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学園編
121 コーヒーゼリー
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『ーーーねぇ、ここ……』
『魔王城よ』
翌日、私たちは魔王城を訪れていた。
『ーーー』
呆気にとられるアルフィー少年を放置して、すっかり顔馴染みの門番に入城許可を貰う。
『はい、あなたもこれ着けていなさい。外したまま城内にいると、兵士に捕まるわよ』
『ーーー、サラは捕まらないのか?』
『捕まらないわよ?私にはこれがあるから』
最近、胸元に掛けっぱなしの黒い宝石のついたネックレスを取り出す。
クロと初めて出会ったときに貰ったネックレスだ。
『それって……』
『魔王に貰ったのよ。友達の証』
『魔王様っ?!』
そう言うと、騎士たちがなにやら残念そうな表情で見つめてきた。
な、なんなのだろう……。
『ーーーまあいいわ。待たせるといけないし、早く行くわよ』
『っちょ、ちょっと!』
彼も暇人ではないだろうとアルフィーが早足すぐに追い付けるスピードで歩き始めた。
『クロ、居るわね?開けるわよ』
私は返事も待たずにがちゃりと開いた。
中ではクロが政務を行っている。
『……サラ嬢、王の執務室を許可なしに開けるなどーーー』
『煩いぞ、ヒルベルト。私が何時でも開けていいと許可したのだ』
クロが説教を始めようとしたヒルベルトを一喝した。
彼はあの時の私が氷付けにしたもう一人の獣人である。
山羊の獣人みたいだが、顔の大きさに対して小さな丸眼鏡がよく似合っている。
『そんな許可は得ていませんわ、クロ。それより、約束した吸血鬼のチビッ子を連れてきましたの。紅茶淹れていい?』
私はアイテムボックスから紅茶セットを取り出した。
『いいぞ』
『王っ……!!!』
『黙れ』
ヒルベルトは私とクロが会うことが気に入らない様子である。
まあ、初見で氷付けにしてきた人間に安心できるわけ無いか。
『みんなもおいで、お茶にしましょう』
私は待機してもらっていたちびちゃんずたちも呼ぶ。
魔界には闇の妖精しかいないと聞いてからは、目立つちびちゃんずには隠れてもらっていたのだ。
『アルフィー?なにぼけっとしているの』
アルフィーは口を開けたまま、クロを見て茫然としている。
『ああ、それね。しばらくそのままにしとけば戻ってくるから。先にお茶にしよう』
クロはいそいそとベランダにでる。
ベランダには色とりどりの花(暗めの色合い)と、豪華なソファーが置いてあった。
最近は忙しいクロのためにここでお茶をしている。
『……』
なんとなく、そこに置いたままがかわいそうな気がしたので、魔法で持ち上げて移動させた。
私はその隣に座ろうとして、クロの魔法で移動させられる。
何故かクロの隣にだ。
ヒルベルトがすごい目線で見つめてくるが、私のせいじゃない。
二人のときでもこうなので、今さら抵抗はしないが、意味を感じない配置だ。
『お菓子はなにがいいかしら?』
『うーん、甘いやつがいい』
『あら、お仕事まだ残っているんでしょう?甘いものを食べたら眠くなるわよ』
『え~、甘いの食べたいなぁ』
クロは子供のように愚図った。
我が儘なガキがここにもう一人いるわ。
私は仕方ないなぁととっておきを取り出す。
『これは?』
クロは目の前に現れた、茶黒いプルプルに目を輝かせた。
『コーヒーゼリーよ。砂糖は止しておきたいし、紅茶じゃなくて甘露茶にしようかしら』
私はさらにアイテムボックスからさらにとっておきの甘露茶を出す。
甘露茶は紫陽花の葉を使ったあまーいお茶だ。
しかも高い。
この世界、甘味は基本高級品だからね。
私は上機嫌で茶を淹れた。
甘露茶は好きな方の茶である。
『むっ、苦いなこのコーヒーゼリーというのは』
『コーヒーは苦いのが美味しいからね。こっちは甘いわよ』
『本当だ、甘い。紅茶の一種か?若草色だな』
『甘露茶っていうの。紅茶っていうより、緑茶ね。苦いコーヒーゼリーには合うでしょう?』
クロは『でもこれを飲んだ後にこれを食べると苦い』とゼリーをスプーンでつついた。
どうやらお子さま舌の彼には苦すぎたようである。
『しょうがないわね。じゃあ残りは私が貰うわ』
『えっ?!』
『……駄目なの?』
『だ、駄目じゃないけど……』
クロは困ったように目線をヒルベルトに向けた。
ヒルベルトは首を横に振っている。
『……ど、どうぞ』
やっと差し出してくれたので、ぱくりと食べる。
残すと勿体ないしね。
