魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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誤魔化せない事情

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「4ヵ月後か……」
 呟きながら席に戻ると、ジェリコが笑顔を近づけてきた。
 エディアも視線を寄越す。
「なあ、キタノ教授が直接お前になんの用事だったんだ? 何かやらかしたのか」
「人聞きの悪いこと言うなよ。まあちょっと色々あってさ……」
 有り体に話そうとも旭は思ったが、先日のN8寮での騒動のことも考えて適当にはぐらかす事にした。二人を疑っているわけじゃないが、万が一のことを考えてだった。
「北野教授に提出していた、オーレンシュタイン解釈の証明について添削してもらっててさ、教授から内容に不足があると指摘されたから、直接説明しに来てくれたんだ」
「ああ、それか。旭が休んでいた先週の木曜の授業の話な。エディアと休んでデートしていたっていう」
「いや、あれはデートじゃな……」と思わず方向違いの言葉を吐きそうになったが、ふと思ったのは、なぜジェリコがそのことを知っているのかだった。
「ジェリコ……、何でそのことを知っているんだ?」
 ジェリコは、さも当然と言った感じで答えた。
「一部の生徒は知っている。俺の情報網をなめてもらっては困るな」
「デートばれてたんだ……」と、エディアは顔を赤らめている。
「だから、デートが本来の目的じゃねーよ!」
「……じゃあ、なんで木曜日2人して休んだんだ?」
 相変わらずの笑顔でジェリコは尋ねてきた。
 N8寮でのことを話して何か差し障りがあるのだろうか。アフリカに眠る『何か』についての情報を手に入れて得をする人物っているのだろうか。何も思い浮かばない。間を引き伸ばすわけにもいかず、旭は項垂れて答えた。「デ、デートだ……」言った後で、旭は大きく嘆息した。
 ジェリコは苦笑いし、肩を小さく竦めた。
「いいよな。成績がいいと、平日に女の子とデート出来て」
「ジェリコ、お前、俺をそんな目で見ていたのか!」
「まあ、少しな」とその眸に宿る水色より冷ややかに旭を見ていた。
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