11 / 17
能力のコツ
しおりを挟む
翌日、ある実験室で、三弥は朋と共にマットの上で目を瞑り、浅い呼吸を繰り返していた。精神を内外に向けることを繰り返し心理を徹見する。世界に対する自分の存在を色々な方角から見つめるところから始まり、無我の境地へとたどり着く。
事前に那美からプレコグニションの開発を進めるようにと言われ、朋からもそのコツを教わってはいたのだが、三弥はその先に進めてはいなかった。実際はコンマ数秒先の予知は出来るようになっていたのだが、あまりにも短い未来のため彼はその事に気づいていなかった。
一見地味なトレーニングだったが、三弥には好きなカリキュラムだった。混濁した数多のものが彼の精神の中で小さくなり、少しずつ澄んでいく感じがする。深く深く没入する。もう一段階先にいこうとしたところで、小さなチャイムが鳴った。すぐに現実に呼び戻される。
「もう2時間たったのか……」
2人とも一度深呼吸して目を開ける。
「ケーキ、食べよっか」
と笑顔で言った朋が、足がしびれてうまく立てないようだった。
鉛で囲まれた白い廊下を通って2人して自室へ帰る。すると三弥の机の上に桜の盆栽が置かれていた。時期がずれているにも関わらず、その桜は満開の花を咲かせていた。
「ははっ、一緒に見たかったのにな」
三弥のその言葉に、朋は隣で不思議そうな顔をしていた。
「ねえ、聞いた聞いた!? 明日、何か観測のサポートするんだって。何の観測かは良くわかんなかったけど」
「ああ、聞いたよ」
三弥の部屋で隼人たち三人は各々の好きな飲み物をテーブルに置いて話し合っていた。最近の三弥のお気に入りは、那美も好きなセージ茶ハチミツ入りだった。程よい温さになったセージ茶を啜る。体が自然と温まる。
「ところで三弥、ラダートレーニングが1200回を超えたんだって?」
「ああ、でも頭打ちだよ。那美さんの的確なアドバイスのおかげかな」
「ほんと、那美さんの超能力に対するアドバイスは的確だよな。俺も1400まで伸ばすことが出来たし」
「えっ! 1400!」
その反応に、隼人は得意げな顔を僅かに向ける。とりあえずプライドは保たれたといった顔だ。
「ねえねえ、テレポーテーションってどんな感じ?」
『動』の能力が使えない朋がブルーベリータルトを頬張りながら聞いてきた。
よく食べるな……。
「んー、例えが難しいな。んーとねー、紙の上に2つの点を描くだろ。そして紙を曲げてその点と点をくっつけるような感じだよ」
「ふーん」
口頭で説明されても全く分からない、といった表情で朋は言ってはならない話題をつい溢した。
「そういえば明日の観測、32号棟でやるんだって」
「観測?」隼人が眉を顰め尋ねる。
「そう。なんだかある物をプレコグニションで観察してほしいんだって」
「バカッ、朋っ!」
しまった! と言いたげな表情で朋は隼人の顔を見る。
「ということは、外に出られるってことか!? 外の様子が分かったら俺にテレパスで教えてくれ!!」
外の様子が分かると、隼人の能力を使って外に出入りする事が出来る。だから那美は三弥や隼人には内密にするように、と朋に念を押したのだった。
すかさず朋は隼人に触れ、意識を集中し記憶改竄を行った。
突然触れてきた朋に隼人は驚いたが、やがて何事もなくテレポーテーションの事についての続きを話始めた。
朋も結構えげつないな……。
三弥は半眼で朋を見ていた。
事前に那美からプレコグニションの開発を進めるようにと言われ、朋からもそのコツを教わってはいたのだが、三弥はその先に進めてはいなかった。実際はコンマ数秒先の予知は出来るようになっていたのだが、あまりにも短い未来のため彼はその事に気づいていなかった。
一見地味なトレーニングだったが、三弥には好きなカリキュラムだった。混濁した数多のものが彼の精神の中で小さくなり、少しずつ澄んでいく感じがする。深く深く没入する。もう一段階先にいこうとしたところで、小さなチャイムが鳴った。すぐに現実に呼び戻される。
