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「ナオ様っ!?おかえりなさいませ」
「ただいま……?」

出迎えてくれたジョンさんが珍しく慌てている。

「ナオ様、帰ってくる途中でレイモンド様にお会いしませんでしたか?」
「え、レイと?会ってないよ」
「そうですか、入れ違いになってしまいましたね……」

ジョンさんが苦笑いする。

「入れ違い?」
「先程、レイモンド様は慌てた様子でお戻りになられたのですが、ナオ様がまだ戻ってないと知るなり急いで出ていかれたのです」

うわぁ、俺すごく心配かけちゃったんじゃ……。

慌ててメグさんの店に向かうレイを想像して申し訳なくなる。
帰ってきたらすぐに謝ろう。

「ジョンさん、俺──」



バンッ!!

俺がジョンさんに説明しようとした時、勢い良く玄関の扉が開かれた。

「ナオ!!」

叫ぶようにして俺の名前を呼ぶと、すごい形相でレイがこちらにやってくる。
あまりの迫力に俺は顔を上げられない。

絶対怒ってる……。
と、とりあえず謝らなきゃだよな?

「レイ、あの、ごめ──」

だけど、俺のしどろもどろな謝罪は最後まで言わせてもらえなかった。
体が力強い腕に引き寄せられ、抱き締められる。
驚いて顔を上げようとしだが、頭を手で押さえられていて出来ない。

「よかった……」

レイの声が耳の直ぐ近くで聞こえた。 
本当に安堵したような声色に申し訳なさが増す。
密着したレイの体は熱く、鼓動も速い。
走って屋敷とメグさんの店を往復して来たのかもしれない。

「レイ、心配かけてごめん」
「全くお前はっ……」

俺を抱き締める力が更に強くなった。

「レ、レイちょっと苦しいからっ」

レイが体を離すと俺の全身を見る様に視線を動かす。

「何もなかったか?」
「うん」
「怪我もしてないか?」
「大丈夫だよ」
「変な奴に声をかけられなかったか?」
「かけられてない」
「道に迷わなかったか?」
「迷ってない」


一通り質問されると、レイに再び抱き締められる。
さっきまでは、申し訳ないとか怒らせたとかそういう気持ちが勝ってたけど、今はドキドキしてる。

俺、やっぱりレイが好き。
何でもないみたいにするのなんてやっぱり無理だよ。

俺は、躊躇しながらもレイを抱き締め返した。
一瞬レイの体が固くなる。
しかし、直ぐに俺を抱き締める力を強くした。
さっきよりも苦しくなくて、加減してくれたのだと分かる。

「レイ、本当にごめん」
「あぁ……でも、お前が無事なら良い」








「ナオ、話がしたいから寝る前に私の部屋に来てくれ」

いつもより遅めの夕食を摂った後に、レイから言われた。

今日の事、怒られないはずがないよね……。

「うん、分かった」

落ち着けるようにメグさんからもらった紅茶を用意していこう。
そう思った俺はレイと分かれた後、ジョンさんにティーセットを用意してもらい、お茶の淹れ方を簡単に教えてもらった。


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