無音のアリバイ

無音のアリバイ

閑散とした夜、重厚な書斎の中、ルドルフは死体となって床に倒れていた。彼の首には、細い絞殺用の紐が巻きつけられていた。部屋には窓も扉も閉ざされており、なにもかもが静寂に包まれていた。

警察はすぐさま現場へ駆けつけ、現場の状況から自殺を否定。犯人を追い求めることとなった。しかしこの部屋には施錠されており、窓も内側からしっかりと閉ざされていた。一体、どうやって犯人は入ったのか。

最初に疑われたのは彼の秘書、エリックだった。彼はルドルフとの関係が険悪であり、遺産目当ての犯行という疑念が浮上した。しかし、エリックは事件当日、他県での会合に参加しており、アリバイが固かった。

そこで、警察はルドルフの趣味であった古時計のコレクションに目をつけた。部屋の隅には、大きな鳴り鐘付きの時計が鎮座していた。その時計が犯行の手がかりとなる可能性を探るため、時計を専門とするホレスという鑑定士が呼ばれることになった。

ホレスが時計を調べると、時計の針は夜の9時に止まっていた。そして、彼は鳴り鐘の部分に小さな血痕を発見。この時計の鐘が、ルドルフを殺す時の音を消してくれたことに気づいたのだ。

ホレスは理論を立てた。「犯人はルドルフを絞殺する直前、この時計の鳴り鐘を鳴らし、その大きな音で絞殺の音を消した。そして、その際に手を時計に当ててしまい血痕を残した。」

さらに調べたところ、時計の裏側には細工が施されており、外からでも鳴り鐘を鳴らすことができる機構が見つかった。エリックのアリバイを再確認すると、彼は会合に参加した後、夜に一時帰宅していた。彼はこの機構を知っており、計画的に殺害したのだ。

エリックは逮捕され、罪を認めた。彼が夜の静寂を利用して犯行に及んだことが露見したのだった。