「もう2時間たったのか……」
2人とも一度深呼吸して目を開ける。
「ケーキ、食べよっか」
と笑顔で言った朋が、足がしびれてうまく立てないようだった。
鉛で囲まれた白い廊下を通って2人して自室へ帰る。すると三弥の机の上に桜の盆栽が置かれていた。時期がずれているにも関わらず、その桜は満開の花を咲かせていた。
「ははっ、一緒に見たかったのにな」
三弥のその言葉に、朋は隣で不思議そうな顔をしていた。
「ねえ、聞いた聞いた!? 明日、何か観測のサポートするんだって。何の観測かは良くわかんなかったけど」
「ああ、聞いたよ」
三弥の部屋で隼人たち三人は各々の好きな飲み物をテーブルに置いて話し合っていた。最近の三弥のお気に入りは、那美も好きなセージ茶ハチミツ入りだった。程よい温さになったセージ茶を啜る。体が自然と温まる。
「ところで三弥、ラダートレーニングが1200回を超えたんだって?」
「ああ、でも頭打ちだよ。那美さんの的確なアドバイスのおかげかな」
「ほんと、那美さんの超能力に対するアドバイスは的確だよな。俺も1400まで伸ばすことが出来たし」
「えっ! 1400!」
その反応に、隼人は得意げな顔を僅かに向ける。とりあえずプライドは保たれたといった顔だ。
「ねえねえ、テレポーテーションってどんな感じ?」
『動』の能力が使えない朋がブルーベリータルトを頬張りながら聞いてきた。
よく食べるな……。
「んー、例えが難しいな。んーとねー、紙の上に2つの点を描くだろ。そして紙を曲げてその点と点をくっつけるような感じだよ」
「ふーん」
口頭で説明されても全く分からない、といった表情で朋は言ってはならない話題をつい溢した。
「そういえば明日の観測、32号棟でやるんだって」
「観測?」隼人が眉を顰め尋ねる。
「そう。なんだかある物をプレコグニションで観察してほしいんだって」
「バカッ、朋っ!」
しまった! と言いたげな表情で朋は隼人の顔を見る。
「ということは、外に出られるってことか!? 外の様子が分かったら俺にテレパスで教えてくれ!!」
外の様子が分かると、隼人の能力を使って外に出入りする事が出来る。だから那美は三弥や隼人には内密にするように、と朋に念を押したのだった。
すかさず朋は隼人に触れ、意識を集中し記憶改竄を行った。
突然触れてきた朋に隼人は驚いたが、やがて何事もなくテレポーテーションの事についての続きを話始めた。
朋も結構えげつないな……。
三弥は半眼で朋を見ていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
彼女が ガイノイドスーツ に着替えたら
ジャン・幸田
SF
少女の玲和はコンパニオンのアルバイトを依頼されたが、それは機ぐるみの内臓となって最新型汎用ガイノイド ”レイナ”になることであった!
女性型アンドロイドに変身することによって、 彼女は人間を超えた存在になった快楽を体験することになった!
(妄想で考えてみた短編です)
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
歩みだした男の娘
かきこき太郎
ライト文芸
男子大学生の君島海人は日々悩んでいた。変わりたい一心で上京してきたにもかかわらず、変わらない生活を送り続けていた。そんなある日、とある動画サイトで見た動画で彼の心に触れるものが生まれる。
それは、女装だった。男である自分が女性のふりをすることに変化ができるとかすかに希望を感じていた。
女装を続けある日、外出女装に出てみた深夜、一人の女子高生と出会う。彼女との出会いは運命なのか、まだわからないが彼女は女装をする人が大好物なのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる