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小さな社会
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「……ところで前から思っていたんですけど、なぜ俺だけ『動』と『静』の両方のトレーニングメニューを組んでいるんですか?」
朋が退室した病室で、三弥はお粥を掬っていたスプーンを止め、2杯目のセージ茶を楽しむ那美に聞いた。セージ茶のスッキリとした香りが病室に漂う。
「単純な話よ」
那美は隣のテーブルにカップを置きながら答える。
「あなたに可能性を感じているって事」
「可能性……。『動』と『静』両方の超能力を覚えて何があるんです?」
「どうなるかは、分からないわ。レパートリーが増えるだけか、いままで確認されたことがない能力が出てくるのか」
「なぜ俺なんですか? 何か検査結果が出ているんですか?」
三弥はテレパスで人の思考を読むことが出来るが、研究員の巻くLOTからの電磁波で阻害されている。
「女の感よ」
「え?」
三弥は頓狂な声を上げ眼を見開く。
「それは冗談として、科学は色々な可能性を考えて追求しなければいけないの。超能力という混沌としたものをに科学的にメスを入れて、色々なものに応用出来るようにね、ただ……」
那美はやや鋭い目つきを三弥に向けた。
「三弥君が使うブーストは、その特性から、命を削っている可能性があるわ。あまり多用しないようにね」
そう言って人差し指を立て、窘めた。
「だって、俺はまだブースト、テレキネシス、テレパスしか、出来ないですよ」
「一昨日、クレヤボヤンスとテレポーテーションも出来たじゃない」
「あー、あれは命の危機に瀕したから、なしえただけで、クレヤボヤンスが通じない壁を隔てたテレポートは、怖くて苦手なんですよ」
「そんな事言っていたら、テレポーテーションを主体としたカリキュラムが台無しじゃない。せっかく三弥君のために組んでいるんだから、テレポーテーションに集中しなさい」
……はい、と三弥は不承不承と頷いた。
翌日、三弥は3日ぶりに自室に戻ってきた。バイタルも安定し、頭痛も取れた午後である。
隼人や朋にも個室が宛がわれている。隣が朋、その奥に隼人の部屋がある。一見普通の部屋だが、3人が活動する壁の中には厚さ10cmの鉛が入っていて、クレヤボヤンス(透視)で壁の向こうを伺うことが出来ない。
プライバシーの保護といえば聞こえはいいのだが、クレヤボヤンスで壁の外の様子を見ながら、テレポーテーション出来る三弥や隼人がいるため、壁に鉛を入れざるをえなかった。また彼らの受講室や実験室、及び彼らの行動範囲には窓もなく、すべて鉛の壁で囲まれ、クレヤボヤンスを使っても外の様子を知る事が出来ない。
そんな無機質な部屋に戻ってすぐ、来客のチャイムが鳴った。LOTとリンクしているコンタクトレンズを通してウィンドウを覗くと隼人と朋だった。三弥が「どうぞ」と言うと自動的に扉が開く。
部屋に入るなり「三弥、お勤めご苦労様」と隼人がからかってきた。
隼人のその台詞に三弥が苦笑いを返す。
「それにしても、みっちゃん、ブーストを20分もぶっ通しなんて、凄いよね」
「ホント。マラソン選手も裸足で逃げ出す、呆れたスタミナだよ」
ベッドに腰掛けた三弥は、2人を向いて大きく溜息をつく。
「冷やかしに来たのかよ」
「そんな訳ないよねー、隼人君」
「そうそう。例の話をしに来たんだよ」
「まだ企んでいるのか、そんなこと」
隼人と朋は、監視カメラが作動する室内の中央、小さな白いテーブルを囲んで座った。
ポケットからトランプを取り出した隼人は、カードをテーブルの中央に置き、ジョーカーを1枚抜いてテレキネシスで軽くシャッフルし3人に配り始めた。『動』の能力が使えない朋は「おー」と相変わらず興味深そうに見ている。
配り終えると同時に朋は隼人に触れ、テレパシーで思念を送ってきた。
『で、どうやって外に出るかなんだけど……、いつ頃決行する?』
トランプでカモフラージュしながら、彼らはテレパスで意思の疎通をしていた。
