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学園編

42 王立魔法学園

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馬車でカタコト一時間ほど。
ちなみにチェニーはああ言いましたが、スプリングが効いた家の馬車はあんまり揺れないように作り替えずみです。
この世界にバネの力が無いと知ったときのあの絶望感はいまでも覚えています。
……まあ、バネを作ったことで機械類も結構な発展をしてくれまして、そこは嬉しい誤算でした。

というわけで、快適に馬車の中で過ごせたので、ルンルンで門をくぐる私。
一応門番が立っているが、馬車にはニコラス公爵家の紋様がはっているので顔パスだ、凄い。
お兄様は先程からなにか言いたげな目線でチェニーを睨んでる。

その様子がチワワとドーベルマンが見あっているように見えるのは私だけなのだろうか。
チェニーは決して睨んでいるわけではないが……なんか、こう、雰囲気が鋭いものだった。

「お兄さ……」
「にいに!」
「……にいに、いい加減にしませんと凍らせますわよ?」
「!?」
冷凍保存、ちなみに死なないように結界をかけてからである。

自然現象に近い魔法は感情的になると強くなる傾向がある。
とはいってもそれは制御できていないだけのはなしなので、前世じゃ笑われものだったが、今世では違う意味で効果があるようだ。

お兄様は私に「にいに」と呼んで欲しいようだが、生憎、私は学園に入ったら私生活以外は絶対呼ばないと決めていた。
なぜ、十五になってまで実兄を幼い言葉で呼ばなければならないのだろう。
高校生になっても母親のことをママと呼ぶくらい恥ずかしい。

お兄様は今学園で研究生として仕事しているので、敬称は先生だし、先生を思わずママと呼んじゃうようなものである。
絶対に嫌だ。
ちなみに、先生呼びは良いらしい。

「僕サァラの担任になりたいなぁ。……うふふ、入試テスト頑張ってねサァラ」
お兄様は私をぎゅっと抱き締めて馬車から降りていった。
ここは研究所らしく、白い建物の隣がお兄様の寮みたいだ。

今から男性入室禁止の女子寮に向かうので、お兄様には先に降りてもらったのだ。
なかなか背を見せないお兄様に時間を食わされたものの、ようやく寮の門前まで来た。
運転手が男なので、馬車はここまでである。
大した荷物もないので困ることはない。

「わぁ~素敵な場所ね!」
門をくぐれば一面に花壇があった。
バラが甘く鼻腔をくすぐり、洋館のような寮は歴史を感じる作りだが、古いとは思わない美しさがあった。
ここが女子寮、今から私が三年を過ごす場所。
どんなに素敵なことが待っているのだろうかと私はルンルンで歩いて行った。
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