上 下
2 / 3
プロローグ

2話 世界に降り立つ

しおりを挟む
「熱い…熱い…‼︎熱い…!やめろーっ‼︎やめてくれ‼︎顔が、顔が溶ける…‼︎」
 俺は頭に残る感触に絶叫していた。
「溶けてないですよ。今は。顔を触ってみなさい」
 突然耳に入ってきたその声に我に帰った俺は、もう一度改めて顔を触ってみた。
「あ、あれ?」
 硫酸だか塩酸(化学はからっきしできないのでよく分からない)だかをぶっかけられて、俺の顔はボロボロになった筈だ。
「貴方は死んだんですよ」
「…‼︎…じゃ、じゃあ誰なんだアンタは…そもそもここはどこなんだ‼︎」
 周りのとにかく真っ白な景色をキョロキョロと見渡しながら、俺は声の限り叫んだ。
「ここは『裁判所』、私は『裁判官』です…まぁ生前の業をここで判断して、貴方の魂をもう一度どこかに産み落とさせるか、はたまたそのまま落とすか。もしくは『ここよりも真っ白な世界に』ずっと漂わせておくかを判断する場所です。…因みに、貴方の死因は」
「…聞きたかねぇよ。そんなもん」
 死因は多分窒息死だ。硫酸を流し込まれてドロドロに溶けた俺の口内の組織が喉に詰まったんだ。…思い出すだけで地獄にいるみたいな気分になる。
「…それで…その、俺はこれから一体どうなるんだ」
 何故か、裁判官が口をつぐんだ。
「おい…大丈夫か?」
 すると、また声が頭の中に響いてきた。
「貴方にはチャンスを与えましょう。見たところ、貴方は今まで『熱くなった』ことがないようですしね。貴方がこれから行くのは『熱くなれる世界』…」
「…?何を…」
「さよなら。三島ハジメ」
 瞬間、下の真っ白い地面が、ハンマーで壊されたガラス板のように割れ、その隙間から何も見えない暗黒の空間が姿を現した。
「…なんなんだよ!これはよォォオ‼︎」
 ハジメはそう叫びながら、黒い空間に落ちて行った。

「…い‼︎…お…い‼︎…『お兄』‼︎」
「ウワァァアッ‼︎」
「なーにやってんのお兄…もう学校行く時間でしょ」
「あ、あぁ」
 何か、特別に長い夢を見ていた気がする。俺、『山岸ワタル』は妹、『山岸ユウ』に起こしてくれた事を感謝しながら起床した。
 俺は…『学校』の二年生だ。だから、これからいつも通り朝食を済ましてスマホを触ってから登校するはずだ。
 なのになんだ…この違和感は?

 朝食を食べ終わり、その後自室に戻った俺は、あくびをしつつパジャマのポケットにあるスマホを取り出した。
「あー…ねむ」
 結局違和感の正体は食パンをかじっている最中もわからなかったし…まぁ置いておくか。俺は適当にそう考えると、ゲームアプリを開いた。
「ダメです」
「は?」
 突然の声に、俺はスマホから目線を上げた。そこには、際どい衣装を着た『天使』が立っていた。

 チャイナドレスのような横に深い切れ目が入った長いスカートに、胸がX字に露出している(ギリギリ見えない)際どいがゆったりとした上着に、風神雷神のあの羽衣のような布が合わさっている。そして、大胆に露出している背面からは神々しい真っ白な翼が生えており、頭頂部には輪っかが浮かび、光っている。
 そして、何より目を引くのが髪だ。肩まで伸ばされた金色の髪が艶やかな光をあちらこちらに反射している。なんというか…エロいを通り越して…神々しい…!
「髪フェチですか」
「ち、ちがわい!てか誰なんだアンタ‼︎」
「私の名前はキューベラ」
 それから、沈黙が俺の部屋を支配した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...