テレパスが使えない隼人に朋は触れて、3人の意思疎通を可能にしていた。
『俺はいいよ。俺たち3人は外の世界では生きていけないだろ。週に一回の注射を受けないと生き続けることが出来ないんだから』
『すぐに戻って、謝ればいいんじゃないか? それに三弥が見たいって言ってた桜も見られるんだぜ! 生で』
『桜か……、死ぬ前に一度でいいから見たいと思っているけど、確かまだ時期じゃないしさ』
『ねっ、ねっ、みっちゃん。だったら、ちょっとだけここを出ようよ。こってり怒られるのを覚悟してさ』
三弥たちが置かれた環境では外の世界を知るすべが無かった。だがある日、朋が研究員の首に巻かれたLOTから情報を得る能力に目覚め、僅かながら外界の情報を手に入れていた。その能力について彼女は2人以外、口外していない。
あまりの情報量に朋は三弥と隼人に伝えるべきか迷ったが、結局テレパスで情報を共有することにした。
「って、ああっ! ババ引いちゃったじゃない隼人君!」
朋によって引かれたババを見送って、隼人はニヤリと笑う。
「クレヤボヤンス使えば楽勝だろう」と三弥は呟く。
「みっちゃんバカねー。能力使ったら面白くないでしょ。こういうゲームは正々堂々とやるのが粋なのよ」
粋っていうか当たり前なんだけどな。
『なんか思った?』
『ううん』
三弥はかぶりを振る。
『でね、いつここを出るかなんだけど……』
『わかった、わかった。ただ保安員に捕まっても抵抗しないというのなら手伝うよ』
そうテレパシーを送った三弥は、何も考えずに朋のカードを引くと、ジョーカーを引いてしまった。
「あ、しまった」
「みっちゃん優しい~、大好き!」
「……はいはい」
テレパスが使えない隼人にカードを向けた。
『まぁ、脱出するとなると、夜中がいいだろうね』
『そうよね。保安員の数も少なくなるだろうし……』
『万が一を考えて、水曜日の注射後が無難じゃないか』
『そうだね』
そう言いながら隼人は、やはりと言うか、なにくわぬ顔でババ以外のカードを三弥のカードから抜き取った。
『じゃあ来週の水曜日深夜ということで。見つかったら抵抗しない事は約束してくれよ』
三弥の持つ数字に埋もれたジョーカーの口角が、少し上がった気がした。
朋が退室した病室で、三弥はお粥を掬っていたスプーンを止め、2杯目のセージ茶を楽しむ那美に聞いた。セージ茶のスッキリとした香りが病室に漂う。
「単純な話よ」
那美は隣のテーブルにカップを置きながら答える。
「あなたに可能性を感じているって事」
「可能性……。『動』と『静』両方の超能力を覚えて何があるんです?」
「どうなるかは、分からないわ。レパートリーが増えるだけか、いままで確認されたことがない能力が出てくるのか」
「なぜ俺なんですか? 何か検査結果が出ているんですか?」
三弥はテレパスで人の思考を読むことが出来るが、研究員の巻くLOTからの電磁波で阻害されている。
「女の感よ」
「え?」
三弥は頓狂な声を上げ眼を見開く。
「それは冗談として、科学は色々な可能性を考えて追求しなければいけないの。超能力という混沌としたものをに科学的にメスを入れて、色々なものに応用出来るようにね、ただ……」
那美はやや鋭い目つきを三弥に向けた。
「三弥君が使うブーストは、その特性から、命を削っている可能性があるわ。あまり多用しないようにね」
そう言って人差し指を立て、窘めた。
「だって、俺はまだブースト、テレキネシス、テレパスしか、出来ないですよ」
「一昨日、クレヤボヤンスとテレポーテーションも出来たじゃない」
「あー、あれは命の危機に瀕したから、なしえただけで、クレヤボヤンスが通じない壁を隔てたテレポートは、怖くて苦手なんですよ」
「そんな事言っていたら、テレポーテーションを主体としたカリキュラムが台無しじゃない。せっかく三弥君のために組んでいるんだから、テレポーテーションに集中しなさい」
……はい、と三弥は不承不承と頷いた。
翌日、三弥は3日ぶりに自室に戻ってきた。バイタルも安定し、頭痛も取れた午後である。
隼人や朋にも個室が宛がわれている。隣が朋、その奥に隼人の部屋がある。一見普通の部屋だが、3人が活動する壁の中には厚さ10cmの鉛が入っていて、クレヤボヤンス(透視)で壁の向こうを伺うことが出来ない。
