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10.勇者達のお披露目

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「みな、顔を上げよ」

 その声に、周りの貴族達が姿勢を戻す。

「今宵は、善き知らせがある。気づいている者も居ろう。我が国に、新しい風を呼び込むことに成功した」

 合わせたのか演技なのか、わあっと歓声が湧く。
 居心地の悪さを覚えながら、続きを待った。

「召喚されし者たちよ、こちらへ」

「は」
「へ?」

 打ち合わせも何もしていないにもかかわらず、呼ばれて狼狽える召喚者たち。ざわざわする会場で、でも容赦なく再度ファンファーレが鳴った。

 おい音楽隊、その目は節穴だったか。
 そう思って半ば覚悟を決めていると、階段上の扉から煌びやかな集団が降りてくる。

 委員長勇者。
 おっとり美人の聖女。
 剣聖社会人。
 それから、二十代くらいの女の人。
 召喚された部屋で、ヒナと偽装に四苦八苦していたから、しっかり顔を見ていなかったけれど。多分あの人は賢者だろう。

 紋章が大きく胸元に入った鎧。
 袖の長いドレスに、紋章入りのマント。
 大きな剣とピカピカの鉄の胸当て。
 紋章入りのローブに、濃紫の石をのせた杖。

 それぞれ、いかにもって感じの格好をしている。
 私はヒナと、そして周りにいる同郷の人たちとアイコンタクトをした。
 彼らの格好と、私たちの格好の差。それに一目できがついたからだ。
 みんな一様に似た表情をしている。例えるなら……そう。チベットスナギツネ。

「おお、黒曜石の瞳」
「なんと頼もしい」

 そう周りの貴族達が囃し立てる。
 ここにも黒目は居るんだけど、見えてないのだろう。

「紹介しよう。勇者ユウト・ワタヌキ悠人 四月一日 殿、聖剣ショウ・ブスジマ将 毒島殿、聖女アカリ・タカナシ朱里 小鳥遊殿。そして賢者ユキ・ツキヤマ由紀 築山殿だ」

 呼ばれた順に、ぺこりと一礼する。
 緊張しているが、彼らは満更でもなさそうだ。
 とりわけ勇者ユウトの使命感に満ちた顔といったら。内心失笑する。

 ひとしきり盛り上がってから、上座に彼らが通されると、今度こそ私たちの紹介が始まった。
 職業と、名前。呼ばれた順で、王族の居る上座の前に並ばされた。

「配達人 アキラ・タオカ殿」
「お針子 ユナ・アサヒナ殿」

 他の同郷の人たちがお辞儀をする中、黙ってボウ・アンド・スクレープ、ヒナはカーティシーを披露する。
 目の前に並んでいた貴族が、ほんの僅かに目を見張った。

「ほう……」

 殆ど誰もが口を開かないなか、そう声を漏らした男性の顔を盗み見る。
 チャコールグレーのマントを身につけた、三十代の銀髪の男だった。

 側になんとライアンがいる。ライアンとも目が合い、意味深な眼差しを向けてくるけれど、何を考えているのかは全くわからない。

 二人ともその辺の貴族より体つきがたくましい。ライアンは陸軍所属って言ってたから、同じ軍部の人なのかも。そう思った。







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