87 / 114
未開の地
しおりを挟む
周囲の壁が黒紫色に変化してすぐ、今度はその先に白い光の円が見えた。その白い光の円はさっきの黒紫と同じスピードで広がり、周囲が再び白い壁に変化する。衝撃や音などは微塵も無い。ただ壁に映し出された景色だけが目まぐるしく変化し、元の白い壁に落ち着いた。
ジェリコは、相変わらず気が触れたかのように高笑いしていたが、旭はそれどころではなかった。ジェリコから手を離した山代、少し離れてエディアもその変化に戸惑い、言葉を忘れて、ただ壁を見つめていた。やがてその白い壁は映画のフェードインのように少しずつ色を見せ始める。
最初に見えたのはレーザーで焼き切ったような跡がうっすらと残る分厚いガラス。そして、その向こう側に瞠目してこっちを見る老若男女が十数名。彼らの服装は一様に質素な色合いで、ケープを羽織った修道衣のようないでたちや、目に優しい麻の色合いが巧く調和した質朴な軽装は、絵画などに見る過去のヨーロッパにタイムスリップしたかのような錯覚さえした。
今いる場所は、どうやら博物館のようだ。旭と山代はそう考えた。整然と厳重に展示された品々が見え、等間隔で並ぶ差し渡し1m程の彫刻が施された柱。高い天井。そして奥から駆けてくる5人の黒服の男たち。
それを見ていたジェリコの高笑いも止んでいる。そして旭を睨みつけ叫んだ。
「なんだここは! これは高度に発達した宇宙船じゃなかったのか? 未知の科学の世界ではないのか!?」
「……俺も知らない。まだこのラグラニアは解析の途中だったんだ」
蹴られて遠くに転がるブレードにジェリコは駆けた。そしてそれを握った瞬間、「くそっ!! おいエルザ、俺を外に出せ!!」と吼えた。
「了解しました」
エルザは冷静に答え、ブレードを握ったジェリコの姿が、目の前から画面内のガラスの奥へと移った。
ジェリコは、相変わらず気が触れたかのように高笑いしていたが、旭はそれどころではなかった。ジェリコから手を離した山代、少し離れてエディアもその変化に戸惑い、言葉を忘れて、ただ壁を見つめていた。やがてその白い壁は映画のフェードインのように少しずつ色を見せ始める。
最初に見えたのはレーザーで焼き切ったような跡がうっすらと残る分厚いガラス。そして、その向こう側に瞠目してこっちを見る老若男女が十数名。彼らの服装は一様に質素な色合いで、ケープを羽織った修道衣のようないでたちや、目に優しい麻の色合いが巧く調和した質朴な軽装は、絵画などに見る過去のヨーロッパにタイムスリップしたかのような錯覚さえした。
今いる場所は、どうやら博物館のようだ。旭と山代はそう考えた。整然と厳重に展示された品々が見え、等間隔で並ぶ差し渡し1m程の彫刻が施された柱。高い天井。そして奥から駆けてくる5人の黒服の男たち。
それを見ていたジェリコの高笑いも止んでいる。そして旭を睨みつけ叫んだ。
「なんだここは! これは高度に発達した宇宙船じゃなかったのか? 未知の科学の世界ではないのか!?」
「……俺も知らない。まだこのラグラニアは解析の途中だったんだ」
蹴られて遠くに転がるブレードにジェリコは駆けた。そしてそれを握った瞬間、「くそっ!! おいエルザ、俺を外に出せ!!」と吼えた。
「了解しました」
エルザは冷静に答え、ブレードを握ったジェリコの姿が、目の前から画面内のガラスの奥へと移った。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜
柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。
ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。
「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる