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オルガド一家

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 ふと思い出したのは、管理人さんのところで読んだラノベ。
 婚約者の本当の姿を見ようと、記憶喪失を演じる令嬢の物語。
「あの、そういうありえない設定や、ややこしく考えること無く、いっそのこと記憶喪失になったことにすれば良いんじゃないですか。実際の所ほぼ、記憶喪失と同等の状態ですし。まだその方が信じる余地があるというかなんというか」
 僕の言葉を聞いたサロメは目を見開いて衝撃を受けたような驚きを見せた。
「それは素晴らしい! それならば、色々とぼろが出ることありませんでしょうし、いい案だと思います! 意外と頭がよろしいんですね」
「意外と……」
 うん、いや、失礼じゃない?
 そりゃね、ハイスペックお嬢様だった人に付き添ってたメイドさんからみれば、このロースペックがアホバカに見えるかもだけどさ。
 僕が10代だってみ? 拗ねるよね、絶対。
 僕がアラサーで性格的にキレにくい方だったこと、感謝してほしいわ。
「では、はじめは何もわからなかったことにしましょう。目を覚ました瞬間から自分のことすらわからない状態だった、そこに私がご家族のことと世界のことをお教えして、教えられたことは分かる状態という感じで」
「……まぁ、事実そうですしね」
「言葉使いは、ショックのあまり丁寧になってしまったことにしましょう」
「え?」
「あぁ、ご存知かと思いますが、お嬢様がこの屋敷でそんな丁寧な言葉を使ったことはございませんよ。ウザい、キモい、死ねの三段活用をされる方です。ですので、貴方の時々みせる微妙にぞんざいな言葉使いのほうがお嬢様らしさが出ています」
「……マジか」
「あぁ、それですそれ」
「あの、確かにお嬢様ですよね?」
「そうですよ。……なんですか、その納得行かないという顔は。『お嬢様』であれば大人しく言葉使いも優雅で可憐であらねばならないとでも?」
「そういうわけではないですけど、世間一般的にはそういう感じでは?」
「ご安心ください。お嬢様はハイスペックですので、来客時や外出時は完璧な淑女でいらっしゃいました。お嬢様の真の姿を知っているのはごく親しい者達だけであり僅かです。しかし、逆に言えば、それほどにまで親しいということは別人だというのはバレやすいということです」
「じゃぁ、やっぱり記憶喪失っていうのが一番良いですね」
「そうですね、一番だと思います。あ、先程も申しましたが、お嬢様は外面では完璧な淑女でいらっしゃいました。記憶喪失ということにすれば多少は大丈夫でしょうが、いつまでもそのままというわけにも参りませんので、淑女教育はしっかり受けてくださいませ」
「また勉強……、嫌いなのに学習内容ばかりが増えていく。この歳で勉強漬け、しかも女でもないのに淑女教育って」
「見た目はご立派な女性ですけどね。それに、この歳とおっしゃいますが、お嬢様は御年16歳です。中身がどうかは知りませんけど、16歳らしくしてくださいませ」
「じゅ、じゅうろくさい。未知の世界」
「は? 貴方も通ってきた世界では?」
「通ってきたと、今まさにその時とでは色々違うんですよ。はぁ~しんどい」
「私からは頑張れとしか言いようがないですね。まぁ、とにかく、記憶喪失ということで行きましょう。これなら何を聞かれても大丈夫ですからね。私一人で教育しなくてすみますし。なんとも本当に良い策を思いつかれたことで」
 うん、いま本音出たよね。
 そうか、一人で教育するのが面倒だったのかぁ。まぁ、僕が逆の立場でもそう思うな、うん。
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