魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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約束

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「その亡くなられたロックベリーの身内の名前を知っているのですか?」
「……知っているとも。だがこれは言えない。君を信じてないわけじゃないが、頃合を見てロックベリーに言おうと思っている」
「ロックベリーは家族を探しているようでした」
「うん、それはそうだと思っている。わざわざこのアシンベルのアカデミーに入ってきたぐらいだからな」
「……分かりました、今教授が言ったことは他言しません。ただその頃合が来たら、ロックベリーに必ず伝えて下さい」
「ああ、約束する。だが、学生のうちはちゃんと避妊しろよな」
 やっぱそうくるか、と旭は心中で嘆息した。
「ところで君はLOTを持ってないようだが」
 そうだった、忘れていた。枕の上に放り出したままだった。
 旭は一瞬で頭の中が真っ白になった。LOTで清算することになっているので、ここの支払いが本人確認やら認証コードの入力などで面倒になる。
 それを考えて旭は消沈していたら、北野がテーブルの赤く丸いパネルにLOTをかざした。すぐに緑色のランプに変わり清算が完了した。
「後から来た俺に奢らせるとは、ひょっとしてなかなかの策士かな?」
「あ、いえ! そんな、奢ってもらうなんて!」
「いや、構わん」
「すいません……、ごちそうになります。今度、俺の母から昼飯をたかって下さい」
 LOTを開きながら北野は、「そんなことしたら、香苗さんからどんな技をかけられるか分からん」と苦笑した。
 母さん、職場で何をしているんだ、と旭は聞きたかったが止めておいた。それよりも彼は聞きたいことがあった。
「教授、LOTのロックかけてないんですか?」
 北野はちらりと旭の顔を見る。
「ここはセキュリティーがしっかりしているからな。それに俺は特にLOTを開きっぱなしだから邪魔なだけだ。襲われても追い返す自信もあるしな」
 確かに腕は太いと旭は感じた。体を覆うボディスーツが体格の良さを引き立てている。武道か何かを嗜んでいると言われても不思議ではない。
「本当に、ありがとうございました」と旭は頭を下げた。
 北野は鷹揚に頷き、「また悩みがあったら、遠慮なく聞きなさい」と席を立って、LOTを手首に回していた。
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