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5章 ドラマ撮影開始まで

『鷲尾の家族に乾杯』の放送 3

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「あははっ!お兄ちゃん、初っ端から飛ばすねー!」

 女子高生2人が気絶した様子を見た寧々が大爆笑している。

「いや、笑い事じゃないから。俺、突然目の前で倒れそうになってめっちゃ焦ったからな」

 そんな寧々にジト目でツッコミを入れる。
 そのタイミングで画面が切り替わり、今度は気絶から復活した女子高生2人が画面に映し出される。
 この映像は俺と別れた後にスタッフが撮影したもので、後日談のようなものにあたる。

――では夏目さんと会話したことで気絶された女子高生2人へ、インタビューをしてみたいと思います。

 とのナレーションの後、女子高生2人へスタッフが質問をする。

『夏目さんと直接お会いしてどうでしたか?』
『ヤバ過ぎです!チョーイケメンでした!今も心臓がバクバクしてますよ!』
『話しかけられてめっちゃ嬉しかったです!早速、友達に自慢したいと思います!』

 気絶から復活したばかりだというのに興奮気味で語る女子高生2人。
 そんな2人にスタッフが話しかける。

『実はお2人に夏目さんから伝言を預かっております』

 そう言ってスタッフが俺からの伝言を話し始める。

『ごめんなさい。俺が話しかけたせいで観光する時間が無くなっちゃって。そのお詫びといってはなんですが、これを受け取ってください』

 伝言を伝えたスタッフが俺からの贈り物である黄色い花を2人にプレゼントする。

『えっ!リン様から花を!?』
『も、もらって良いんですか!?』
『はい。夏目さんがお詫びの品として2人に購入された物です。夏目さんからのメッセージも付属しておりますので読んでみてください』

 スタッフに促された女子高生2人が、花に付属しているメッセージカードを読む。

『この花の名前は福寿草といって、花言葉は【幸せを招く】【永久の幸福】です。2人に永遠の幸せが訪れるようにという願いを込めて贈りました。気に入ってくれると嬉しいです』

 メッセージを読み終えた2人が“ボッ”と顔を真っ赤にする。

『うぅ……こんなの惚れちゃいますよ……』
『私、リン様のこと大好きになっちゃいました……』

 2人の女子高生がトロンとした目で呟く。

『開花時期は4月までなのでもうすぐ枯れると思いますが、この花は枯れても1月頃には再び咲き誇るらしいです』

 俺が伝えたことをスタッフが2人に伝える。

『大切に育ててくださいね』
『はい……大切に育てます……』
『私、この花を宝物にします……』

 2人が蕩けたような顔でスタッフの話に頷く。
 そこで画面が切り替わり、スタジオ内へと場面が移る。
 そのタイミングで隣に座っている寧々が声を上げる。

「ちょっ!お兄ちゃん!それは女子高生2人を殺しにきてるよ!オーバーキルだよ!」
「オ、オーバーキルなんてしてないぞ。俺はただ純粋に、2人に申し訳ないことをしたと思って贈り物をしただけだ」
「なんで福寿草なんて送ったの!あんなの惚れちゃうに決まってるでしょ!お兄ちゃんは女子高生2人を口説きたかったの!?」
「そ、そんなつもりで送ってねぇよ!」

 女子高生2人を口説くために福寿草を送ったわけじゃない。
 本当に申し訳ないことをしたので、2人に幸せが訪れるようにという願いを込めてプレゼントしただけだ。

「てか、お兄ちゃん。いつの間に花言葉なんて覚えたの?」
「ふっ、俺を甘く見るなよ。大抵の花なら花言葉はバッチリだ」

 子役の頃、花に関連するドラマに出演したことをキッカケに花に興味を持った俺は、花言葉について勉強をした。
 そのため、大抵の花ならすぐに花言葉を言える自信がある。

「……はぁ。お兄ちゃんって女の子にモテることに関しては天才的だよね。そうやって真奈美ちゃんや桃華さん、美奈ちゃんを口説いてきたんだね」
「おい、妹よ。俺は3人とも口説いてなんかないからな」

 妹がバカなことを言っていたため、ジト目でツッコむ。

「鈍いことに加え無自覚女たらしまで兼ね備えてるなんて。私、将来お兄ちゃんが女の子から刺されないか心配だよ」
「だから俺の話を聞けよ」

 物騒なことを言われたが、俺の話に聞く耳を持たない寧々を見て弁明を諦め、テレビへと視線を戻した。
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