しているような時間帯であっただろうが、ここでの暮らしを始めてから身に染み付いた習慣で毎日このタイミングで起きるようになった。
布団というにはすこしばかり物足りない、布を重ねただけのような掛け布団を押し退けて大きく背伸びをする。
昨日はとてつもなく大変だった。
なにがって、皆が酔っ払って眠りについた後の片付けがだ。
魔法が使えるから、家事自体は楽なものなのだが、これだけ人数がいるとなると違う。
消費した魔力量だって多かった。
特に苦労したのはそのままその場で寝てしまった者たちを運び込むことだ。
ただでさえ、生き物を浮かせて起きないようにゆっくりと運ぶのだから神経を使うというのに、魔法を使われた反射なのか浮いたまま反撃をしてくることが両手の数ほどあった。
中には素手だけじゃなく、魔法を放つものまでいて、とても焦った。
キュリアスはあまり酔っていないようではあったが、助けることはせず、四苦八苦する私を酒のつまみにして楽しんでいた。
私は隣の部屋で寝ているはずのキュリアスにジト目
そんなこんなでお祝い会と表された宴会は無事に終了し、今日は出発の日である。
思えばあっという間だった。
あれから四年、アイリーンたちとの時間もそう長かったわけじゃなく出会い自体が大きなもので、たった数ヶ月というには語りきれないものがあった。
ここでみんなと修行をするのも、毎日が充実していて、波乱がいっぱいで、温かみがあった。
それが、今日でおしまい。
そう考えると寂しい。
でも、この先に、未来に新しい出会いがあると思えば、そこに希望がある。
別れたらもう絶対に会えないわけじゃない、帰りたいと思えば帰ってくればいい。
私の居場所はここにもあるのだから。
確かな家族がそこにあって嬉しいし、安心できる。
ここでもやっていけると確信が持てる。
大丈夫、生きる意味がここにはある。
だからね、生きて、お願いよ。
どこともわからない場所からそんな願いを聞いた気がした。
太陽はまだ昇っておらず、まだ夜が明けたばかりで薄暗い。
昔の私ならまだ熟睡しているような時間帯であっただろうが、ここでの暮らしを始めてから身に染み付いた習慣で毎日このタイミングで起きるようになった。
布団というにはすこしばかり物足りない、布を重ねただけのような掛け布団を押し退けて大きく背伸びをする。
昨日はとてつもなく大変だった。
なにがって、皆が酔っ払って眠りについた後の片付けがだ。
魔法が使えるから、家事自体は楽なものなのだが、これだけ人数がいるとなると違う。
消費した魔力量だって多かった。
特に苦労したのはそのままその場で寝てしまった者たちを運び込むことだ。
ただでさえ、生き物を浮かせて起きないようにゆっくりと運ぶのだから神経を使うというのに、魔法を使われた反射なのか浮いたまま反撃をしてくることが両手の数ほどあった。
中には素手だけじゃなく、魔法を放つものまでいて、とても焦った。
キュリアスはあまり酔っていないようではあったが、助けることはせず、四苦八苦する私を酒のつまみにして楽しんでいた。
私は隣の部屋で寝ているはずのキュリアスにジト目
そんなこんなでお祝い会と表された宴会は無事に終了し、今日は出発の日である。
思えばあっという間だった。
あれから四年、アイリーンたちとの時間もそう長かったわけじゃなく出会い自体が大きなもので、たった数ヶ月というには語りきれないものがあった。
ここでみんなと修行をするのも、毎日が充実していて、波乱がいっぱいで、温かみがあった。
それが、今日でおしまい。
そう考えると寂しい。
でも、この先に、未来に新しい出会いがあると思えば、そこに希望がある。
別れたらもう絶対に会えないわけじゃない、帰りたいと思えば帰ってくればいい。
私の居場所はここにもあるのだから。
確かな家族がそこにあって嬉しいし、安心できる。
ここでもやっていけると確信が持てる。
大丈夫、生きる意味がここにはある。
だからね、生きて、お願いよ。
どこともわからない場所からそんな願いを聞いた気がした。
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