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青天の……

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 そして、鏡に写った異次元のその体が、自分が思った通りに動くのは違和感しか無く、頭の片隅には「夢じゃね? 」という思いがどこかにあった。
 が!
 じんわりと訪れる肩こりに、経験したことのない身体の重み(特に胸)に「あぁ、現実か」と改めて噛みしめることに。
 椅子に戻って腰掛け、首を回しながら肩こりを和らげようとしていると、先程のメイドさんが現れた。
「お嬢様、お食事まで今暫くございますので、身支度をいたしましょう」
「え? 食事するだけなのに?」
 僕が首をかしげて言うと、メイドさんは一瞬無表情になったのち、素早く僕に近づきながら裾を翻し、次の瞬間には僕の喉元に細身のナイフを突きつけていた。
「ふぉう! 何事!?」
「……それはこちらのセリフでございます。お嬢様そのものに見えますが、貴様は一体どちらの誰でございましょう?」
「う、うぇ?」
 思わず白塗りの殿様で有名なあの方のようになってしまった。
 いや、バレてるなとは思ってましたよ。でもいきなりナイフはなくない?
 普通に聞けばよくない?
「お嬢様が生まれてから今日《こんにち》までお側に居た私を騙すなど100万年早いですよ?」
「いや、あの、自分もよくわかって無いんです! けど、説明するんで、緊張感漂うこの感じやめていただけないでしょうか?! 自分、人畜無害なんで!」
 冷たいナイフが当たる感触に耐えられずに叫べば、メイドさんは少し考えた後ナイフを仕舞い、後ろからヘッドロックをかましながら、穏やかな声で僕に促しの言葉をおっしゃいます。
「さぁ、どうぞ」
 うふふ、メイドさんが納得しなければこのまま首を締めて落としてやるぞという意味でしょうか? メイドさんってこんなに戦闘系だったっけ?
 恐ろしいことこの上ない状態だったけれど、ありのままをお話、っていうかありのまましかお話できないわけで。
 話し終われば、メイドさんはヘッドロックを解除し、大きなため息とともにその場にへたり込んでしまいました。
 お嬢様という方が居なくなって泣いてしまったのかと、驚きながら僕も立ち上がり、後ろに回り込んで膝をつきメイドさんの顔を覗くと、そこには呆れを通り越した諦めの表情が。
「えっと、あの、大丈夫ですか?」
「はぁ、大丈夫ではないですが、大丈夫です。それよりも、申し訳ございません、お嬢様がご迷惑を」
「と、いうことは、信じていただけたということで?」
「はい、お嬢様は前々からその気がお有りで、そういう魔術を熱心に勉強していらっしゃいましたし、何よりお聞きした貴方の元の容姿と、今のご様子を見れば信じる他ございません」
「元の容姿、関係あります?」
「はい。お嬢様はそれはそれはご自分の容姿をひどく嫌っておいでで、女であることも嫌がっておいででした。デブはお嫌いでしたが、かといって筋肉野郎もお嫌いで。身長も高すぎるのは好きではなく、お顔も美形は嫌がり、あっさりとしたどこにでも紛れることのできる顔がお好きで、それこそ貴方の元の容姿はお嬢様の理想の姿でございましょう」
「まじで? あれが?」
「はぁ、本当に申し訳なく。私、お嬢様に代わってお詫びと、そしてなにか困ったことがお有りでしたら何なりとおっしゃっていただければ、協力させていただきます」
 深々と頭を下げてくるメイドさんは、さっきまで戦闘メイドさんだったとは思えないほど。
 でも協力してくれるのは非常にありがたい話で、早速一番聞きたかったことを聞くことにした。
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