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学園編
64 国王とお父様の密談
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サラがルンルンで王宮の書物を漁っている間、謁見の間では二人の政治家による論争が繰り広げられていた。
「っと、粗方これくらい?いやー、仕事が早く片付けられてよかったよかった。すまんな、エリックも忙しいだろうに」
「いや、最近はまかせっきりだから忙しくない」
「ん?サラ嬢にか?」
国王はふざけて、口から出まかせを言ってみただけだ、なのに。
「そうだ。もう、公爵家はあいつに継がせる」
「……え?」
あまりの友の真剣な表情に、冗談を言ったつもりの国王はいつもにない表情をしてしまった。
「なんだ、らしくないな」
「いや、だって……。え?本気か?」
「本気だな。だからタファをやると言った」
それも本気だったのか!?
国王はてっきり冗談だと思っていた。
「……何を隠している」
「それこそ、お前に伝えるわけにはいかない内容だな。まあ、サラの才能のことなら話しても構わないが……、聞くか?」
「聞くわっ!聞かせろ、そして納得させてくれ!」
実力主義で無駄なことが嫌いな幼馴染の豹変に驚きを隠せないでいた。
そして、エリックは妖精の愛し子であること以外のことをエナードに伝える。
一に、勉学の才があること。
二に、生業の才があること。
三に、魔法の才があること。
それこそ一通り伝えた。
その幼馴染の反応が面白いこと面白いこと。
「……まじかよ」
「まじだな」
「化け物じゃん」
「天才と言ってくれ」
エリックは訂正を要求した。
「変わらない、お前は娘に俺の国を乗っ取ってほしいのか!?」
「全然、というか本人にそのつもりはないだろう。あいつはのんびりと生きることが好きらしいからな」
「いや、話の内容と合ってないよそれ」
ため口は昔の癖で、なかなか治らない。
しかし、お互いのこの距離感は心地のいいものだ。
「まあ、あいつは明らかに領主のタマだ。その実力が見え隠れしていた時からすでに決めていた。タファにはその時点で伝えている……というか、本人から確認をとってきた」
「……肝が座っているよね、君の家族」
正直、エリックも息子の直談判には驚かされた。
しかし、同時に観察眼は間違っていないと嬉しくもあった。
「今や公務はほとんどサラが行っている状況だ。学園に入ってからでもそれは変わらない。あいつは領地内にそのシステムを作っていったから、確認作業とまとめることだけが今の領主の仕事だからな」
「局所、か。同じ立場で思いつく気がしないな」
「ああ、思いついても実行できる気がしないしな」
サラの何気なく「大学卒業生に仕事先があればいいな~」くらいの気持ちで作った各局は、いまや領地を回すために必要不可欠なものになっていた。
当時、その大部分が領主の仕事だったのだが、勉学を多くのものが習得した領内で、人数を活かしたその政策は大成功だったといえるだろう。
局所の下にも分局という付属ができてからはさらに進んでいる。
前と比べ、仕事の量も質も上がった上に、局所の従業員の大部分が平民であるために、庶民とのつながりが強く、結束力もあった。
領民に対して不足がちだった仕事先も増え、金も円滑に回るようになり、治安もよくなる。
ここで一番の問題点である資金は、サラが商会で成功することで賄えた。
領内だけでなく、外国にまで伸びるその腕は国一のやり手。
エリックとしてはなぜこの王にも限ってその存在を見つけられなかったのかが不思議だった。
「いや~、ただでさえお前のとこの使用人や領民たちは口が堅いし、最近良い騎士とか密偵が手に入らないんだよね~。まいった参った」
なるほど、どこも人材不足には悩まされているらしい。
「ところで、サラ嬢は学園で考査を受けなくてもよいというのは誠か?」
「…ああ、それはサラの教え子が学園の教師にいるそうだ。奴らはサラに心酔している。それはもう神のように祭っているぞ。当の本人が気が付いているかは知らんが」
そして、さらりと暴露した幼馴染に、国王は頭が痛いの一言だった。
「っと、粗方これくらい?いやー、仕事が早く片付けられてよかったよかった。すまんな、エリックも忙しいだろうに」
「いや、最近はまかせっきりだから忙しくない」
「ん?サラ嬢にか?」
国王はふざけて、口から出まかせを言ってみただけだ、なのに。
「そうだ。もう、公爵家はあいつに継がせる」
「……え?」
あまりの友の真剣な表情に、冗談を言ったつもりの国王はいつもにない表情をしてしまった。
「なんだ、らしくないな」
「いや、だって……。え?本気か?」
「本気だな。だからタファをやると言った」
それも本気だったのか!?
