フラれたので、記憶喪失になってみました。この事は一生誰にも内緒です。

最上家-表-

私は最上先輩の手を握りドキドキしている。
現在最上先輩の家の前、
今日はクリスマスパーティーに招待されていた。

「じゃあ、入るよ」
「は、はい」
「ただいまー」

私は最上先輩に手を引かれ、
家の中へと入った。


すると奥からパタパタと音をたてて
エプロンを付け走ってくる女性、、、
最上先輩のお母さんだ。


「いらっしゃい」
「はっ、初めてまして双葉葵と申します」
「双葉、緊張しすぎ」
「ふふっ、初めまして。伊織の母です、さぁ上がって」


私は靴を脱ぎ家へと上がった。

中はとてもお洒落で、お母さんの趣味なのだろうか、
猫の置物が多数置かれていた。

「猫、、、」
「あぁ、母さんが猫好きなんだ」
「最上先輩も、猫好きですか？」
「うん、でも双葉の方が好き」


最上先輩のいきなりの
好きと言う言葉に慌てていると、
お母さんはクスクスと笑っていた。

リビングに着くと、部屋にはクリスマスツリーが
飾られ、テーブルにはチキンやケーキが置かれていた。
そして男性の姿、、、最上先輩のお父さん。


「やぁいらっしゃい。伊織の父です」
「初めまして、双葉葵です。こっ、この度はお招き頂きありがとうございます」


緊張する。
どうだろう、私はうまくやれているだろうか。


「さぁ、ここ座って」
「ありがとうございます」

私は椅子に座った。
そして最上先輩、
最上先輩のお父さん、お母さんが続けて
椅子へと座った。


「双葉さん」
「はい」
「遅れてしまったけど、伊織を助けてくれて本当にありがとう」

お父さんとお母さんは私に頭を下げる。

「いえ！そんな」
「そして記憶喪失になってしまったと伊織から聞いている。本当になんと言ったらいいか、、、」
「、、、やめましょう、せっかくのクリスマスですし。それに私が勝手に最上先輩を助けただけなので、気にしないで下さい」
「、、、双葉」
「記憶喪失と、言っても不自由はしてませんし、ふとした拍子に記憶も戻るかもしれませんし」
「双葉さん、本当にありがとう。なんかあったら助けになるから是非言ってくれ、それに伊織と付き合ってると聞いているよ、だからここも自分の家だと思って欲しい」
「嬉しいです。ありがとうございます」


優しいお父さんとお母さん。
そして自分の家だと思って欲しいという
その言葉が両親の居ない私にとって、
すごくすごく嬉しかった。