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第一章★

002:異世界に突如連れてこられたみたい。

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――チク…タク

――チクタク…

時計の針の音
リズムよく響き渡る

真っ暗な教室に俺は呆然と立っていた。

カーテン越しにうっすら月明かりが差し込んでいる。肌寒い夜風よかぜが窓の隙間から入り込み足元を流れる。黒板の上にある蛍光灯だけがチカチカと点いている。

俺のような帰宅部は本来とっくに下校をして、家で寝ているはずの時間帯だ。なぜ俺は学校にいるのだろう。

それに……

――ス-ス-

教室の床にはクラスメイト達が無造作に横たわっている。皆寝ているようだ。

「どういうこと……?」

不思議な光景を目の前に俺は戸惑う。なんとも異様な状況なのだろう。それも皆、揃って床で寝ているのだから。

俺は私立立心館高校りっしんかんこうこうに通う高校2年生。
成績はド平均で顔も普通。彼女なし歴イコール年齢。

あたりを確かめるようにキョロキョロと首を動かす。

いつもの……教室だよな?

今いる教室は普段通っている学校とまったく同じだが、なんか不気味なんだよね…

ふと、自分のそばにある机に目を向ける。
B4の紙と筆箱くらいの小さな段ボール箱があった。

紙には、大和 真やまと まことと書かれている。

これは俺の名前だ。

――――コツン

俺のかかとに何かが当たる。
床には俺の友達、2人がうつ伏せに眠っていた。

1人は芹澤 恭二せりざわ きょうじ

性別は男。髪はやや長めで伸ばしているらしい。細身で色黒。運動神経も良いし学力も高い。ついでにモテる。
  
もう1人は女の子。名前は三島 沙也加みしま さやか

肩までのショートヘアー。栗色の髪が特徴的で目がぱっちりしている。とにかく明るくてポジティブ。そしてBL大好き。本人は隠しているけど。

俺の友達2人は周りのクラスメイト達と同様に床に横たわり、スースーと眠り続けている。

ふと、教卓に薄型テレビ?モニター?が置いてあることに気が付く。

「こんなの置いてあったっけ?」

疑問だけが次々と湧いてくる。何もわかることがない。そもそも自分はこれまで何をしてたっけ?しばらく固まっていると徐々にクラスメイトが起き始めたようだ。

俺の友達もそろそろ起きるかもしれないし、俺は一旦2人が目を覚ますのを待つことにした。



◇◇◇◇◇◇

――ガヤガヤ

数分経っただろうか……。
恭二と沙也加が起き出す。

2人とも寝ぼけながら辺りをキョロキョロと見回している。当然、状況が分からず不思議そうにしている。

段々と教室がガヤガヤと騒がしくなり始めた。クラスメイト達も起き始めている。

俺は起きたての2人に話しかける。

「おはよう」

「………おう」

恭二は頭をポリポリと掻きながら答える。

「真はいつ起きたの?」

今度は沙也加がまだ眠そうに聞いてくる。

「5分前くらいかな。ちなみにまったく状況掴めてない」

「私達、床で寝てたんだよね?なんでだろう。それに先生たちはいない感じ…?」

「いなさそうだな…。もうとっくに帰ったんだろうな」

俺は時間を確認するためにポッケトを探る。あれ?携帯がない?落としたのかな?

仕方なく教室前の掛け時計に目を向ける。

「2時???」

「え??夜中??」

嘘だろ……?

「ね…寝てしまう前って何してたっけ?」

俺は恭二に聞いてみる。一緒に考えれば少しは思い出せる気がしたからだ。でも考えてもまったく思い出せない。どういうこっちゃ…。

俺はふと窓の外に視線を向ける。

そして気づく。
月明かり以外の明かりが一切ないことに。夜の街は街灯も家の明かりも信号さえも点いていない。本当に真っ暗。

夜中2時でここまで真っ暗になるのか?

……この状況って…まるで眠らされたような……?なんとなく胸騒ぎがする。

ふと、クラスメイトの誰かが呟く。

「ねえ、何かモニターが勝手についたよ?」

その言葉にクラスのみんなは少しずつモニターに注目し始める。モニターの画面にはまだ何も映っていない。

――――ザーザザ

――――――――ザーザーザザッ

電波が悪いのだろうか。一昔前ひとむかしまえのアナログ放送の頃、テレビを深夜につけると白黒画面にザーザーと雑音が流れていたらしい。砂嵐っていうんだっけ?あれがモニターに起きている。なんか怖い…。

徐々に画質がクリアになっていく。
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