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6章 ドラマ撮影編

『生徒会長は告らせたい』の撮影 10

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「カットぉぉーっ!」

 俺と浜崎さんの演技が終わり、監督の声が響き渡る。

「良かったよ、2人とも!」

 5回ほど撮り直し、ようやく森野監督から絶賛の言葉をいただく。

「何度か撮り直したが浜崎さんからはかなりの時間、練習したことが伝わってきた。正直、初めての演技だとは思えないよ」
「ほ、ほんとですか!?」

 森野監督の褒め言葉に嬉しそうな声を上げる。

「あぁ。夏目くんもそう思うだろ?」
「そうですね。監督の言った通り、女優としてデビューしたばかりとは思えませんでした。俺がデビューした当初なんて10回以上は必ず撮り直してましたから」

 俺がデビューしたのは小学一年生なので、高校二年生でデビューした浜崎さんと比べるのは間違いだと思うが、今は自信を持ってもらうことが大事なので褒め言葉をメインに伝える。
 監督もその辺りは理解しているようで、しっかりと浜崎さんの演技を褒めていた。

「表情や身体の使い方、話し方などなど、告白した女の子の心境をうまく表現できてたよ。特に監督から合格をもらった最後の演技は文句なしの演技だ」
「わーっ!ありがとうございます!」

 浜崎さんが可愛いらしい笑みを見せる。

「また機会があれば声をかけるから、その時はぜひ俺の作品に出演してくれ」
「あ、ありがとうございます!」

 そう言った監督が撮影したスタッフのもとへ向かう。
 その様子を見ていると「あ、あの!」と浜崎さんから声をかけられる。

「そ、その……あ、ありがとうございました!」
「……?何が?」

 感謝された理由に心当たりがなかったため首を傾げる。

「初めての撮影で緊張してたウチをリラックスさせるため、色々と話しかけてくれました。それにウチのせいで何度も撮り直しましたが、嫌な顔せず毎回付き合ってくれました。しかも丁寧なアドバイスまで。本当にありがとうございました!」

 そう言って浜崎さんが頭を下げる。

「なんだそんなことか。いくら撮り直そうが俺は嫌な顔なんてしないよ。それに浜崎さんがかなりの時間、練習してたことは伝わってきたからね。そんな浜崎さんにアドバイスするのは当たり前だよ」

 感謝されるようなことをしてないため、柔らかい笑みを向ける。
 すると浜崎さんの顔が“ボッ!”と真っ赤になり、ボーッとした様子で俺のことを凝視する。

「ど、どうした?」
「い、いえ。先程まで緊張してて夏目さんの顔をしっかり見れませんでしたが……その……写真で見るよりも数百倍カッコいいです!」
「あはは……ありがと、浜崎さん」

 数百倍というのはお世辞だと思うが、素直に受け取る。

 その後は浜崎さんと色々な話題で盛り上がった。
 演技が終わったことで緊張することがなくなり、演技前よりも表情豊かにたくさんのことを話してくれた。

 俺の写真集を買ったことや俺が出演した番組は全て視聴したことを可愛らしい笑顔で語っており、そんな浜崎さんを見て自然と笑みを浮かべてしまう。
 そして徐々に役者関連の話題へと移り、演技のコツや注意点等々を聞かれ、簡単なアドバイスも行う。

「きっと浜崎さんなら有名な女優になれるよ。だって初めてとは思えないくらい良い演技を披露したんだから。俺も浜崎さんに負けないよう頑張るから」
「ウチも今以上に頑張ります。今は名もない役しか仕事をいただけませんが、もう一度夏目さんと共演してみせます。今度はメインヒロインという役で!」
「あぁ。お互い頑張ろうな」

 そう言ってお互いに笑い合うと、浜崎さんの背後から禍々しい雰囲気を感じた。
 そのためその方向に視線を向けると、遠くの方で頬を膨らませて可愛く睨む真奈美と、人を殺せそうなほど鋭い眼で見る立花さんが目に入った。

「ひぃっ!」
「ど、どうしましたか?」
「あ、いや……身の危険を感じて……」

(あの眼はハンターだ。特に立花さんの眼は俺を殺そうとしてる眼だぞ。なぜ怒ってるかは知らないが、急いで謝りに行かないと俺の身が危ない気がする)

「あ、そろそろ真奈美と立花さんの演技が始まるみたいだ。浜崎さんも見学してみる?」
「はいっ!ウチも勉強のため、夏目さんの隣で見学させていただきます!」

 そう言って浜崎さんが俺の腕に触れそうなくらい身体を寄せてくる。
 その瞬間、2人から物凄い殺気を感じた。

「なるほど。あの男はあんな感じで無自覚に女の子を堕としていくのね」
「ハーレム主人公もビックリするレベルだよ。もはや神業だね」

 と、何やら2人がブツブツ話している。

(俺、今からあの2人に謝らないといけないのか。何に対して謝るのか全く分からんが)

 そんなことを思いつつ、2人のもとへ向かう前に浜崎さんへ声をかける。

「……なぁ、浜崎さん」
「なんですか?」
「……俺との距離が近くないか?」
「んー?そんなことないと思いますよ?」
「……さいですか」

 俺は説得するのを諦め、今にも腕と腕が触れそうなくらい近くにいる浜崎さんを連れて、2人のもとへ向かった。
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