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来訪者
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そう叫んだ朋の声に、詰めていた関係者が完全に発光したクリアボードに集中する。やがてそのクリアボードから感じる意思は、殺意そのものだということに朋は総毛だった。明確な殺意を持った何者かが出てくる前に朋は大声で叫んだ。
「だめ!! クリアボードを壊して!!」
担当の黒田が朋の慌てぶりを見て、三弥に指示を送ろうとした時だった。すでにクリアボードから一体の人影が現れていた。一旦立ち止まり隔離した実験室から三弥たちを見ている。
二足歩行、身長2m弱、手も2本に5本の指。見た目はほぼ人間と変わらず。臙脂色のボディースーツを纏った筋肉質の身体に、緋色の髪が逆立ち、熱を放出しているのか陽炎を纏う。それはまるで怒りを体現しているかのようだった。
「SCガス散布!」
黒田が叫ぶ。
研究員のオウム返しの一声で、実験室はカーボンユニット用催涙ガスに覆われた。無数のノズルから白色のガスが噴出する。黒田や他の研究員は固唾を飲んで、ガスが晴れるのを待った。だが朋と三弥はそのガスの向こう側を見ていた。
「効いてない……」
「効いてないのか!?」
朋の呟きに黒田が問う。
「あれ生命体じゃないです。それに、この厚さ40cmのアクリルも破壊されます」
「隔壁を下ろせ!」
三弥も来訪者が持つエネルギー量を見て黒田に進言する。
「観測室のハッチもロックしたほうが良さそうですね。だけど、時間稼ぎ程度にしかならないと思います」
「くっ……! 仕方ない、全員退室!」
黒田はLOTに人差し指を当てる。
「非常事態警報レベル3発令、認証番号50078――」
非常事態宣言をアシンベル内に発令した。
「非常事態警報レベル3発令、非常事態警報レベル3発令、現在建屋にいる研究員は……」
天井から黒田が発令した非常事態警報が、女性の声で繰り返しアナウンスされる。
「羽川教授、私も行ってきます」
突然の警報に不安がよぎった隼人は、羽川を振り返りもせず出口にテレポートし扉を捩じ切った。
廊下で保安員と共に、ゲートから出てきた来訪者を待った。やがてドアが純粋な力で飴のように曲がり、来訪者が再び姿を見せた。
保安員はショックウェーブブラスターや銃器で狙い撃ちするも、彼の歩みは止まらない。
保安員の背後に隠れていた三弥と那美、黒田、朋らは保安員の邪魔にならないように観察を続けていた。来訪者は保安員らのブラスターも意に介さず、漸進を続けた。保安員たちは彼の漸進に合わせて、じりじりと後退している。
「攻撃してくる! 逃げて!!」
先を読んだ朋が指示を出す。
痺れを切らしたのか、来訪者は背後から左手を緩慢に前に出し掌を保安員に向けた。
「だめ!! クリアボードを壊して!!」
担当の黒田が朋の慌てぶりを見て、三弥に指示を送ろうとした時だった。すでにクリアボードから一体の人影が現れていた。一旦立ち止まり隔離した実験室から三弥たちを見ている。
二足歩行、身長2m弱、手も2本に5本の指。見た目はほぼ人間と変わらず。臙脂色のボディースーツを纏った筋肉質の身体に、緋色の髪が逆立ち、熱を放出しているのか陽炎を纏う。それはまるで怒りを体現しているかのようだった。
「SCガス散布!」
黒田が叫ぶ。
研究員のオウム返しの一声で、実験室はカーボンユニット用催涙ガスに覆われた。無数のノズルから白色のガスが噴出する。黒田や他の研究員は固唾を飲んで、ガスが晴れるのを待った。だが朋と三弥はそのガスの向こう側を見ていた。
「効いてない……」
「効いてないのか!?」
朋の呟きに黒田が問う。
「あれ生命体じゃないです。それに、この厚さ40cmのアクリルも破壊されます」
「隔壁を下ろせ!」
三弥も来訪者が持つエネルギー量を見て黒田に進言する。
「観測室のハッチもロックしたほうが良さそうですね。だけど、時間稼ぎ程度にしかならないと思います」
「くっ……! 仕方ない、全員退室!」
黒田はLOTに人差し指を当てる。
「非常事態警報レベル3発令、認証番号50078――」
非常事態宣言をアシンベル内に発令した。
「非常事態警報レベル3発令、非常事態警報レベル3発令、現在建屋にいる研究員は……」
天井から黒田が発令した非常事態警報が、女性の声で繰り返しアナウンスされる。
「羽川教授、私も行ってきます」
突然の警報に不安がよぎった隼人は、羽川を振り返りもせず出口にテレポートし扉を捩じ切った。
廊下で保安員と共に、ゲートから出てきた来訪者を待った。やがてドアが純粋な力で飴のように曲がり、来訪者が再び姿を見せた。
保安員はショックウェーブブラスターや銃器で狙い撃ちするも、彼の歩みは止まらない。
保安員の背後に隠れていた三弥と那美、黒田、朋らは保安員の邪魔にならないように観察を続けていた。来訪者は保安員らのブラスターも意に介さず、漸進を続けた。保安員たちは彼の漸進に合わせて、じりじりと後退している。
「攻撃してくる! 逃げて!!」
先を読んだ朋が指示を出す。
痺れを切らしたのか、来訪者は背後から左手を緩慢に前に出し掌を保安員に向けた。
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