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実戦の差
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一方……。
「体力もないあんたが涼を助けるなんて無理なのよ!!」
「いーえ! 銃器があれば遠距離攻撃が出来る私が適任です」
廃墟ビルの中で、迷彩服姿の香澄と道着を着ている栞は近距離でせめぎあっていた。両者の戦いは、ほぼ互角だった。二丁拳銃の香澄は弾倉を交換しながら銃弾を放つも、栞は銃口の角度から弾道を読み、フットワークでかわし、時には手甲ではじき返していた。
一見、銃器を操る香澄が有利に思えるが、中、長距離戦だと不利になると瞬時に判断した栞は、戦いの初めから接近戦を仕掛けた。栞の判断は正解だった。
相克の時間は続く。時折、栞は被弾するも、躊躇することなく距離を詰め、コンビネーションに対応できない香澄のゲージを削る。
お互い半分ほどゲージを消耗した時だった。後退して距離をとりたい香澄が、床を走る配線に足をとられ転倒しかけたとき、距離が開いた。香澄は転倒しかけながら右手の銃を空に置き、腰に掛けている手榴弾を抜いて栞に向かって放り投げる。そして器用に、その右手で一旦放り投げた銃を再び掴む。栞は一瞬で手榴弾と気付き、反射的に前に蹴り返した。その手榴弾はビルの窓を突き破り、空中で派手に爆発する。
だが香澄は転倒したまま短銃から弾丸を数発放つ。その内、二発が空中で無防備になった栞を貫いた。
「くっ!」
お互いの距離が開き、栞は前進か後退かの二択を迫られた。いくら相手が倒れているとはいえ、短銃を持った相手に飛びかかるのは、より多くの被弾を覚悟しなければならないからだった。片足が地面に付いた栞は後退を選び、バックステップした。香澄の銃弾が栞の残像を追う中、栞は香澄を背に廃墟ビルの闇の中へと逃げ込んだ。
香澄は起き上がり、短銃をマシンガンに変えて壁に張り付き警戒する。ましらのような動きをする栞を警戒していた。マシンガンをフルオートに切り替え、薄暗いビルの中へじりじりと前進する。
やがて左か前進かの二方向に分かれた部屋にたどり着いた。扉は両方とも無い。戸口の先に見えるのは、更なる闇だった。香澄は左の戸口手前で壁に張り付いた。栞の性格から、おそらく栞から攻めて来るだろうと、物音を立てず潜む。
体感で五分ぐらい経っただろうか、途中、一回壁を壊すような音がしたが、香澄は動じることなく待ち伏せる。左と前方両方から攻められるよう壁を壊したのかもしれない、と香澄は推測した。
それから一分ほど経った頃、左の部屋から金属を蹴ったような甲高い音がした。
好機と捉えた香澄はマシンガンから手を離し、腰に吊るした手榴弾を二つ外す。それを前方と左の部屋に放り投げる。派手な爆発音が響いたあと、マシンガンを構え左の部屋に突入する。手榴弾の硝煙が立ち込める部屋をマシンガンで掃射して様子を見るも、栞の姿は無かった。
「えっ!? ということは前の部屋?」
香澄は慌てて踵を返す。
その一瞬を狙って、栞が天井の穴から香澄の背後に降りてきた。驚いた香澄が振り返る前に、栞は香澄の首に蛇のように手を回し、チョークスリーパーをかけた。香澄のゲージがみるみる減っていく。
「甘かったわね。これが実戦の差よ!」
栞が香澄の耳元で吼える。
香澄は喉を絞められ声が出ない。だが香澄もただでは転ばなかった。気が遠くなりながらもマシンガンから手を離し、太ももに納めてあったアーミーナイフを逆手にとって栞のわき腹を狙う。それに気付いた栞はチョークスリーパーを解除してナイフを手刀で叩き落し、香澄の背中を正拳で打ち抜いた。
その一撃で香澄のゲージがゼロになる。
「あなたなんかに涼君を……」
「まぁ、これが実力の差ってやつよね。この前は不意打ちだったし。それに涼は私が助けるんだから」
白いもやが栞の背後に現れる。それと同じく香澄の姿がうっすらと白い光に包まれていく。歯軋りする香澄を見届けた後、栞は白いもやへと進んでいった。
