魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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夏休み

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 2ヶ月ほどの夏休みに、エディアは故郷のイギリスに帰っていた。
 ほぼ勘当同然で祖父母の家からアシンベルへと出てきたため、彼女は伯母の家で起居することになる。一人暮らしの伯母は話し相手が出来るため、歓待してくれた。
 イギリスに着いてすぐにでも旭と話したかったが、敢えて我慢した。
 気を紛らわすためにショッピングなどで時間を潰し、現地時間の夕方3時ちょうどに、僅かな緊張と共に旭へコールした。

 枕元に置いた旭のLOTが着信音を響かせた。
「だれだ? こんな時間に……」
 旭は手を伸ばしてLOTを掴み、コールの相手を見た。エディアだ。一瞬無視しようかと思ったが、後で何されるか分からないので、通話をオンにした。コンタクトレンズを通して彼女の全身が現れる。
「ヤッホー、アキラ元気ー!!」
「……」
 旭はベッドに横たわったまま、うっすらと眼を開け無言で睨んでいた。
「どうしたの? 元気ない?」
「今何時だと思っているんだ……」
「今はねー、夕方の3時よ」
「こっちは夜の11時だ! 時差を考えろ時差を!!」
「えー。この時間暇なのよー。いいから話し相手になってよ!」
 頭をわしわし掻きながら半身を起こした旭は、LOTを首に回し、しかめっ面で答える。
「……で、なんだ。何のようだ」
「特に用なんて無いんだけどさ、今日のお昼こっちに着いてすぐ、ママとよく食べに行っていたカンタベリーってお店に入って、ミートラザニア頼んだの! あそこのミートソースがまた絶品で――」
 エディアは楽しそうにありふれた日常生活の話を一方的に話しだした。
 旭は時折あくびをしていまい、その都度エディアに注意されたが、すぐに彼女は元の笑顔に戻ってイギリスでの生活を語り始める。
 30分ほどエディアの話を聞いていた。旭も観念して質問を返したりすると、彼女は目を輝かせてバカ丁寧にそれに応じた。
 そんな感じで2時間ほどが過ぎ、エディアは「じゃあそろそろ切るね! また連絡する」と言って、一方的に通話を切った。
 ようやく開放された旭はすぐに横になり、気を失うように深い闇に落ちていった。
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