30 / 50
10. 令嬢の憂鬱 ③
しおりを挟む
でも、ふと思った。
何かおかしな気がする。
榛瑠が私を離した。彼の顔をじっと見る。こうして見ても普通なんだけど、でもなんか。
「どうしました?今度は何くだらない事思いついたんです?」
そう言って笑いながら私の頬をつねった。
「いひゃいってば」
榛瑠が私を見て笑った。やっぱりおかしい、機嫌がよすぎるというか……。なんというか、そう、私をかまい過ぎる。
起きぬけは怒っていた気がしたんだけどな。からかって気晴らししたとか?それはそれでどうかと思うけど。
なんだろう?また熱でもあるのかな?
私は彼の額に手を当てた。でも、別に熱はなさそう。
「何なんですか、いったい」
「うーん、なんだろう」
なんだろう、この違和感。なんか変。
前にこんな事がなかったか記憶を探る。あったような、なかったような……。
「お嬢様?」
「ねえ、何かさあ……、ねえ、怒らないでね?榛瑠、変じゃない?」
「どこがですか?いつも通りですよ」
そう言って榛瑠は微笑む。なんだろう、この優しい笑みがすでに違和感。嬉しいのだけれど。
「だって、なんか……。体の具合が悪いわけじゃないなら何かな。……もしかすると、メンタル?って何?落ち込んでるとか?そんなわけないか」
ボソボソ言う私を榛瑠はじっと見た。どこか驚いているようにも見える。
「あなたは時々、困った事を言いますね」
そう言って座りなおすと、考え込む顔をした。なんだろう。
「ごめんね?あの、違うならいいの。ただ、何かおかしな感じがしただけで……」
「言いたい事はわかります、そうか、そうだな」
はい?
「そういうのってなんて言うんでしたっけ?」
「え?なんの事?落ち込む事?自己嫌悪とか?」
「ああそうか、自己嫌悪か」
なんなの、いったい。榛瑠を見ると皮肉っぽい表情でうっすらと笑っている。
……もしかしてこの人、自己嫌悪した事ないの?
「あの、あなた、落ち込んだ事ないの?」
「ありますよ、よくあるとは思うんですが、……そう、引き摺るのはあまりないですね。大人になってからは特に。大丈夫のつもりでいたんですけど」
「はあ……」
「おかしいな、やれることはやったんだがな」
榛瑠は独り言のようにブツブツ言う。なんなんだ、いったい。
と思ったら、首を抱えながら下を向いてしまった。
「ちょっと、ちょっと、大丈夫?」
こんな榛瑠見た事ないよ?珍しすぎて突っ込むこともできない。
「自覚したら余計きました。原因はわかっているんです。優先順位の判断ミスと、あと、見通しの甘さですね。口にするとロクでもないな。自分の馬鹿さ加減にウンザリしてきますね」
いや、あなたがバカだって言うなら、私なんてお猿さんレベルですよ?
「ごめん、聞いていい?いったい何を失敗したの?」
彼がここまで落ち込むなんてどんな事?想像も出来ない。なにやっちゃったんだろう。
榛瑠が私を見た。ドキッとする。聞いちゃいけなかったかな、やっぱり。
「すみません、いろいろ言い訳しました」
……?
「なんで、私に謝るの?」
「あなたを危険にさらしたから」
はい?なんですって?
「え?あれ?なに?……もしかして落ち込んでる理由、そこ?」
「そうです。他になにかありますか?」
他って、だって。いや、いや、まてまて。
「いや、他にあるんじゃないの?だって、私は無事だったんだし」
「でも、危ない目に合わせた時点で失敗なんです。取り返しのつかないミスになるところでした」
えーと。彼の考えが全然わからない。
何かおかしな気がする。
榛瑠が私を離した。彼の顔をじっと見る。こうして見ても普通なんだけど、でもなんか。
「どうしました?今度は何くだらない事思いついたんです?」
そう言って笑いながら私の頬をつねった。
「いひゃいってば」
榛瑠が私を見て笑った。やっぱりおかしい、機嫌がよすぎるというか……。なんというか、そう、私をかまい過ぎる。
起きぬけは怒っていた気がしたんだけどな。からかって気晴らししたとか?それはそれでどうかと思うけど。
なんだろう?また熱でもあるのかな?
私は彼の額に手を当てた。でも、別に熱はなさそう。
「何なんですか、いったい」
「うーん、なんだろう」
なんだろう、この違和感。なんか変。
前にこんな事がなかったか記憶を探る。あったような、なかったような……。
「お嬢様?」
「ねえ、何かさあ……、ねえ、怒らないでね?榛瑠、変じゃない?」
「どこがですか?いつも通りですよ」
そう言って榛瑠は微笑む。なんだろう、この優しい笑みがすでに違和感。嬉しいのだけれど。
「だって、なんか……。体の具合が悪いわけじゃないなら何かな。……もしかすると、メンタル?って何?落ち込んでるとか?そんなわけないか」
ボソボソ言う私を榛瑠はじっと見た。どこか驚いているようにも見える。
「あなたは時々、困った事を言いますね」
そう言って座りなおすと、考え込む顔をした。なんだろう。
「ごめんね?あの、違うならいいの。ただ、何かおかしな感じがしただけで……」
「言いたい事はわかります、そうか、そうだな」
はい?
「そういうのってなんて言うんでしたっけ?」
「え?なんの事?落ち込む事?自己嫌悪とか?」
「ああそうか、自己嫌悪か」
なんなの、いったい。榛瑠を見ると皮肉っぽい表情でうっすらと笑っている。
……もしかしてこの人、自己嫌悪した事ないの?
「あの、あなた、落ち込んだ事ないの?」
「ありますよ、よくあるとは思うんですが、……そう、引き摺るのはあまりないですね。大人になってからは特に。大丈夫のつもりでいたんですけど」
「はあ……」
「おかしいな、やれることはやったんだがな」
榛瑠は独り言のようにブツブツ言う。なんなんだ、いったい。
と思ったら、首を抱えながら下を向いてしまった。
「ちょっと、ちょっと、大丈夫?」
こんな榛瑠見た事ないよ?珍しすぎて突っ込むこともできない。
「自覚したら余計きました。原因はわかっているんです。優先順位の判断ミスと、あと、見通しの甘さですね。口にするとロクでもないな。自分の馬鹿さ加減にウンザリしてきますね」
いや、あなたがバカだって言うなら、私なんてお猿さんレベルですよ?
「ごめん、聞いていい?いったい何を失敗したの?」
彼がここまで落ち込むなんてどんな事?想像も出来ない。なにやっちゃったんだろう。
榛瑠が私を見た。ドキッとする。聞いちゃいけなかったかな、やっぱり。
「すみません、いろいろ言い訳しました」
……?
「なんで、私に謝るの?」
「あなたを危険にさらしたから」
はい?なんですって?
「え?あれ?なに?……もしかして落ち込んでる理由、そこ?」
「そうです。他になにかありますか?」
他って、だって。いや、いや、まてまて。
「いや、他にあるんじゃないの?だって、私は無事だったんだし」
「でも、危ない目に合わせた時点で失敗なんです。取り返しのつかないミスになるところでした」
えーと。彼の考えが全然わからない。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる