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第10話 双頭
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ハジメは夜中にコッソリと屋敷を抜け出した。
皇国の様子を見て回る為だ。
飛翔魔法と隠蔽魔法を兼用している。速度は出さない予定なので防護壁魔法は展開させていない。
学校の図書館から借りだした地図を元にフラフラと飛び回った。
大体の建物の位置を覚えた後、近場の迷宮に降り立った。
『転移魔法陣』
壁に右手を当ててそっと念じた、
名前だけは覚えておいて中には立ち入らずに次を迷宮へと飛んだ。
ハジメは日本中の迷宮に転移魔法陣を敷設するつもりであった。
自分の世界との差異が知りたかったのだ。
これは帰還する魔法陣の構築に役立つはずだ。
「ん?」
東京と千葉の境目辺りに微弱な迷宮の反応が在ることに気が付いた。
(地図に無いぞ?)
その迷宮の側に降りたハジメは地面に手を当てた。地脈の様子を探る為だ。
(そうか、魔蘇不足で迷宮を造成に失敗したのか……)
魔蘇とは地脈に魔力が混ざった物だ。
(この辺は関東フラグメントの境界だから地震でも起きたんだろ)
関東フラグメントとは、大陸プレートに潜り込もうとするフィリピンプレートの上に乗っている陸塊のことだ。
不安定な作りなので地震の発生源になったりしている。
迷宮を造り出そうとしたときに、邪魔が入って失敗したのであろう。
地脈との接続に失敗した迷宮核は、未成熟のままになってしまったのだ。
「コレを使うか……」
ハジメは魔王である。全知全能だが疲れるし腹も減る。魔力を回復させる必要も有る。
地上でも回復するが魔宮の方が回復が早いのだ。
それに誰にも邪魔されずにくつろげる場所の必要性を感じている。
魔宮核は一階に有るのは感知していた。後は核に魔力を流し込んでやれば良いのだ。
『造宮』
ハジメが両手を広げて念じた。
迷宮の上に魔法陣が光り、ゆっくりと回りだし魔法陣の中心から雷のようなモノが迷宮に落ちていく。
そして回転に呼応するかのように大地の揺れが四方に走っている。
中にはひび割れから光が漏れ出ている箇所もあった。木々がざわめき突然の揺れに驚いた鳥たちにが飛び立っていた。
「………………」
土煙が落ち着いた頃にハジメは魔力の注入を止めた。
「百階位かな?」
迷宮は迷宮核を中心として階層を増やしていく。多階層となるには核が吸収して合成される魔蘇の量と濃度に左右される。
勿論、濃くて量が多い方が階層が深くて、強い魔獣が強くなるのだ。
『探査』
探査魔法で作った迷宮の様子を探った。
すると、自分が造成した迷宮がやたらと深い事に気が付いた。
「あああ、また加減を間違えた……」
ハジメは頭を抱えてしまった。太平洋で極限魔法を使った時にちょっとだけ大きいかなと印象を受けた。
「なんか…… 五割り増しって感じなんだよなあ……」
この世界ではハジメの魔力の通りが良すぎるのか強めに出てきしまうようだ。
それは感じていたので弱めに魔法を掛けたつもりだったが大きかったようだ。
「大体、二百五十五階くらいか……」
極種クラスの迷宮をウッカリ作成したようだ。
この世界の魔王では無いので力の使い方に慣れていないのだ。
「まあ、ピッタリだから良いか……」
入り口を誤魔化す為に、近くにあった廃神社を移動させた。転移魔法陣は鳥居を潜る場所にした。
全体に結界と防護壁を施して外界と切り離した。
これでうっかり足を踏み入れない限り、人には認知されなくなったはずである。
「一階に門番置きたいんだがな」
門番となるとAクラス位の魔獣を置かないと駄目だ。
(攻守に優れたウロボロス辺りかな?)
その為には魔導回路を地下深くから誘導しないといけない。地表面に近い場所は濃度が薄いのだ。
「まあ、それは後で作りに来よう……」
最下層辺りの様子が不昧なので、朝までに終わらないかも知れないと思った。
だから、それは後日に暇な時にやろうとした。
「まあ、取りあえず門番を置いておくか……」
ハジメは迷宮アンノウンの一階に移動した。
『召喚 ウロボロス』
双頭の蛇ウロボロスが現れた。体長は二十メートル程。中層あたりのラスボスに相応しい魔獣だ。
これを入口に配置することで、低層階には弱い魔獣しかいないと思い込んでる探索者を刈り取ることが出来る。
俗に言う初見トラップだ。
卑怯と思うかも知れないがハジメとしては誰にも侵入されたくないので用意した。
一際大きな雄叫びを上げたかと思うとハジメをパクリと飲み込もうとした。
バクンっ!
次の瞬間、ウロボロスの頭が吹き飛び、粘液塗れのハジメが現れた。
「この大馬鹿者っ!」
ハジメはウロボロスの残った頭をぶん殴った。
「主もわからんのかっ!」
ウロボロスは萎縮して丸まってしまった。
召喚されて出現した目の前に人間がいたのだ。
本能に従って捕食しようとしだけなのだ。
「ったく……」
出現したばかりでレベルが低いのだろう。まだ知能が未発達なのだ。
ある程度、レベルアップしてやれば意思の疎通が出来るようになる。
進化というやつだ。
『超回復』
ウロボロスの全身が光りだす。するとハジメが砕いた片方の頭がみるみる内に生えてきた。
ハジメはウロボロスの頭を再生させたのだ。
一般的な傷を治す回復と違って、超回復は欠損した部分を含めて再生出来る。高度な回復魔法だ。
「そういえば教育もしないといけないのか……」
顔に付着した粘液を拭いながら、やはりケルベロスにしようかと考えた。
ハジメはワンコが好きなのだ。まあ、ワンコと呼ぶには凶悪な気がする。
(アレも同じだったっけ……)
以前に召喚した時に、甘噛みされて頭が血だらけになったことを思い出した。
(まあ、可愛かったけど……)
人間と違って忠誠心は揺るがない。
その点が大いに気に入っている点だ。
(まあ、どっちにしろ最下層まで行くから連れていくか……)
最下層をある程度加工してあげないといけない。自分専用の寛ぎ空間を作りたかったのだ。
なので、レベルアップはその時についでにやってやろうと考えたのであった。
皇国の様子を見て回る為だ。
飛翔魔法と隠蔽魔法を兼用している。速度は出さない予定なので防護壁魔法は展開させていない。
学校の図書館から借りだした地図を元にフラフラと飛び回った。
大体の建物の位置を覚えた後、近場の迷宮に降り立った。
『転移魔法陣』
壁に右手を当ててそっと念じた、
名前だけは覚えておいて中には立ち入らずに次を迷宮へと飛んだ。
ハジメは日本中の迷宮に転移魔法陣を敷設するつもりであった。
自分の世界との差異が知りたかったのだ。
これは帰還する魔法陣の構築に役立つはずだ。
「ん?」
東京と千葉の境目辺りに微弱な迷宮の反応が在ることに気が付いた。
(地図に無いぞ?)
その迷宮の側に降りたハジメは地面に手を当てた。地脈の様子を探る為だ。
(そうか、魔蘇不足で迷宮を造成に失敗したのか……)
魔蘇とは地脈に魔力が混ざった物だ。
(この辺は関東フラグメントの境界だから地震でも起きたんだろ)
関東フラグメントとは、大陸プレートに潜り込もうとするフィリピンプレートの上に乗っている陸塊のことだ。
不安定な作りなので地震の発生源になったりしている。
迷宮を造り出そうとしたときに、邪魔が入って失敗したのであろう。
地脈との接続に失敗した迷宮核は、未成熟のままになってしまったのだ。
「コレを使うか……」
ハジメは魔王である。全知全能だが疲れるし腹も減る。魔力を回復させる必要も有る。
地上でも回復するが魔宮の方が回復が早いのだ。
それに誰にも邪魔されずにくつろげる場所の必要性を感じている。
魔宮核は一階に有るのは感知していた。後は核に魔力を流し込んでやれば良いのだ。
『造宮』
ハジメが両手を広げて念じた。
迷宮の上に魔法陣が光り、ゆっくりと回りだし魔法陣の中心から雷のようなモノが迷宮に落ちていく。
