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34.(レイモンドside)

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訓練場までの道のり。
いつもより遠く感じるのは、沈黙のせいだろうか。


1人自室で耐えていると、急に大き過ぎる魔力を感じた。
こんな魔力を発するのは1人しかいない。
熱い身体をなんとか制御し、魔力を感じる方……書庫へと急いだ。
勢いよく扉を開くと、ナオが何食わぬ顔をして魔術を発動しかけている。
待て、その魔法陣は……!
それに、この香り!

「おい!」

焦りと発情で感情のコントロールが出来ない。

「今すぐ止めろ!!」

体を硬直させたナオは、絶望した様な顔をしていた。


……あぁ、やってしまった。


直ぐにでも謝りたい私の思いとは裏腹に、その後より一層発情が強くなった。
理由は分かっている。
ナオの魔力と香りが充満した書庫に入ったからだ。
謝りたくても、発情が治まるまでナオに近づけない。
自室に戻った私は一人耐えるしかなかった。




「────はぁ」
ため息を漏らすと、横を歩くナオの肩がビクッと揺れる。
……やはり、相当怖がらせてしまった様だ。

発情が治まり、やっと会えたナオは私の顔を見た瞬間に恐怖の色を浮かべた。
予想を上回る反応に、何と謝れば良いのか余計に分からなくなってしまった。

なぜ、あの時もっと上手くやれなかったのだろうか……。









団員に終業を知らせて大分時間が経つが、ナオが執務室にやって来ない。
片付けが長引くにしてもかかり過ぎている。
何かあったのだろうか。



魔術師のホールへ様子を見に行くと、1人で訓練をするナオの姿が見えた。
何もなくて良かったと安心すると同時に、疑問が湧く。
どうして、執務室に来ないのだろうか。
真面目なナオの事だから、単純に残って訓練をしたかったのかもしれない。
だが……。

……やはり私のことが嫌いになった、のか?

考えた末、行きついた仮説に項垂れる。
その後、ナオに声をかけるのも躊躇われ、悶々としたままナオの様子を暫く見ていた。
しかし、一向に終わる気配がない。
そろそろ帰らないと夕食の時間になってしまうのだが……。
流石に声をかけるか。

「ナオ」

ぴたりとナオの動きが止まった。
少しの間があって、ナオがこちらに顔を向ける。
その表情を見て私は確信した。
先程の仮説は正しいのだと。









屋敷に着くと、ジョンとあいつが言い争っていた。

「レイモンド様ぁ~!手紙を出したのに屋敷に着いてもいらっしゃらないんだもの!私びっくりしちゃったわぁ」

あぁ、そうか今日だったか。
忘れていたと言ったら、また癇癪を起こしそうだな。

「すまない、仕事が長引いた」
「まぁ、そうでしたのぉ。レイモンド様は騎士団長様ですものぉ、お忙しいわよねぇ」

納得してくれた様で良かった。
しかし、腕に纏わり付いてくるのは鬱陶しい。
だが、こいつの機嫌を損ねるとろくなことがないからな。

……ん?セレーナがナオの事を睨んでいる?
あぁ、知らない獣人がいるから警戒しているのか。

「セレーナ、彼はナオ。大切な……」

……運命の番。

しかし、ナオは知らない方が良いだろう。
ナオは私を運命の番として認識していない。
それに、私は嫌われてしまったから。

「……お客様だ。ナオ、彼女はセレーナ……」
「そんなことより、私2人で話したいことが沢山あるのよ!早く行きましょ!」
ナオにセレーナのことを紹介しようとした所で遮られてしまった。

「あ、ああ」

返事をしながら横目でナオを見ると、無表情で固まってしまっている。
何か声をかけようかと思ったが、今はそっとしておいた方が良いだろうと思い、セレーナに促されるままロビーを後にした。



部屋に入るなり、セレーナは自身の自慢話ばかりしてくる。
どこの誰にアプローチされただの、この前のパーティでは皆が自分に釘付けだっただの。

正直、どうでもいい。
こんな話に付き合うくらいなら、今はナオの事を考えたい。

何と謝れば、許してくれるだろうか。
どうしたら、またあの笑顔を自分に向けてくれるのだろうか。

そんな事を考えながら、私は適当に相槌を打っていた。

「ねぇ、レイモンド様!ちゃんと聞いてる?」
「あぁ」
「さっきからそれしか言わないじゃないですか!」
「そんなことは……」
「……ですか?」
「なんだ」
「だ・か・ら!!さっきの小さい獣人の事を考えているのですか?!」
「……」
「ん~~っ!もう良いですわ!!」

そう言うなり、セレーナは部屋を飛び出していった。

「はぁ、」

セレーナが開けっ放しにした扉を閉めると、私はソファーに深く腰掛けた。

機嫌を損ねると面倒だと分かっていたのに……。
何をやっているのだか。

私は天上を見上げると、そのまま目を瞑った。
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みんなの感想(6件)

あん
2022.11.06 あん

更新して下さり、ありがとうございます!
大好きな作品なので更新
されてて大はしゃぎです!
これからも応援しておりますので
主様のペースで書いて下さればなと
思います!

どらいもなか
2022.11.06 どらいもなか

こちらこそ、温かいお言葉ありがとうございます。
長らくお待たせしてしまったのにも関わらず、読んで頂けて嬉しいです。
大感謝です!

解除
グレン
2022.05.29 グレン

すれ違いつつも、幸せに向かっていっている感じが好きです。続きが楽しみです。更新待ってます!!

どらいもなか
2022.05.31 どらいもなか

感想ありがとうございます!
私もその流れが好きなので嬉しいです。
更新できていなくて申し訳ないです。
もうしばらくお待ちを…😢

解除
yuri
2022.05.26 yuri

楽しく読ませてもらっています。すれ違いはつらいけど、いつか絡まった糸がほどけて、気持ちが通じあってほしいなぁと思います。
続きも楽しみにしています。

どらいもなか
2022.05.27 どらいもなか

感想ありがとうございます!
楽しんでいただけている様で嬉しいです。
更新が滞っていて申し訳ないです😢😢

解除

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