魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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ある日の昼食

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「そういえばアキラ、クラブ入んないの?」
「クラブ?」
 旭の両隣には、エディアとジェリコが座って丸い三人席で昼食をとっている。ジェリコは御飯に納豆、味噌汁とスタンダードな和食だ。いかにもアメリカ人のルックスにそのギャップが旭にとっては面白い。
「ジェリコ、和食が好きなのか?」
「ああ、和食は最高だな。アメリカでもよく食っていた。ラーメンとか。それよりも何かクラブに入っていたほうが後々いいぞ、アキラ」
「ジェリコはどこかに所属しているのか?」
「ちょっと、私はアキラに聞いたんだけど……」
 納豆御飯を箸で器用に掻き込んだジェリコは、意味深な視線を寄越しながら答える。
「おへは、いほい……」
「飲み込んでから言え、待つから!」
 しっかり咀嚼してジェリコはもう一度言う。
「俺は色々と忙しいからなー。成績もそこまで良くないし」
 ある程度答えは分かっていたが、そっか、と言って、旭は残りのコーヒーを飲み込んだ。
「ねえ、私のことは無視?」
 フォークを拳で握ったエディアは半眼で旭を睨む。今にもそのフォークを旭の手に振り下ろさんとしているように、彼は感じた。
 やっぱり聞かなくてはいけないのか。
「で、エディアは何やってるの?」
「何その態度。まったくムカつくわね! 放課後、クラブに付き合ってもらうわよ!」
「おい、人の都合も考えないで勝手に決めるなよ!」
「どうせ家で勉強ばっかりやってるんでしょ! それとも、か、彼女とか……、いるわけ?」
「……いねーよ、彼女なんか」
 アシンベルアカデミーに入学するために、旭は恋愛というものを犠牲にしてきた。そのことを痛感する返事だった。
 エディアは鼻を鳴らし、「じゃあ決まりね!」と、再びミートスパゲティーをフォークにくるくる巻き取り始めた。
「じゃあ、が接続詞の意味を成してないぞ……」
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