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「K氏のスクラップ記事」及び「調査概要書」
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―K氏のスクラップブックより―
○「小頭の少年、驚くべき能力」1972年5月10日『市報 ぬかやま通信』
N市糠山町に住む少年、万田三治(まんだ さんじ)さんは、先天性疾患により発達障害を持っています。
しかし、驚くべき事に彼は超能力とも言える力を見せてくれます。
彼は、野球中継やスポーツ観戦をしていて、どちらのチームが勝利するかピタリと当ててしまうのです。
また、地方選挙候補者の顔写真を見せ、当選予想をするのもお手の物。
その恐るべき能力を使い、客にトランプを引かせて当てるという手品ショーを地元近辺で開催しています。
お父さんの一治(かずはる)さん
『医師によれば、脳のメカニズムが通常と異なり、人より段違いに予想や予測能力が優れているのではないか…という話でした。三治は言葉もうまく話せません。ですが、こうして能力を使い、皆様を喜ばせることに三治は生きがいを感じているようなのです。』
一治さんは、三治さんとの二人三脚の手品ショーをさらに広めて行きたいとお話しくださいました。
○「I縦貫自動車道開通」1973年3月1日『西日新聞』
3月1日、近畿地方から西日本を結ぶ主要交通網として「I縦貫自動車道」が開通し、西日本道路公団主催の開通式が開催された。
「I縦貫自動車道」の総延長は500㎞以上に及び、山間部を縫い、市街地を結ぶように道路が整備されている。
西日本の高速道路網の「屋台骨」として、物流の発展や経済効果が期待されている。
一部、山間部の町村を中心に山林の乱開発や獣道への干渉が懸念されたが、各所との調整および自治体との協議は円滑に終了したと、国と公団は述べている。
○「I縦貫道にて親子事故死」1974年8月10日『西日新聞』
8月9日未明、〇〇県M市のI縦貫自動車道上り線において、軽四乗用車が単独でスリップ事故を起こし、乗員全員が死亡した。
乗員はN市糠山在住の万田一治(34歳)さん、同乗していた万田三治さん(13歳)の2名であったが、いずれも全身を強く打ち死亡した。
警察は事故の原因をしらべている。
ー調査概要書ー
対象:通称『Mパーキングの幽霊』
概要:対象は小柄かつ小頭の少年姿をした人型実体である。
対象はMパーキングエリアに出没し、通行車両の運転手に、自身がN市へ帰宅するため乗せるよう依頼する。
Mパーキングエリアから進行すると、I縦貫道自動車道の中でも交通死亡事故が頻発する〇〇キロポスト付近の急カーブ「通称:魔のカーブ」となっている。
対象の依頼を断り、そのまま対象を車に載せなかったものは、目撃証言で確認される範囲だけでも全員「魔のカーブ」にて事故死している。
以下は、対象と接触し、唯一生存が確認された調査協力者であるオカルト作家K氏の証言と報告に基づくものである。
対象は乗せた運転手に対し穏やかに接するが、魔のカーブに接近したところ態度を変える。
激しく憤怒した表情となり、強い口調で運転手に注意喚起する。
減速すること。動物が飛び出してくることを指摘するのである。
同所はカーブ手前の直線において、上り坂が下り坂に見えるよう錯覚する「ゆうれい坂」現象が起こりやすい道路形状であり、無意識に高速度となる可能性も高い。
さらに高速度を保ったまま「魔のカーブ」に進入するため危険個所であり、対象による注意喚起は適切なものである。
「魔のカーブ」を通過する際、調査協力者はスリップし急停止したところ、対象は忽然と消失していたとのことであった。
考察:人型実体は1974年にI縦貫自動車道にて事故死した万田三治の異体と見られる。
同人の姿形が当時の市報に掲載された写真と同一のものであり、さらに同人と父は事故死前、H県南部の老人会を回り、手品ショーを行っていたとする証言が残っている。
万田三治は頭部に先天性疾患があり、さらに発達障害を併発、言語能力は遅滞が見られたが「予知能力」と評される能力を持っていたとされる。
1973年の市報によれば、スポーツの試合結果や、地方選挙の結果を的中させることができ、その能力を使って手品ショーをしていたと報じられている。
対象が万田三治の姿だけではなく、記憶や能力を持っているのであれば、これより事故死する人物を特定し、忠告することは不可能ではない。
場所と万田の風体から、事実を直接告げるのでは信じてもらえず、車に載せてほしいと依頼するやり方になっていったのではないかと本職は推測する。
生前、対象の父は「能力を使って人を喜ばせることが生きがい」と市報に語っていることから、その行動原理や動機が異体の行動として発現している可能性は高い。
なお、Mパーキングエリアにて現れるのは、「魔のカーブ」を注意喚起するのが目的と見られ、他の場所では万田三治の目撃情報はない。
さらに、Mパーキングに立ち寄らなかった者、事故車両の随行者でMパーキングに立ち寄ったが、一切万田三治よう実体の目撃がなかったものも存在し、必ずしも「魔のカーブ」の死亡事故全てに万田三治よう実体が関係しているものではない。
よって、「魔のカーブ」において続発的に発生する死亡事故の原因は「Mパーキングの幽霊」こと万田三治によるものとは断定できないものであった。
危険性:注意を要する。万田の風体から、仮に乗車させてもパニックになり事故を惹起する可能性がある。
万田の危険性については、生存者が1例しか確認できないため未だ判然としない。
措置検討:対象の無力化、および確保については留意されたし。
理由:1有用性が認められる。
対象の出現を管理することにより、死亡事故予知が可能となる。K氏のように、事故死する予定の者が生存する可能性もある。可能な範囲で警察と協議をすべきである。
2危険性について、事例が少なく未知数であるため。現在の結論と推察は、全てK氏の体験した1例に基づくものである。未だ不明な点が多く、無力化した際のデメリットも不明である。
周知について:対象について事実を広めるのはいたずらに混乱を招き、対象自身が騒がれるのを避け、消失するおそれもある。
土着民話のカバーストーリーなどを漸次広め、「福の神」的扱いをするのが適当ではないかと思われる。
作成及び調査者:中国管区調査局 調査主任 酒頭悦郎
○「小頭の少年、驚くべき能力」1972年5月10日『市報 ぬかやま通信』
N市糠山町に住む少年、万田三治(まんだ さんじ)さんは、先天性疾患により発達障害を持っています。
しかし、驚くべき事に彼は超能力とも言える力を見せてくれます。
彼は、野球中継やスポーツ観戦をしていて、どちらのチームが勝利するかピタリと当ててしまうのです。
また、地方選挙候補者の顔写真を見せ、当選予想をするのもお手の物。
その恐るべき能力を使い、客にトランプを引かせて当てるという手品ショーを地元近辺で開催しています。
お父さんの一治(かずはる)さん
『医師によれば、脳のメカニズムが通常と異なり、人より段違いに予想や予測能力が優れているのではないか…という話でした。三治は言葉もうまく話せません。ですが、こうして能力を使い、皆様を喜ばせることに三治は生きがいを感じているようなのです。』
一治さんは、三治さんとの二人三脚の手品ショーをさらに広めて行きたいとお話しくださいました。
○「I縦貫自動車道開通」1973年3月1日『西日新聞』
3月1日、近畿地方から西日本を結ぶ主要交通網として「I縦貫自動車道」が開通し、西日本道路公団主催の開通式が開催された。
「I縦貫自動車道」の総延長は500㎞以上に及び、山間部を縫い、市街地を結ぶように道路が整備されている。
西日本の高速道路網の「屋台骨」として、物流の発展や経済効果が期待されている。
一部、山間部の町村を中心に山林の乱開発や獣道への干渉が懸念されたが、各所との調整および自治体との協議は円滑に終了したと、国と公団は述べている。
○「I縦貫道にて親子事故死」1974年8月10日『西日新聞』
8月9日未明、〇〇県M市のI縦貫自動車道上り線において、軽四乗用車が単独でスリップ事故を起こし、乗員全員が死亡した。
乗員はN市糠山在住の万田一治(34歳)さん、同乗していた万田三治さん(13歳)の2名であったが、いずれも全身を強く打ち死亡した。
警察は事故の原因をしらべている。
