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桜舞う星の下で
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「看守?」
三弥が頷くと同時に那美を抱えた三弥と2人は402実験室内にあるクリアボードの前に立っていた。
「ふぇっ!」
朋が頓狂な声を上げる。
クリアボードは、まだ誰かの帰還を待つかのように光っていた。
「入れるよ。大丈夫」
「入れるって?」
「説明するより見た方が早いかも」
三弥は那美を抱えたまま体を捻じり、来訪者とは逆にクリアボードに入っていった。
それを見た2人も固唾を飲んでクリアボードに手を伸ばした。指の先が温かい。徐々に体を進め顔がクリアボードを抜けると、バスケットコートほどの殺風景な真っ白い空間に出た。天井はそれほど高くない。地球よりも少し強い重力を二人は感じた。左右に来訪者と同じ姿のアンドロイドが計9体、立哨している。隼人は一瞬構えたが動く気配はない。背後を確認するとクリアボードが計4枚壁にかかっていて、出てきたクリアボードの光は徐々に薄れていった。
「大丈夫なの?」朋が身を縮めて問う。
「うん、大丈夫、戻れるよ。それよりも2人ともあまり俺から離れないで。空気調整と宇宙線反射を兼ねているから」
「ここは、いったい……」
そう隼人が呟くと、那美がようやく意識を取り戻した。
「……み、三弥君?」
「やあ那美さん、おはよう。那美さんの謎がやっと解けますよ」
「謎……、ここは?」
「立てます?」
那美は戸惑いつつも頷くと三弥はゆっくりと足から下ろした。そして那美は自分の体が青いことに気づくと慌てて容貌を人間の姿に戻した。
それを見た隼人は腕を組み、口を開く。
「那美さん、説明してもらいましょうか」
視線を落とし、しばらく黙っていた那美は3人の目をそれぞれ一瞥して話し出す。
「私はね……、多分地球人じゃないの」
「そりゃそうでしょ!!」
朋が間髪入れずに突っ込む。
「アフガニスタンの遺跡で、ミイラ化した状態で待っていたの。多分」
「待っていた? 多分?」
「死にたいのに死にきれなかった。そしてあなたたちを、私と人間のハイブリッドを造って……」
「外に出て話しませんか? そっちのほうが分かり易いかも」
那美は怪訝な表情で三弥の顔を見上げる。
「ついてきてください。あ、あまり俺から離れないで」
そう告げた三弥はその部屋の中央を真っすぐに進み、突き当りにある黒い線が入った掌サイズの枠に手を翳した。
「こんな感じかな?」
三弥の手が先ほどの那美のような青く人差し指と中指が長い形に変形する。
「気持ち悪っ!」
隼人が思わず口にした。
三弥は、やや悲しげな表情を返した。
数舜して目の前の壁が消え、星が煌めく空が4人を見下ろしていた。植物のようなものが繁茂し、数多の摩天楼のような建物は半壊して朽ち、青と白の2つの月が優しい光を湛え地表を照らしていた。
「わぁ、綺麗~」
「ここは……、何か懐かしい感じが……」
「この星が那美さんの生まれ故郷ですよ」
「故郷?」
「さっきの来訪者をサイコメトリーして分かりました。那美さんはこの星の住人で、地球を流刑地とされていたんです。刑期は約12万年。死ねない体を与えられ、遠い地に飛ばされた。そしてそれを苦にした那美さんは自らをミイラ化して刑が終わるまで待っていたんです」
その言葉を聞いた隼人は「……なんて酷い」としか言葉が出なかった。
「そう……、そうだったのね。一度ミイラ化して記憶が無くなっていたようね」
「ただこの星には、もう知的生命体はいない。看守として作られたアンドロイドが機能しているだけで、それで刑期を終えた那美さんを連れ戻しに来たんです」
気が遠くなる話だと朋と隼人は思う。
「那美さん」
「ん?」
「この星に残りますか?」
那美はすぐに首を振った。
「無理。私しかいないなんて」
その時、風が吹き、上空から桃色の物質が小雨のように舞い降りてきた。4人は空を見上げる。監獄として機能していた建物の上部に植物のようなものが生え、それが風に乗って生命を遠くに飛ばしているかのようだった。知的生命体はいずとも、生命が続いている姿を4人実感を持って見ている。
「本物の桜じゃないけど、これもいいものですね」
「……うん。……私はあとどれぐらい生きられるのかしら。わかる?」
「ええ、分かります。でも内緒です。それに俺もそんなに長くない。だから一緒に生きていきましょう」
那美は三弥の手を握り、その景色を眺めていた。
あとがき
最近いくつかあるパソコンの整理をしてましたら、書きかけのこの小説を見つけました。
今も二つほど小説を書いているのですが、シリアス系なのでアクションの書き方を忘れないように加筆したら、まあまあ読めるものが出来ましたので、えいっとアップしました。
先ほど書きましたが、次回、次々回はシリアス系です。
転生ものをと以前書きましたが次々回の次になりそうです。
次回は社会問題になっていることで、個人的に、んん? と思っているので、調べに調べて小説にしてみました。