国王はてっきり冗談だと思っていた。
「……何を隠している」
「それこそ、お前に伝えるわけにはいかない内容だな。まあ、サラの才能のことなら話しても構わないが……、聞くか?」
「聞くわっ!聞かせろ、そして納得させてくれ!」
実力主義で無駄なことが嫌いな幼馴染の豹変に驚きを隠せないでいた。
そして、エリックは妖精の愛し子であること以外のことをエナードに伝える。
一に、勉学の才があること。
二に、生業の才があること。
三に、魔法の才があること。
それこそ一通り伝えた。
その幼馴染の反応が面白いこと面白いこと。
「……まじかよ」
「まじだな」
「化け物じゃん」
「天才と言ってくれ」
エリックは訂正を要求した。
「変わらない、お前は娘に俺の国を乗っ取ってほしいのか!?」
「全然、というか本人にそのつもりはないだろう。あいつはのんびりと生きることが好きらしいからな」
「いや、話の内容と合ってないよそれ」
ため口は昔の癖で、なかなか治らない。
しかし、お互いのこの距離感は心地のいいものだ。
「まあ、あいつは明らかに領主のタマだ。その実力が見え隠れしていた時からすでに決めていた。タファにはその時点で伝えている……というか、本人から確認をとってきた」
「……肝が座っているよね、君の家族」
正直、エリックも息子の直談判には驚かされた。
しかし、同時に観察眼は間違っていないと嬉しくもあった。
「今や公務はほとんどサラが行っている状況だ。学園に入ってからでもそれは変わらない。あいつは領地内にそのシステムを作っていったから、確認作業とまとめることだけが今の領主の仕事だからな」
「局所、か。同じ立場で思いつく気がしないな」
「ああ、思いついても実行できる気がしないしな」
サラの何気なく「大学卒業生に仕事先があればいいな~」くらいの気持ちで作った各局は、いまや領地を回すために必要不可欠なものになっていた。
当時、その大部分が領主の仕事だったのだが、勉学を多くのものが習得した領内で、人数を活かしたその政策は大成功だったといえるだろう。
局所の下にも分局という付属ができてからはさらに進んでいる。
前と比べ、仕事の量も質も上がった上に、局所の従業員の大部分が平民であるために、庶民とのつながりが強く、結束力もあった。
領民に対して不足がちだった仕事先も増え、金も円滑に回るようになり、治安もよくなる。
ここで一番の問題点である資金は、サラが商会で成功することで賄えた。
領内だけでなく、外国にまで伸びるその腕は国一のやり手。
エリックとしてはなぜこの王にも限ってその存在を見つけられなかったのかが不思議だった。
「いや~、ただでさえお前のとこの使用人や領民たちは口が堅いし、最近良い騎士とか密偵が手に入らないんだよね~。まいった参った」
なるほど、どこも人材不足には悩まされているらしい。
「ところで、サラ嬢は学園で考査を受けなくてもよいというのは誠か?」
「…ああ、それはサラの教え子が学園の教師にいるそうだ。奴らはサラに心酔している。それはもう神のように祭っているぞ。当の本人が気が付いているかは知らんが」
そして、さらりと暴露した幼馴染に、国王は頭が痛いの一言だった。
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