「体力もないあんたが涼を助けるなんて無理なのよ!!」
「いーえ! 銃器があれば遠距離攻撃が出来る私が適任です」
廃墟ビルの中で、迷彩服姿の香澄と道着を着ている栞は近距離でせめぎあっていた。両者の戦いは、ほぼ互角だった。二丁拳銃の香澄は弾倉を交換しながら銃弾を放つも、栞は銃口の角度から弾道を読み、フットワークでかわし、時には手甲ではじき返していた。
一見、銃器を操る香澄が有利に思えるが、中、長距離戦だと不利になると瞬時に判断した栞は、戦いの初めから接近戦を仕掛けた。栞の判断は正解だった。
相克の時間は続く。時折、栞は被弾するも、躊躇することなく距離を詰め、コンビネーションに対応できない香澄のゲージを削る。
お互い半分ほどゲージを消耗した時だった。後退して距離をとりたい香澄が、床を走る配線に足をとられ転倒しかけたとき、距離が開いた。香澄は転倒しかけながら右手の銃を空に置き、腰に掛けている手榴弾を抜いて栞に向かって放り投げる。そして器用に、その右手で一旦放り投げた銃を再び掴む。栞は一瞬で手榴弾と気付き、反射的に前に蹴り返した。その手榴弾はビルの窓を突き破り、空中で派手に爆発する。
だが香澄は転倒したまま短銃から弾丸を数発放つ。その内、二発が空中で無防備になった栞を貫いた。
「くっ!」
お互いの距離が開き、栞は前進か後退かの二択を迫られた。いくら相手が倒れているとはいえ、短銃を持った相手に飛びかかるのは、より多くの被弾を覚悟しなければならないからだった。片足が地面に付いた栞は後退を選び、バックステップした。香澄の銃弾が栞の残像を追う中、栞は香澄を背に廃墟ビルの闇の中へと逃げ込んだ。
香澄は起き上がり、短銃をマシンガンに変えて壁に張り付き警戒する。ましらのような動きをする栞を警戒していた。マシンガンをフルオートに切り替え、薄暗いビルの中へじりじりと前進する。
やがて左か前進かの二方向に分かれた部屋にたどり着いた。扉は両方とも無い。戸口の先に見えるのは、更なる闇だった。香澄は左の戸口手前で壁に張り付いた。栞の性格から、おそらく栞から攻めて来るだろうと、物音を立てず潜む。
体感で五分ぐらい経っただろうか、途中、一回壁を壊すような音がしたが、香澄は動じることなく待ち伏せる。左と前方両方から攻められるよう壁を壊したのかもしれない、と香澄は推測した。
それから一分ほど経った頃、左の部屋から金属を蹴ったような甲高い音がした。
好機と捉えた香澄はマシンガンから手を離し、腰に吊るした手榴弾を二つ外す。それを前方と左の部屋に放り投げる。派手な爆発音が響いたあと、マシンガンを構え左の部屋に突入する。手榴弾の硝煙が立ち込める部屋をマシンガンで掃射して様子を見るも、栞の姿は無かった。
「えっ!? ということは前の部屋?」
香澄は慌てて踵を返す。
その一瞬を狙って、栞が天井の穴から香澄の背後に降りてきた。驚いた香澄が振り返る前に、栞は香澄の首に蛇のように手を回し、チョークスリーパーをかけた。香澄のゲージがみるみる減っていく。
「甘かったわね。これが実戦の差よ!」
栞が香澄の耳元で吼える。
香澄は喉を絞められ声が出ない。だが香澄もただでは転ばなかった。気が遠くなりながらもマシンガンから手を離し、太ももに納めてあったアーミーナイフを逆手にとって栞のわき腹を狙う。それに気付いた栞はチョークスリーパーを解除してナイフを手刀で叩き落し、香澄の背中を正拳で打ち抜いた。
その一撃で香澄のゲージがゼロになる。
「あなたなんかに涼君を……」
「まぁ、これが実力の差ってやつよね。この前は不意打ちだったし。それに涼は私が助けるんだから」
白いもやが栞の背後に現れる。それと同じく香澄の姿がうっすらと白い光に包まれていく。歯軋りする香澄を見届けた後、栞は白いもやへと進んでいった。
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