そして回転に呼応するかのように大地の揺れが四方に走っている。
中にはひび割れから光が漏れ出ている箇所もあった。木々がざわめき突然の揺れに驚いた鳥たちにが飛び立っていた。
「………………」
土煙が落ち着いた頃にハジメは魔力の注入を止めた。
「百階位かな?」
迷宮は迷宮核を中心として階層を増やしていく。多階層となるには核が吸収して合成される魔蘇の量と濃度に左右される。
勿論、濃くて量が多い方が階層が深くて、強い魔獣が強くなるのだ。
『探査』
探査魔法で作った迷宮の様子を探った。
すると、自分が造成した迷宮がやたらと深い事に気が付いた。
「あああ、また加減を間違えた……」
ハジメは頭を抱えてしまった。太平洋で極限魔法を使った時にちょっとだけ大きいかなと印象を受けた。
「なんか…… 五割り増しって感じなんだよなあ……」
この世界ではハジメの魔力の通りが良すぎるのか強めに出てきしまうようだ。
それは感じていたので弱めに魔法を掛けたつもりだったが大きかったようだ。
「大体、二百五十五階くらいか……」
極種クラスの迷宮をウッカリ作成したようだ。
この世界の魔王では無いので力の使い方に慣れていないのだ。
「まあ、ピッタリだから良いか……」
入り口を誤魔化す為に、近くにあった廃神社を移動させた。転移魔法陣は鳥居を潜る場所にした。
全体に結界と防護壁を施して外界と切り離した。
これでうっかり足を踏み入れない限り、人には認知されなくなったはずである。
「一階に門番置きたいんだがな」
門番となるとAクラス位の魔獣を置かないと駄目だ。
(攻守に優れたウロボロス辺りかな?)
その為には魔導回路を地下深くから誘導しないといけない。地表面に近い場所は濃度が薄いのだ。
「まあ、それは後で作りに来よう……」
最下層辺りの様子が不昧なので、朝までに終わらないかも知れないと思った。
だから、それは後日に暇な時にやろうとした。
「まあ、取りあえず門番を置いておくか……」
ハジメは迷宮アンノウンの一階に移動した。
『召喚 ウロボロス』
双頭の蛇ウロボロスが現れた。体長は二十メートル程。中層あたりのラスボスに相応しい魔獣だ。
これを入口に配置することで、低層階には弱い魔獣しかいないと思い込んでる探索者を刈り取ることが出来る。
俗に言う初見トラップだ。
卑怯と思うかも知れないがハジメとしては誰にも侵入されたくないので用意した。
一際大きな雄叫びを上げたかと思うとハジメをパクリと飲み込もうとした。
バクンっ!
次の瞬間、ウロボロスの頭が吹き飛び、粘液塗れのハジメが現れた。
「この大馬鹿者っ!」
ハジメはウロボロスの残った頭をぶん殴った。
「主もわからんのかっ!」
ウロボロスは萎縮して丸まってしまった。
召喚されて出現した目の前に人間がいたのだ。
本能に従って捕食しようとしだけなのだ。
「ったく……」
出現したばかりでレベルが低いのだろう。まだ知能が未発達なのだ。
ある程度、レベルアップしてやれば意思の疎通が出来るようになる。
進化というやつだ。
『超回復』
ウロボロスの全身が光りだす。するとハジメが砕いた片方の頭がみるみる内に生えてきた。
ハジメはウロボロスの頭を再生させたのだ。
一般的な傷を治す回復と違って、超回復は欠損した部分を含めて再生出来る。高度な回復魔法だ。
「そういえば教育もしないといけないのか……」
顔に付着した粘液を拭いながら、やはりケルベロスにしようかと考えた。
ハジメはワンコが好きなのだ。まあ、ワンコと呼ぶには凶悪な気がする。
(アレも同じだったっけ……)
以前に召喚した時に、甘噛みされて頭が血だらけになったことを思い出した。
(まあ、可愛かったけど……)
人間と違って忠誠心は揺るがない。
その点が大いに気に入っている点だ。
(まあ、どっちにしろ最下層まで行くから連れていくか……)
最下層をある程度加工してあげないといけない。自分専用の寛ぎ空間を作りたかったのだ。
なので、レベルアップはその時についでにやってやろうと考えたのであった。
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