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幼少期編

36 バベットとカーシェリー

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ーーーコンコン。
「アーシェリー只今参りました」
「バベット只今参りました」
「入ってよろしい」
「「失礼いたします」」

私の執務室に二人の若者(といっても私より年上)が入ってくる。
二人は平民だが、入室までがそれを感じさせない礼儀のよさだ。

「こんにちわ、アーシェリー、バベット。紹介するわ、私のお兄様よ」
私以外に人がいて強張った二人にすかさずお兄様を紹介する。
チェニー以外が私の部屋にいるのは珍しいもんねぇー。

私に紹介されたお兄様はすかさず追加をしてきた。
「はじめまして、兄のタファだ。いつも妹がお世話になっている」
「あ、はじめまして。財務局局員のアーシェリーです」
「はじめまして。法律局局員のバベットです」
挨拶をした二人を私はソファーへ促した。
ここで一番偉いのはお兄様だけど、家族だし、ここは私の部屋だしね。

「んで?なんでこの二人を俺に紹介するのかな?」
大体はわかっているであろうお兄様は答え合わせを要求してくる。
「もちろん、将来領主になるであろうお兄様への側付けにですわ。二人は新人でも優秀な子達ですから、今でも十分に働いてくれますし、なんならお兄様が自分で好きな子を選ぶまでの代理でも大丈夫な子達です」
私の最後の台詞に二人はだらだらと冷や汗をかいていた。
ごめんね、新人に沸かせるわけにはいきないのよ。

「……ええっと。……突っ込みどころ満載、なんだけど…」
タファは苦笑いをしながらぼそりと呟いた。
「あー、とりあえず了解した。アーシェリー、バベットよろしくね」
「「よろしくお願いします」」
この部屋のなかで三人は今まったく同じことを考えていた。
ーーー勘違いしてるなぁ……。

そんなことも露知らず、私はタファに現状を報告した。
「……うん、僕の出番ないよね?」
「そう言わないでください、お兄様は次期当主としてやるべきことなんですから」
「……。そうだ、サァラ。執事は欲しくない?」
お兄様は居たたまれないのかそんなことを急に話始めた。

「執事ですか?うーん、まぁ今チェニーたちの仕事量が多いのが気になるのですよね。ですが、ルイがいる以上男の人はちょっと……」
「もちろん、僕も男をサラの側に置くつもりなんてさらさらないよ。女性の執事さ」
女性の執事……、なんか格好いいぞ。
「まぁ、素敵。ぜひお願いしたいわ」
「そうか、サァラが喜んでくれるならそれが一番だからな。丁度いいやつがいるから、今度連れてこよう」

チェニーは私の隣で嬉しそうに笑っている。
ルイは若干呆れ顔だが、多分お兄様のシスコン具合に馴れていないのだろうなぁ……。
いつになったら治るのかね?
とりあえず、いつものあれやりますか。

「ありがとうございます、にいに。大好きですわ」
おまけでにこりと微笑んでやるとお兄様は嬉しそうにガッツポーズをした。
ちょろいな。

私は天にも召されそうなお兄様を見てそう思った。
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