The Anotherworld In The Game.

北丘 淳士

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真相 1

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 十分ほどで香澄の家に着いた。
 昼間見ると相変わらずでかいな……。
 荘厳な鏑木門の下で俺は改めて思った。京香に両断された閂はすでに修復されている。俺は門の横のインターフォンを押した。すると女中さんか香澄の母親か分からないが女性の声が返ってきた。
「はい、高倉ですが」
「私は香澄さんの学友で、お話があって参りました凪野涼と申します」
「お一人ですか?」
「いえ、私を含めて四人で、車で来ています」
「少々お待ちください」
 インターフォンが切れる。それから三分ほど経っただろうか、閂が動く音がし、巨漢の大上さんが出てきた。
「これはこれは凪野殿、ご連絡いただければ向かいに行きましたものの」
「いえ、私もいきなりの招集でしたので、連絡もせず申し訳ありません」
 香澄の連絡先は知らないけれど。
「香澄お嬢様は在宅しております。どうぞ、車ごとお入りください。邸宅の入り口の横に、車を停めるスペースがありますので」
 そう言って大上さんは門を全開にし、車を招き入れた。
 車に乗り込み、徐行運転で一分ほど日本庭園の中を通り、邸宅の入り口に万里加さんは車を停めた。邸宅の入り口には香澄が立って待っていた。車を降りて香澄に近づくと、上品にお辞儀をしてくれた。
「休みの日にわざわざありがとうございます」
 白を基調とした、さわやかなワンピース姿だった。
「涼君だけだったら、なおさら嬉しかったんですが」
 ふと、京香と栞を半眼で見たが、再び笑顔に戻った。
「どうぞお入りください。客間まで案内します」
 そう言って、邸宅の重厚な扉を開け、俺たちを招きいれた。俺たち五人がふかふかのソファーに座ったところで、先ほどの声の主と思しき女中さんが扉を開け、色々な飲み物がのったワゴンを押してきた。
「好きなお飲み物をおっしゃって下さい。あっ、涼君はあの珈琲でしたよね。発注して届いたのが今朝でしたので、まだ冷えてないかも知れないですが……、あ、氷を入れますね」
 女中さんの手を借りず、香澄自らグラスに氷とコーヒーを入れて俺に渡してくれた。
「ああ、ありがとう」
 本当にケースで発注したんだ……。
 『男の黒~微糖』を一飲みしたとき、俺は万里加さんに目配せした。
「皆さん初めまして。私、ゲームショップ『ミリオン』のオーナー、二宮万里加といいます」
 万里加さんは深々とお辞儀した。
「実は今回集まってもらったのは、私の店に置いていた試作機のことで話があって」
「試作機?」
 ソファーに座った香澄が聞いた。
「ええ、あれは売り物じゃなく開発中のゲーム機だったの。それを妹が陳列するだけでなく、売ってしまって、それで昨日妹にダイブしてもらって、ようやく鎬さんの名前を聞き出せた次第なの。珍しい名前って言っては失礼ですが、鎬さんの名前ですぐに分かることが出来たわけ」
 京香はその言葉を聴いてようやく得心がいった顔をした。
「ああ、あの女は、あの時の店員さん、二宮さんの妹さんだったのですね」
 女って……、言い方よ。
「ええ、私よりゲームが上手いので千景に参戦させたの。それで皆さんの購入された試作機を回収しようと思って、集まっていただいたわけ。それで……、売値の倍で買い取りますので、申し訳ありませんが返してもらえるとありがたいのですがっ」
 平身低頭する万里加さんのその言葉に京香、栞、香澄は牽制するようにお互いの目を見た。
「そういうことなら返そうよ」
 そう言ったのは俺だった。
 するとすぐさま栞が反応した。
「だめよ! あのゲーム機がなくなると、私と涼の接点が少なくなるじゃない!」
「そうです。ここは多数決で決めましょう」
「涼様には申し訳ありませんが、私も手放すのはちょっと……」
 京香が珍しく俺に反意した。
「それでは返却に反対の方、手を上げてください」
 香澄が率先して場を仕切る。
 手を上げたのは女性陣三人だった。俺が手を上げず驚いていると、隣に座る栞の手刀が腋に刺さった。それで思わず手を上げてしまう。
「……そうよね。あのゲーム機はAIを搭載したマッチング機能もついてるから、一度体験すると、離したくない気持ちが分かるわ」
 万里加さんは、がくりとうなだれた。だが、そういう答えが返ってくるのを予想していたのか、すぐに顔を擡げて提案してきた。
「それではテスターになってもらえる?」
「テスター?」
「ええ。そのゲームでどのようなことが起こったか、まず教えて欲しいの」
 それならばと俺たちはゲームの内容を事細かに話した。

「うーん、最後のソフトが気になるわ」
 聞き終わった万里加さんは、顎に手を添えて唸った。
「ラスボスのレイナルドは二段階変身しないはずなんだけど、AIが書き換えた可能性があるし……」
「一段階目は俺が倒したからでしょうか」
「その可能性もあるわね。万が一、AIが暴走する前にプログラムを変えたいところだけど」
「大丈夫ですよ」
 香澄が口を挟む。
「ここには超高校級のメンバーが揃っていますから」
「あんたは体力ないけどね」
 栞は呆れた顔で香澄を見遣る。
 香澄はソーサーとカップを置きながら、「これからつけますー」と砕けた口調で栞と目も合わさずに返した。
 俺は思っていた疑問を投げかけた。
「ゲームの中の世界で死ぬことはあるんですか?」
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