魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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告白

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 それから夏休みの間、平日は2時間ほど旭はエディアと会話を続けた。旭にとっては毎晩決まった時間に会話を続けたせいか生活のリズムが整い、夏休みにもかかわらず規則正しい日々を送っていると愚痴のようにこぼした。
 旭がエディアのその意図に気付いたのは3週間ほど経った頃だった。
「エディア、ひょっとしてリータに対抗してないか?」
 視線を外したエディアは「……いいや、別にー」と眼を泳がせながら呟く。
「いい加減分かるぞ、ここまで露骨なら」
 エディアの泳いでいた眼が動かなくなり、1回大きく嘆息をして旭を向いた。
「……あの女との思い出を、私との思い出にすり替えようと思ったのよ。同じ時間に」
「なんでそんなことするんだよ」
「だってアキラの心の中にあの女の影がちらほら見えるのよ。はっきり言って鬱陶しいの!」
「それは……、そうだよ。写真見せることが出来なかったから。それだけが心残りでよくリータのことを考えているからな」
「そうじゃない」
「はぁ? 何、そうじゃないって」
「そうじゃないって言ってんの!」
「エディアお前、俺の何――」
「好きなんでしょ! あの子に会って好きだと言いたいんでしょ!!」
 夜遅くまで起こされて訳の分からないことまで言われて、旭は煩わしさを顔に出して言った。
「お前な、リータには会えないんだぞ。俺がそんなに現実を見ないタイプに見えるのか?」
「そ、それは――」
「母さんや北野教授も調べてたらしいけど、リータの着ている服は地球上のどの地域の歴史上でも見ないデザインなんだ。完全に別世界の異文化の人なんだ」
「う……、で、でも」
「それに亜空間内かアフリカにリータがいる確証もないし、亜空間の入り口安定化までのプロセスは長いし、安定させるために核融合炉があと15基は必要だと言われているんだ」
「だっ……、だって!」
「核融合炉が15基だぞ。今回のSSBEで、ある程度結果が残せて、政府から正式に続行の認可が下りて、ようやく15基を増設する予算が下りる。15基同時に建設を始めたとしても最低10年はかかる。10年もそんな絵空事を楽しめるほど俺は悟りを開いてない! 今晩はもう終わりだ。俺はもう寝る。最近夜寝るのが遅くて、このまま習慣化しそうでいやなんだ!」
 旭はつい鬱憤をぶちまけるかのように言った。そんな旭を、エディアは獣のような目で睨んだ。旭は、たじろぎ言葉に詰まってしまう。
「だって、……だってさ! アキラってば全然こっちを向いてくれないじゃない!! 私は……、アキラのことが、こんなに好きなのに! 旭だって気付いているでしょ!」
 エディアはしばらく睨みつけるように旭を見ていた。やがて、その黒い眸に少しずつ涙が溜まり始める。そして彼女の方から通信を切ってしまった。
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