16 / 114
異変
しおりを挟む
登校中や授業中、香苗の言っていた言葉を頭の中で繰り返していた。
『人に定められた寿命はね、神様から与えられたものだから、人間がいじってはいけないと言っていたの。人間が人間の寿命をコントロールするなんてだめだって』
――確かに間違ってはいない気がする。でも正解でもない気もする。じゃあなぜ神様は僕たちを生んだのだろう。それか神様が僕たちを生んだということ自体が間違っているのかもしれない。正解はどこにあるんだろう。
旭は答えの無い問題を解くため頭の中の似たような所をぐるぐる回って、家に帰る頃には頭が疲れていた。
途中気を紛らわすため、旭はポケットに入れた2枚のリータの写真を見た。背景が薄暗くて、リータだけが綺麗に浮き上がっている。
これを見せたらリータは喜びそうだ。
リータの笑顔を想像しながら、街路樹の桜の蕾がピンク色に染まる中を、旭はゆっくりと帰った。
旭は暗闇の海で溺れ、慌てて半身を起こした。すっかり寝てしまっていた。
昼間ずっと考え事をして疲れていたのか、自分のベッドの上で少し横になって、そのまま寝てしまっていた。
慌ててユビキタスコンピューターに灯りをつけるよう指示すると、計画停電の中、室内が仄かに明るくなる。LOTを首に巻き、リータが写っている写真2枚を手に取って、時間を確認して部屋を飛び出す。23時45分。
まだリータが現れて30分ちょっとだ。でも待っているかもしれない。
薄暗い階段を駆け下り、踊り場に出た。するといつもの場所にリータは座っている。旭はホッとして、乱れた髪を軽く整えながらリータの視界に入った。
「ごめん! リータ」
「あっ! よかった……。こんばんは、アキラ」
「リータ、ほら写真できたよ!」
「わあ! やっ……」
ぱあっと歓喜のオーラを発し、白い歯を見せたリータが立ち上がって旭に近寄った瞬間だった。リータの姿が急に薄くなって、そのまま薄闇に消えてしまった。
「リータ?」
時間はまだ23時50分を回ったぐらいだった。リータが射影範囲の外に出たのかと旭は思った。少し下がって様子を見るもリータは出てこない。
「リータ……、リータ!?」
その日はなぜか2時まで停電が続いたが、リータは現れない。写真を片手に廊下に座って、停電が明けるまで膝を抱えて待った。一瞬もう二度と会えないイメージが旭の頭をよぎったが、頭を振ってそれをはじき飛ばした。
何か原因がある……。何かあったんだ。
ずっと待っていた旭は結局そのまま廊下で寝てしまい、起きたらシーリングライトも消え曙光がさしていた。
いつもなら香苗が帰ってきてる時間なのに、キッチンにもいない。憔悴した表情の香苗が戻ってきたのはお昼過ぎだった。
その日以降、定期停電はなくなった。そして、リータが姿を現すこともなくなった。
『人に定められた寿命はね、神様から与えられたものだから、人間がいじってはいけないと言っていたの。人間が人間の寿命をコントロールするなんてだめだって』
――確かに間違ってはいない気がする。でも正解でもない気もする。じゃあなぜ神様は僕たちを生んだのだろう。それか神様が僕たちを生んだということ自体が間違っているのかもしれない。正解はどこにあるんだろう。
旭は答えの無い問題を解くため頭の中の似たような所をぐるぐる回って、家に帰る頃には頭が疲れていた。
途中気を紛らわすため、旭はポケットに入れた2枚のリータの写真を見た。背景が薄暗くて、リータだけが綺麗に浮き上がっている。
これを見せたらリータは喜びそうだ。
リータの笑顔を想像しながら、街路樹の桜の蕾がピンク色に染まる中を、旭はゆっくりと帰った。
旭は暗闇の海で溺れ、慌てて半身を起こした。すっかり寝てしまっていた。
昼間ずっと考え事をして疲れていたのか、自分のベッドの上で少し横になって、そのまま寝てしまっていた。
慌ててユビキタスコンピューターに灯りをつけるよう指示すると、計画停電の中、室内が仄かに明るくなる。LOTを首に巻き、リータが写っている写真2枚を手に取って、時間を確認して部屋を飛び出す。23時45分。
まだリータが現れて30分ちょっとだ。でも待っているかもしれない。
薄暗い階段を駆け下り、踊り場に出た。するといつもの場所にリータは座っている。旭はホッとして、乱れた髪を軽く整えながらリータの視界に入った。
「ごめん! リータ」
「あっ! よかった……。こんばんは、アキラ」
「リータ、ほら写真できたよ!」
「わあ! やっ……」
ぱあっと歓喜のオーラを発し、白い歯を見せたリータが立ち上がって旭に近寄った瞬間だった。リータの姿が急に薄くなって、そのまま薄闇に消えてしまった。
「リータ?」
時間はまだ23時50分を回ったぐらいだった。リータが射影範囲の外に出たのかと旭は思った。少し下がって様子を見るもリータは出てこない。
「リータ……、リータ!?」
その日はなぜか2時まで停電が続いたが、リータは現れない。写真を片手に廊下に座って、停電が明けるまで膝を抱えて待った。一瞬もう二度と会えないイメージが旭の頭をよぎったが、頭を振ってそれをはじき飛ばした。
何か原因がある……。何かあったんだ。
ずっと待っていた旭は結局そのまま廊下で寝てしまい、起きたらシーリングライトも消え曙光がさしていた。
いつもなら香苗が帰ってきてる時間なのに、キッチンにもいない。憔悴した表情の香苗が戻ってきたのはお昼過ぎだった。
その日以降、定期停電はなくなった。そして、リータが姿を現すこともなくなった。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヒトの世界にて
ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」
西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。
その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。
そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており……
SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。
ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。
どうぞお楽しみ下さい。
宇宙戦艦三笠
武者走走九郎or大橋むつお
SF
ブンケン(横須賀文化研究部)は廃部と決定され、部室を軽音に明け渡すことになった。
黎明の横須賀港には静かに記念艦三笠が鎮座している。
奇跡の三毛猫が現れ、ブンケンと三笠の物語が始まろうとしている。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる