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第一章この章の後半を読んではいけない。

第10話 第1回ツンデレ対戦!?2

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 誰だろう?
 スタスタとこちらの方に歩いて来る。
 スカートにヒラヒラのレース、上半身もそれに合わすようにした白い服に黄色と緑のグラデーションの髪。
 どれも過去に見た事のある物だった。

 「ココア様! 何故この様な場所に」

 ココア・・・・・・ぷち子さん!?
 神崎さんが彼女の登場に驚いてその名前を発したけれど僕は違う意味で驚いていた。

 冷静さを醸し出しているが明らかに焦って僕の肩をがっちり掴んでいた二人の手が離れた。
 まさかココア・カプチーノが領主をやっているなんて。
 そう言えば昔に彼女が着てた服と全く一緒だった。
 僕は過去に彼女とゲームで知り合っていた。
 友達と言うか何て言うかとにかくギルドの癒しキャラだったな。
 いっつも何か言ったら「ナノォ」と言っておっとりしてた人だ。
 彼女が所属しているギルドはナイトフラッグと言いこのギルドもまた、懐かしい。

「領主様が言うならまあ」

 僕は神崎さんが喧嘩したら相手を殺しちゃって後々困るだろうから止めに来たのに。

「とりあえず一件落着って事で良いんですよね?」

 この世界でも麗華ってそもそもバレたくなければリアルとゲームの名前一緒にするなよ。
 そうっ込みたくなる。
 今の領主様が神崎さんの名前を言った瞬間に思ってしまった。

「そう言う事になりますね」

 僕は神崎さん達の方へ歩いて行く。
 その時、僕は地面のタイルの段差に気づかず足を引っ掛けてしまった。

 バンッ! 
 
「神崎さん危ない!」
「ちょっと! 何してんの!」

 そして僕は神崎さんにぶつかった。しかも、覆い被さる様にして二人共コケた。
 神崎さんが下になって頭をぶつけ無い為に僕が下に入り込み全身でキャッチする様にコケる。
 この作戦はキャッチする所までは成功していた。

 しかし。

 「「チュッ」」

 キスの音がした。
 彼女の唇は柔らかく少しだけシットリとしていてヒンヤリともしていた。
 覆いかぶさる彼女の体重が心地よく彼女の丁度いいサイズで柔らかさも絶妙な胸も同じく心地よかった。しかし、この体制でのキスは僕にとって死の宣告だ。

「女の子同士でキスかよやべぇ」
「でも女装がどうのって」
「でも良いもん見たよな」

 遠くで何か言っているが今自分に起きている状況に意識が集中し過ぎて全然聞こえない。
 顔と顔が接する距離で目と目が合う。
 言葉にならない程の怒り、唇から彼女が震えているのが分かった。
 数秒間空気が膠着した後に無言で神崎さんはすっと立ち上がる。

 彼女は赤面して震えていた。

 視界が開けたから後ろを寝たまま見たが悪そうな兄ちゃんらはもういなかった。
 僕も立ち上がりながら周りを確認するとまだ野次馬達がいる。
 その中にナフィも居た。
 ナフィの目が白い。
 そしてじっと僕を見ている。
 僕が焦って真ん中まで行くから付いてきたのだろうか。
 四面楚歌とはこういう事かな?

 逃げ場が無い。

 残っていた野次馬達の目も厳しい。
 まるでこの状況を晒す為に出て来たみたいに見えてるのだろう。
 何せいきなりキスしたんだから。

「本当にごめんなさい! でもわざとじゃないんです」
「良いのよ分かってるから」

 あれ? 許してくれるの?

「そう、許してくれるの?」
「あなたを今ここで殺すって事の話よ!!」

 ですよねぇ!!
 やっぱり許してくれませんでした。

「中途半端に出しゃばって余計な事して! なおかつ無理矢理私にき、き、キスなんて!」
「いや、そんな事」
「裂いてやる裂いてやる裂いてやるぅ!!」
「落ち着いてよ神崎さんあれは不可抗力って奴で」

 そうだ、こちらからすれば彼女を救おうって気すら含んでの行動でもある。
 しかも、あの悪そうな兄ちゃんに蹴られたからこうなった訳じゃないか。

「不可抗力・・・・・・嘘よ殺すわ」
「ストーップ、そこまでです」

 領主様がこのピンチに終止符を打ってくれた。

「そんなに殺したいなら今は我慢して闘技場へ行けば良いわ」

 終わってなかった。

「そうですね、それなら殺人にはならず正当に殺せます」
「それでは皆さん、領主が主催します神崎麗華とあなた名前なんて言うの?」

 野次馬達に大声で領主のぷち子さんは声を掛ける中、小声で僕に名前を聞いた。

「葛城桃李です」

 答えざるを得ない状況だ。
 ここで言わなきゃ今に殺される。しかし、名前を答えた瞬間も終わりの始まりみたいなもんだ。

「葛城桃李の決闘を行います場所は中央闘技場に明日の午後3時です!」

 決定事項、何をしても抗えない。
 領主の決闘宣言は必ず闘技場へ行かなければならない。
 更に不幸な事にもし時間内に闘技場へ来なかったら強制的にワープさせられ戦闘がスタートする。
 最悪だ。
 明日が僕の運命の日になる。

「はぁ、」

 肩を落としてどうせ死ぬんだと覚悟した。
 相手は神崎さん容赦無く裂かれるだろうわ、

「ガッカリしないでトウリくん死なない程度には回復させれるから」

 領主様、なんて心強いお言葉だろう。
 死ぬ程の痛みを味わっても死ねないんですね。
 その死ぬ程の恐怖で僕の内蔵か何かが下にストンと落ちて行く気持ちの悪い感覚になった。

 そして僕はうずくまった。

 
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