66 / 165
幼少期編
35 残念なイケメン
しおりを挟む
今日はお兄様が学校をお休みして帰ってくる日だ。
私はお兄様の大好きなマカロンを作ってフロントでその知らせを待った。
今日はリバートがそばにいるので、領地に入ったら時点で知らせを受けた、時間的にはそろそろではないだろうか。
「お嬢様、タファ様がお帰りになられましたわ」
チェニーがフロントの端でくつろいでいる私に声をかけた。
私は待ってましたとばかりにバッと立ち上がり、玄関へと向かった。
「にいにっ!お帰りなさいませ!!!」
玄関ではお兄様とニーファとイソクがいた。
二人ともお兄様について学園へ出張だったので、会うのは久しぶりである。
「ただいま、サァラ」
十五になってますます身長が伸びたお兄様は、現在百六十五センチほど。
私も延びてはいるが、あっという間に差をつけられてしまった。
可愛かったお兄様が可愛さの片鱗を見せつけない、男性になった。
「ああ、サァラ。見ない間に更に可愛らしくなってしまって……。にいには心配だよぉ」
「ありがと、にいに。じゃあ、お仕事しよっか?」
帰ってきて早々で悪いが、こちらだって仕事があるのだ。
タファがいないとできない仕事は既に粗方終わっている。
そう言われたお兄様の顔は少し歪んでいる。
「えー、僕としては可愛い妹と久しぶりの再開だからゆっくりしたいんだけど……」
「大丈夫ですわ、にいに。私と楽しくお仕事しましょう」
お兄様の表情はさらに複雑になる、もう一押しかな。
「では、お仕事が終わりましたら二人でデート致しましょーーー」
「やる!よし、今すぐ仕事しようっ!」
即答でした。
ポイントはお出かけでなく、デートと言うことである。
兄妹でデートなのに喜ぶとか、お兄様は案外モテないのだろうか?
……いや、パーティーなんかでは確実に女の子たちが沸き立っているので、モテていないなんてことあるはずはない。
もしかして、重度のシスコンだから、みんな引いて話しかけられないとか?
ーーーありうるなぁ……。
私はアデルと初めてあったときのことを思い出した。
それに、パーティー中のお兄様は妙に静かで怖い。
本当に二重人格者かもと思うほどいつもと違うから、余計に話しづらいかもしれない。
うちは公爵家だけど、お父様とお母様が恋愛結婚だったから、婚約者とかいないしね。
寂しいお兄様、まさに残念なイケメンである。
私は張り切って私の書斎に向かうお兄様の背を見ながらそう思った。
「チェニー、私たちも行くわよ。バベットとカーシェリーを呼んできてちょうだい」
「畏まりました、ルイ頼んだわよ」
新米メイドルイちゃんは先輩メイドチェニーに声をかけられてガチガチになりながら二人を呼びにいった。
ルイは私が十歳になったプレゼントにと、お母様から譲り受けた、もとい押し付けられた新米メイドで、人見知りのある十歳だ。
彼女は伯爵令嬢らしいのだが、三女であまりの人見知りに社交界に出せないため(本人が行きたがらない)これは結婚も難しいだろうと早々にうちでメイド修行をしているのである。
ーーー言っておくがこれでも大分ましになった方で、出会いたては何かの後ろに隠れていないと会話ができなかったのだ、成長している。
人見知りも仮面を着けてだが、対処できるようになったのだし、最近もっといい仕事があるんじゃない?とか、やりたいことないの?とか遠回しに聞いてみたが、彼女の意思で私の専属メイドとしてここに留まることとなった。
人見知りさえなければとても有能な子なのでこちらとしては嬉しいが、本当に良いのだろうかという気持ちはなかなか消えない。
ーーーうん、しばらくしたらもう一度聞いてみよ。
そして、私はルイに「そんなに私は要らないですか?」とうるうるとした目で泣かれて二度とすることはないのだった。
私はお兄様の大好きなマカロンを作ってフロントでその知らせを待った。
今日はリバートがそばにいるので、領地に入ったら時点で知らせを受けた、時間的にはそろそろではないだろうか。
「お嬢様、タファ様がお帰りになられましたわ」
チェニーがフロントの端でくつろいでいる私に声をかけた。
私は待ってましたとばかりにバッと立ち上がり、玄関へと向かった。
「にいにっ!お帰りなさいませ!!!」
玄関ではお兄様とニーファとイソクがいた。
二人ともお兄様について学園へ出張だったので、会うのは久しぶりである。
「ただいま、サァラ」
十五になってますます身長が伸びたお兄様は、現在百六十五センチほど。
私も延びてはいるが、あっという間に差をつけられてしまった。
可愛かったお兄様が可愛さの片鱗を見せつけない、男性になった。
「ああ、サァラ。見ない間に更に可愛らしくなってしまって……。にいには心配だよぉ」
「ありがと、にいに。じゃあ、お仕事しよっか?」
帰ってきて早々で悪いが、こちらだって仕事があるのだ。
タファがいないとできない仕事は既に粗方終わっている。
そう言われたお兄様の顔は少し歪んでいる。
「えー、僕としては可愛い妹と久しぶりの再開だからゆっくりしたいんだけど……」
「大丈夫ですわ、にいに。私と楽しくお仕事しましょう」
お兄様の表情はさらに複雑になる、もう一押しかな。
「では、お仕事が終わりましたら二人でデート致しましょーーー」
「やる!よし、今すぐ仕事しようっ!」
即答でした。
ポイントはお出かけでなく、デートと言うことである。
兄妹でデートなのに喜ぶとか、お兄様は案外モテないのだろうか?
……いや、パーティーなんかでは確実に女の子たちが沸き立っているので、モテていないなんてことあるはずはない。
もしかして、重度のシスコンだから、みんな引いて話しかけられないとか?
ーーーありうるなぁ……。
私はアデルと初めてあったときのことを思い出した。
それに、パーティー中のお兄様は妙に静かで怖い。
本当に二重人格者かもと思うほどいつもと違うから、余計に話しづらいかもしれない。
うちは公爵家だけど、お父様とお母様が恋愛結婚だったから、婚約者とかいないしね。
寂しいお兄様、まさに残念なイケメンである。
私は張り切って私の書斎に向かうお兄様の背を見ながらそう思った。
「チェニー、私たちも行くわよ。バベットとカーシェリーを呼んできてちょうだい」
「畏まりました、ルイ頼んだわよ」
新米メイドルイちゃんは先輩メイドチェニーに声をかけられてガチガチになりながら二人を呼びにいった。
ルイは私が十歳になったプレゼントにと、お母様から譲り受けた、もとい押し付けられた新米メイドで、人見知りのある十歳だ。
彼女は伯爵令嬢らしいのだが、三女であまりの人見知りに社交界に出せないため(本人が行きたがらない)これは結婚も難しいだろうと早々にうちでメイド修行をしているのである。
ーーー言っておくがこれでも大分ましになった方で、出会いたては何かの後ろに隠れていないと会話ができなかったのだ、成長している。
人見知りも仮面を着けてだが、対処できるようになったのだし、最近もっといい仕事があるんじゃない?とか、やりたいことないの?とか遠回しに聞いてみたが、彼女の意思で私の専属メイドとしてここに留まることとなった。
人見知りさえなければとても有能な子なのでこちらとしては嬉しいが、本当に良いのだろうかという気持ちはなかなか消えない。
ーーーうん、しばらくしたらもう一度聞いてみよ。
そして、私はルイに「そんなに私は要らないですか?」とうるうるとした目で泣かれて二度とすることはないのだった。
0
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる