あなたを瞳にうつす

色無 音恋

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6 __歩都里side__

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「思ったんだけど、歩都里ってさ好きな人とか居ないの?」



 友達との会話でよく上がる話題は“好きな人”というもので私は「本当にいないの?勿体ない。」なんて言われる。

 好きな人、なんてね…。
 まず恋に落ちたこともないし、あの人カッコイイ!とかもこれまで感じたこともなかった。

 だけど、今はちょっと違う。



「本当にって好きな人本当にいないの?」


「好きな人は居ないよ。」


 でも、気になっている人なら…いる。
 好きか嫌いかは分からないけど。


「…うーん。どんな人なら好きなの?」


 友達の2人は真剣な顔をして聞いてくる。
 それはもう、前のめりになりながら。


「どんな人なら…難しいねぇ。そもそも、自分がどうゆうタイプが好きなのかも分からないし…。」


「歩都里も恋愛しなよー!!マジ勿体ないから!!」


「智ちゃんは彼氏とか居るのに~。」


 智は関係なくない?


「恋愛は難しいね。」


 恋愛、恋愛、恋愛…。
 恋愛系の漫画とか小説とかは読むんだけどなぁ。
 いざ自分の事、とかになるとさっぱり。




「___だろ。」


「__で、_____なの?」


「あぁ。」



 私の意識はあちらのグループの方へ向いた。
 男子のグループで中心にいるのは、直登くんっていう人。

 クラスの女子達や別のクラスの女子たちも口を揃えてこう言う。


「直登くんはイケメン。」


 イケメン。
 カッコイイとかクールだよね!なんてのも聞いた事あるけど、やっぱりイケメンと噂になっていたりするのだ。


 うーん。
 イケメンの基準がわからん。


「そうだよ!直登くんなら?直登くんってイケメンだしクールだしイケメンだからさ!!」


「イケメン2回言ったね。」


「そこは大事な所だから。」


「ドヤんないでよ。なんか面白いんだけど。」


「の割には、歩都里さんは笑ってないけど?」


「心の中で笑ってるの。」


「何それ~。」


 直登くん、か…。
 …一応、私が気になっている人でもある。

 気付けば目で彼を追っている。




 何を話してるのだろう?




 最初はそんな感じだった。
 ただ、気になった。

 滅多に笑わない彼の笑顔を見てから。


 友人達といても動くことのない表情。
 なのに、人を見るその瞳はとても優しかったりする不思議な人。


 朝の登校も授業中もお昼の時間も放課後も…一日に何回も目線を向けてしまう。

 見ちゃダメだって思うようにすると、その行動は抑えられた。

 でも、見てしまう。


 目が合うと私はとても嬉しくなる。
 どう反応すればいいのか分からなくなって、結局視線を直ぐ逸らしてしまうのが落ちなんだけれども…。


 この感情は、何なのだろう?


 ちょっとの事で嬉しくなって、彼と目が合わないだけで気分はブルー。



「___で、やっぱり直登くんはイケメンなんだよ!」


「って、まだその話続いてたの?」


 友達は長々と彼の魅力について語っていたようだ。
 私は全くと言って聞いてなかった。


 …ごめんね?



「あ、次の授業がはじまるよ。席につかないと。」


 なんて、時間を見てから友達へ伝える。


「本当だー。じゃ、また次の休み時間にね~。」
 

「はいはーい。」


「バイバイ!」


「おー。」



 2人は自分の席へと戻っていき私は机上に教科書やノートを出した。
 ……授業に集中できるといいな。
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