宜しければ、お付き合いください(*- -)(*_ _)ペコリ。
三弥が頷くと同時に那美を抱えた三弥と2人は402実験室内にあるクリアボードの前に立っていた。
「ふぇっ!」
朋が頓狂な声を上げる。
クリアボードは、まだ誰かの帰還を待つかのように光っていた。
「入れるよ。大丈夫」
「入れるって?」
「説明するより見た方が早いかも」
三弥は那美を抱えたまま体を捻じり、来訪者とは逆にクリアボードに入っていった。
それを見た2人も固唾を飲んでクリアボードに手を伸ばした。指の先が温かい。徐々に体を進め顔がクリアボードを抜けると、バスケットコートほどの殺風景な真っ白い空間に出た。天井はそれほど高くない。地球よりも少し強い重力を二人は感じた。左右に来訪者と同じ姿のアンドロイドが計9体、立哨している。隼人は一瞬構えたが動く気配はない。背後を確認するとクリアボードが計4枚壁にかかっていて、出てきたクリアボードの光は徐々に薄れていった。
「大丈夫なの?」朋が身を縮めて問う。
「うん、大丈夫、戻れるよ。それよりも2人ともあまり俺から離れないで。空気調整と宇宙線反射を兼ねているから」
「ここは、いったい……」
そう隼人が呟くと、那美がようやく意識を取り戻した。
「……み、三弥君?」
「やあ那美さん、おはよう。那美さんの謎がやっと解けますよ」
「謎……、ここは?」
「立てます?」
那美は戸惑いつつも頷くと三弥はゆっくりと足から下ろした。そして那美は自分の体が青いことに気づくと慌てて容貌を人間の姿に戻した。
それを見た隼人は腕を組み、口を開く。
「那美さん、説明してもらいましょうか」
視線を落とし、しばらく黙っていた那美は3人の目をそれぞれ一瞥して話し出す。
「私はね……、多分地球人じゃないの」
「そりゃそうでしょ!!」
朋が間髪入れずに突っ込む。
「アフガニスタンの遺跡で、ミイラ化した状態で待っていたの。多分」
「待っていた? 多分?」
「死にたいのに死にきれなかった。そしてあなたたちを、私と人間のハイブリッドを造って……」
「外に出て話しませんか? そっちのほうが分かり易いかも」
那美は怪訝な表情で三弥の顔を見上げる。
「ついてきてください。あ、あまり俺から離れないで」
そう告げた三弥はその部屋の中央を真っすぐに進み、突き当りにある黒い線が入った掌サイズの枠に手を翳した。
「こんな感じかな?」
三弥の手が先ほどの那美のような青く人差し指と中指が長い形に変形する。
「気持ち悪っ!」
隼人が思わず口にした。
三弥は、やや悲しげな表情を返した。
数舜して目の前の壁が消え、星が煌めく空が4人を見下ろしていた。植物のようなものが繁茂し、数多の摩天楼のような建物は半壊して朽ち、青と白の2つの月が優しい光を湛え地表を照らしていた。
「わぁ、綺麗~」
「ここは……、何か懐かしい感じが……」
「この星が那美さんの生まれ故郷ですよ」
「故郷?」
「さっきの来訪者をサイコメトリーして分かりました。那美さんはこの星の住人で、地球を流刑地とされていたんです。刑期は約12万年。死ねない体を与えられ、遠い地に飛ばされた。そしてそれを苦にした那美さんは自らをミイラ化して刑が終わるまで待っていたんです」
その言葉を聞いた隼人は「……なんて酷い」としか言葉が出なかった。
「そう……、そうだったのね。一度ミイラ化して記憶が無くなっていたようね」
「ただこの星には、もう知的生命体はいない。看守として作られたアンドロイドが機能しているだけで、それで刑期を終えた那美さんを連れ戻しに来たんです」
気が遠くなる話だと朋と隼人は思う。
「那美さん」
「ん?」
「この星に残りますか?」
那美はすぐに首を振った。
「無理。私しかいないなんて」
その時、風が吹き、上空から桃色の物質が小雨のように舞い降りてきた。4人は空を見上げる。監獄として機能していた建物の上部に植物のようなものが生え、それが風に乗って生命を遠くに飛ばしているかのようだった。知的生命体はいずとも、生命が続いている姿を4人実感を持って見ている。
「本物の桜じゃないけど、これもいいものですね」
「……うん。……私はあとどれぐらい生きられるのかしら。わかる?」
「ええ、分かります。でも内緒です。それに俺もそんなに長くない。だから一緒に生きていきましょう」
那美は三弥の手を握り、その景色を眺めていた。
あとがき
最近いくつかあるパソコンの整理をしてましたら、書きかけのこの小説を見つけました。
今も二つほど小説を書いているのですが、シリアス系なのでアクションの書き方を忘れないように加筆したら、まあまあ読めるものが出来ましたので、えいっとアップしました。
先ほど書きましたが、次回、次々回はシリアス系です。
転生ものをと以前書きましたが次々回の次になりそうです。
次回は社会問題になっていることで、個人的に、んん? と思っているので、調べに調べて小説にしてみました。
宜しければ、お付き合いください(*- -)(*_ _)ペコリ。
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