プライバシーの保護といえば聞こえはいいのだが、クレヤボヤンスで壁の外の様子を見ながら、テレポーテーション出来る三弥や隼人がいるため、壁に鉛を入れざるをえなかった。また彼らの受講室や実験室、及び彼らの行動範囲には窓もなく、すべて鉛の壁で囲まれ、クレヤボヤンスを使っても外の様子を知る事が出来ない。
そんな無機質な部屋に戻ってすぐ、来客のチャイムが鳴った。LOTとリンクしているコンタクトレンズを通してウィンドウを覗くと隼人と朋だった。三弥が「どうぞ」と言うと自動的に扉が開く。
部屋に入るなり「三弥、お勤めご苦労様」と隼人がからかってきた。
隼人のその台詞に三弥が苦笑いを返す。
「それにしても、みっちゃん、ブーストを20分もぶっ通しなんて、凄いよね」
「ホント。マラソン選手も裸足で逃げ出す、呆れたスタミナだよ」
ベッドに腰掛けた三弥は、2人を向いて大きく溜息をつく。
「冷やかしに来たのかよ」
「そんな訳ないよねー、隼人君」
「そうそう。例の話をしに来たんだよ」
「まだ企んでいるのか、そんなこと」
隼人と朋は、監視カメラが作動する室内の中央、小さな白いテーブルを囲んで座った。
ポケットからトランプを取り出した隼人は、カードをテーブルの中央に置き、ジョーカーを1枚抜いてテレキネシスで軽くシャッフルし3人に配り始めた。『動』の能力が使えない朋は「おー」と相変わらず興味深そうに見ている。
配り終えると同時に朋は隼人に触れ、テレパシーで思念を送ってきた。
『で、どうやって外に出るかなんだけど……、いつ頃決行する?』
トランプでカモフラージュしながら、彼らはテレパスで意思の疎通をしていた。
テレパスが使えない隼人に朋は触れて、3人の意思疎通を可能にしていた。
『俺はいいよ。俺たち3人は外の世界では生きていけないだろ。週に一回の注射を受けないと生き続けることが出来ないんだから』
『すぐに戻って、謝ればいいんじゃないか? それに三弥が見たいって言ってた桜も見られるんだぜ! 生で』
『桜か……、死ぬ前に一度でいいから見たいと思っているけど、確かまだ時期じゃないしさ』
『ねっ、ねっ、みっちゃん。だったら、ちょっとだけここを出ようよ。こってり怒られるのを覚悟してさ』
三弥たちが置かれた環境では外の世界を知るすべが無かった。だがある日、朋が研究員の首に巻かれたLOTから情報を得る能力に目覚め、僅かながら外界の情報を手に入れていた。その能力について彼女は2人以外、口外していない。
あまりの情報量に朋は三弥と隼人に伝えるべきか迷ったが、結局テレパスで情報を共有することにした。
「って、ああっ! ババ引いちゃったじゃない隼人君!」
朋によって引かれたババを見送って、隼人はニヤリと笑う。
「クレヤボヤンス使えば楽勝だろう」と三弥は呟く。
「みっちゃんバカねー。能力使ったら面白くないでしょ。こういうゲームは正々堂々とやるのが粋なのよ」
粋っていうか当たり前なんだけどな。
『なんか思った?』
『ううん』
三弥はかぶりを振る。
『でね、いつここを出るかなんだけど……』
『わかった、わかった。ただ保安員に捕まっても抵抗しないというのなら手伝うよ』
そうテレパシーを送った三弥は、何も考えずに朋のカードを引くと、ジョーカーを引いてしまった。
「あ、しまった」
「みっちゃん優しい~、大好き!」
「……はいはい」
テレパスが使えない隼人にカードを向けた。
『まぁ、脱出するとなると、夜中がいいだろうね』
『そうよね。保安員の数も少なくなるだろうし……』
『万が一を考えて、水曜日の注射後が無難じゃないか』
『そうだね』
そう言いながら隼人は、やはりと言うか、なにくわぬ顔でババ以外のカードを三弥のカードから抜き取った。
『じゃあ来週の水曜日深夜ということで。見つかったら抵抗しない事は約束してくれよ』
三弥の持つ数字に埋もれたジョーカーの口角が、少し上がった気がした。
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