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やられたら、やりかえそう!

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「サロメに聞いた所、私《わたくし》が5日間目を覚まさなかったというのは周知の事実なんですよね?」
「そうだね、エマが倒れて一向に目を覚まさないというのは辺境でずいぶんと話題になったからね」
「どのくらいでしょう?」
「……、特に箝口令とかは出してないからこの領地はほぼ網羅しているだろう」
「あとは、商人とかも話していくだろうから各地に広がるのも時間の問題だな。明日になれば首都の方にも噂話くらいは広がるだろう」
「意外と広まっているんですね」
 僕がそう言うと、サロメがコホンと咳払いをしたので視線を送れば、サロメがにっこり微笑んだ。
「皆様それはそれはご心配なさりまして、治療法を! と探し回る過程で、娘が倒れて目を覚まさないと、箝口令どころか自らで宣伝しまくっていらっしゃいました。それはもう方々に」
「だ、だって、全然目を覚まさないのよ?!」
「そうだよ、心配になって当然だろう!?」
「我々が知らない治療法や特効薬があるかもしれんじゃないか!」
「箝口令なんて出して、秘密にして治療法や薬が手に入らない方が一大事だ!」
 サロメに向かって慌てた風に、全員が口々に言い放った。
 う~ん、愛されてるなぁ、エマニュエルさん。
「大丈夫ですよ、その方が都合がいいですから」
「「「「都合がいい?」」」」
 全員が同じように首をかしげて聞いてくる。家族だなぁ、そっくりだ。
「信じてしまう嘘と言うのは少しの真実を入れることによって、より信じやすく本物のようになります。しかもそれが誰もが知る事実が含まれていれば尚更に。あちら側の流した噂は確証するものがないけれど、否定するものもない、故にそれは曖昧な『』なんです」
 首を傾げていた家族は、じっと僕の言葉に耳を傾けて時折頷いてくれている。
「でも、こちらは『5日間目を覚まさなかった』『一切の記憶をなくした』という事実があり、それによって『自殺をして一命をとりとめた』という嘘に信憑性が出ます。さらに、『王子サイドのあまりの仕打ち』は、王子サイドが流した『ただの噂』が理由になりますし、聞いた人はすぐにその噂に結びつけるでしょう」
「なるほど、あちらが流した噂も利用しようっていうんだな」
「その方がより効果的です。あぁ、そういえば、私《わたくし》が倒れたときの状況を知っている人は?」
「私《わたし》だけです。あまりにも酷い絵面だったので、主治医等が来る前に机から引っ剥がしました」
「それなら良かった。他の人が知っていたら到底自殺には思えないでしょうけど、サロメが知っているだけなら、どうでも捏造は可能ですね。あ! 宰相さんから謝罪があったってことは、いろいろ把握してらっしゃるってことですよね。いっその事こちらに引き入れて協力してもらっても良いのでは?」
「ふむ、それはなかなか良いかもしれん、ヤツはカミーユ側妃と折り合いが悪いからな」
「それに、今回のことで我々辺境は独立するとでも言ってしまえばもっと効果的かも知れませんわね」
「もしくは、帝国側につくとかな」
「あの馬k…殿下のエマに対する態度についても宰相は知っていますしね」
「そうね、エマちゃんに対して下品な視線を浴びせた上に、俺の女にふさわしいとか、その体に俺を刻むとか失礼な発言を横で聞いていたし見ていたんだもの。知らないとは言わせないわ」
 家族がにやりと笑いながら言い、フィリップさんはしばし考えた後、うんうんと数度頷いて「よし! 」と言い放つ。
「やり返すことができるならやらないというのはないだろう。今からオルガド邸会議をするぞ。エマは目が覚めたばかりだからな、しっかり休んでおきなさい。サロメ、エマを頼むぞ」
「はい、かしこまりました」
 家族はエマニュエルさんに微笑みながら部屋を後にし、サロメがふぅと息を吐いた。
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