ー調査概要書ー
対象:通称『Mパーキングの幽霊』
概要:対象は小柄かつ小頭の少年姿をした人型実体である。
対象はMパーキングエリアに出没し、通行車両の運転手に、自身がN市へ帰宅するため乗せるよう依頼する。
Mパーキングエリアから進行すると、I縦貫道自動車道の中でも交通死亡事故が頻発する〇〇キロポスト付近の急カーブ「通称:魔のカーブ」となっている。
対象の依頼を断り、そのまま対象を車に載せなかったものは、目撃証言で確認される範囲だけでも全員「魔のカーブ」にて事故死している。
以下は、対象と接触し、唯一生存が確認された調査協力者であるオカルト作家K氏の証言と報告に基づくものである。
対象は乗せた運転手に対し穏やかに接するが、魔のカーブに接近したところ態度を変える。
激しく憤怒した表情となり、強い口調で運転手に注意喚起する。
減速すること。動物が飛び出してくることを指摘するのである。
同所はカーブ手前の直線において、上り坂が下り坂に見えるよう錯覚する「ゆうれい坂」現象が起こりやすい道路形状であり、無意識に高速度となる可能性も高い。
さらに高速度を保ったまま「魔のカーブ」に進入するため危険個所であり、対象による注意喚起は適切なものである。
「魔のカーブ」を通過する際、調査協力者はスリップし急停止したところ、対象は忽然と消失していたとのことであった。
考察:人型実体は1974年にI縦貫自動車道にて事故死した万田三治の異体と見られる。
同人の姿形が当時の市報に掲載された写真と同一のものであり、さらに同人と父は事故死前、H県南部の老人会を回り、手品ショーを行っていたとする証言が残っている。
万田三治は頭部に先天性疾患があり、さらに発達障害を併発、言語能力は遅滞が見られたが「予知能力」と評される能力を持っていたとされる。
1973年の市報によれば、スポーツの試合結果や、地方選挙の結果を的中させることができ、その能力を使って手品ショーをしていたと報じられている。
対象が万田三治の姿だけではなく、記憶や能力を持っているのであれば、これより事故死する人物を特定し、忠告することは不可能ではない。
場所と万田の風体から、事実を直接告げるのでは信じてもらえず、車に載せてほしいと依頼するやり方になっていったのではないかと本職は推測する。
生前、対象の父は「能力を使って人を喜ばせることが生きがい」と市報に語っていることから、その行動原理や動機が異体の行動として発現している可能性は高い。
なお、Mパーキングエリアにて現れるのは、「魔のカーブ」を注意喚起するのが目的と見られ、他の場所では万田三治の目撃情報はない。
さらに、Mパーキングに立ち寄らなかった者、事故車両の随行者でMパーキングに立ち寄ったが、一切万田三治よう実体の目撃がなかったものも存在し、必ずしも「魔のカーブ」の死亡事故全てに万田三治よう実体が関係しているものではない。
よって、「魔のカーブ」において続発的に発生する死亡事故の原因は「Mパーキングの幽霊」こと万田三治によるものとは断定できないものであった。
危険性:注意を要する。万田の風体から、仮に乗車させてもパニックになり事故を惹起する可能性がある。
万田の危険性については、生存者が1例しか確認できないため未だ判然としない。
措置検討:対象の無力化、および確保については留意されたし。
理由:1有用性が認められる。
対象の出現を管理することにより、死亡事故予知が可能となる。K氏のように、事故死する予定の者が生存する可能性もある。可能な範囲で警察と協議をすべきである。
2危険性について、事例が少なく未知数であるため。現在の結論と推察は、全てK氏の体験した1例に基づくものである。未だ不明な点が多く、無力化した際のデメリットも不明である。
周知について:対象について事実を広めるのはいたずらに混乱を招き、対象自身が騒がれるのを避け、消失するおそれもある。
土着民話のカバーストーリーなどを漸次広め、「福の神」的扱いをするのが適当ではないかと思われる。
作成及び調査者:中国管区調査局 調査主任 酒頭悦郎
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