そうこうしている合間にアルフィーが目を覚ましたらしい。
斯くして、やっとこさ本題に移るのであった。
『魔王城よ』
翌日、私たちは魔王城を訪れていた。
『ーーー』
呆気にとられるアルフィー少年を放置して、すっかり顔馴染みの門番に入城許可を貰う。
『はい、あなたもこれ着けていなさい。外したまま城内にいると、兵士に捕まるわよ』
『ーーー、サラは捕まらないのか?』
『捕まらないわよ?私にはこれがあるから』
最近、胸元に掛けっぱなしの黒い宝石のついたネックレスを取り出す。
クロと初めて出会ったときに貰ったネックレスだ。
『それって……』
『魔王に貰ったのよ。友達の証』
『魔王様っ?!』
そう言うと、騎士たちがなにやら残念そうな表情で見つめてきた。
な、なんなのだろう……。
『ーーーまあいいわ。待たせるといけないし、早く行くわよ』
『っちょ、ちょっと!』
彼も暇人ではないだろうとアルフィーが早足すぐに追い付けるスピードで歩き始めた。
『クロ、居るわね?開けるわよ』
私は返事も待たずにがちゃりと開いた。
中ではクロが政務を行っている。
『……サラ嬢、王の執務室を許可なしに開けるなどーーー』
『煩いぞ、ヒルベルト。私が何時でも開けていいと許可したのだ』
クロが説教を始めようとしたヒルベルトを一喝した。
彼はあの時の私が氷付けにしたもう一人の獣人である。
山羊の獣人みたいだが、顔の大きさに対して小さな丸眼鏡がよく似合っている。
『そんな許可は得ていませんわ、クロ。それより、約束した吸血鬼のチビッ子を連れてきましたの。紅茶淹れていい?』
私はアイテムボックスから紅茶セットを取り出した。
『いいぞ』
『王っ……!!!』
『黙れ』
ヒルベルトは私とクロが会うことが気に入らない様子である。
まあ、初見で氷付けにしてきた人間に安心できるわけ無いか。
『みんなもおいで、お茶にしましょう』
私は待機してもらっていたちびちゃんずたちも呼ぶ。
魔界には闇の妖精しかいないと聞いてからは、目立つちびちゃんずには隠れてもらっていたのだ。
『アルフィー?なにぼけっとしているの』
アルフィーは口を開けたまま、クロを見て茫然としている。
『ああ、それね。しばらくそのままにしとけば戻ってくるから。先にお茶にしよう』
クロはいそいそとベランダにでる。
ベランダには色とりどりの花(暗めの色合い)と、豪華なソファーが置いてあった。
最近は忙しいクロのためにここでお茶をしている。
『……』
なんとなく、そこに置いたままがかわいそうな気がしたので、魔法で持ち上げて移動させた。
私はその隣に座ろうとして、クロの魔法で移動させられる。
何故かクロの隣にだ。
ヒルベルトがすごい目線で見つめてくるが、私のせいじゃない。
二人のときでもこうなので、今さら抵抗はしないが、意味を感じない配置だ。
『お菓子はなにがいいかしら?』
『うーん、甘いやつがいい』
『あら、お仕事まだ残っているんでしょう?甘いものを食べたら眠くなるわよ』
『え~、甘いの食べたいなぁ』
クロは子供のように愚図った。
我が儘なガキがここにもう一人いるわ。
私は仕方ないなぁととっておきを取り出す。
『これは?』
クロは目の前に現れた、茶黒いプルプルに目を輝かせた。
『コーヒーゼリーよ。砂糖は止しておきたいし、紅茶じゃなくて甘露茶にしようかしら』
私はさらにアイテムボックスからさらにとっておきの甘露茶を出す。
甘露茶は紫陽花の葉を使ったあまーいお茶だ。
しかも高い。
この世界、甘味は基本高級品だからね。
私は上機嫌で茶を淹れた。
甘露茶は好きな方の茶である。
『むっ、苦いなこのコーヒーゼリーというのは』
『コーヒーは苦いのが美味しいからね。こっちは甘いわよ』
『本当だ、甘い。紅茶の一種か?若草色だな』
『甘露茶っていうの。紅茶っていうより、緑茶ね。苦いコーヒーゼリーには合うでしょう?』
クロは『でもこれを飲んだ後にこれを食べると苦い』とゼリーをスプーンでつついた。
どうやらお子さま舌の彼には苦すぎたようである。
『しょうがないわね。じゃあ残りは私が貰うわ』
『えっ?!』
『……駄目なの?』
『だ、駄目じゃないけど……』
クロは困ったように目線をヒルベルトに向けた。
ヒルベルトは首を横に振っている。
『……ど、どうぞ』
やっと差し出してくれたので、ぱくりと食べる。
残すと勿体ないしね。
そうこうしている合間にアルフィーが目を覚ましたらしい。
斯くして、やっとこさ本題に移るのであった。
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