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第5章
第255話 ロイルSIDE 甘いカップルの一日※
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「キルナの素顔を巡ってさまざまな憶測が飛び交っている」
クライス様が重い口調で告げた。
『すごい美人だった。本当に天使だった』
『あれはもう学園の彼とは別人』
『本当に別人なのでは?』
『眼鏡を外して本物かどうかたしかめたい』
『気になる、何でもいいから素顔を見てみたい』
彼の言う通り、俺も学校で彼に纏わるたくさんの噂を聞いた。このままでは、学園に復帰したときキルナ様の身が危ぶまれる。みんなの意見は一致していた。彼をなんとしても守らなければならない。
「隠すほどに見たくなるという衝動はわかる。俺だってキルナを知らず、初めてパーティーで出会ったりしていたら、何がなんでも探し出す。だが、キルナは俺の婚約者なんだ。奴らに見せたくない」
「本当に、キルナちゃんへの愛はレットルよりも重いですね~」
「もちろん協力します」
ノエルが茶化し、ギアがガッツポーズをしてみせる。
リオンは一人、危険な場所やタイミングをシミュレーションし、見守るポイントをまとめている。
「教室にいる間はもちろん、移動中や、訓練場、あと、トイレの中なども注意したほうがいいでしょうね」
真面目な顔でそう進言するリオンに頷くクライス様。
キルナ様…またトイレの個室まで一人で入れなくなるのか。
可哀想な気もするが、うさぎのルームウェアを着てトテトテと歩く彼を見た後では、異議を申し立てる気分にはならない。
(あの可愛いうさぎ天使の素顔を変な男が見たら……最悪な未来が待っているに違いない)
『も、やめてぇ~ゆるしてぇ~!!』
脳内でうさぎ様が泣き叫んでいる。やばい!
「ロイルお前、トイレに行ったほうが」
横でギアがそう教えてくれ、俺は電光石火の早業でトイレに向かう。
そんなこんなで、昨日から登校してきたキルナ様の護衛作戦が始まった。昨日は主にギアが護衛担当だった。今日は俺、明日はリオンその次はノエルと順番で請け負う。大変であろうことはある程度予想していたが、一日べったりと付くことがこんなに辛いとは……。
想像を遥かに超えた一日が幕を開ける。
朝の登校時
「キルナ、俺から離れるなよ」
「ん、ずうっと一緒にいるから大丈夫。離れないよ」
昼食時
「部屋に戻って昼ごはんを食べに行こう。何が食べたい?」
「んと、オムライスぅ~!」
休み時間
「トイレか?」
「そ…だけど。え、一緒に来る気? んもう、それは駄目だってばぁ!!」
「心配なんだ」
「…………わかった。絶対絶対目を瞑っててね」
入浴前
「キルナ、そろそろ風呂に行こう」
「待って、お風呂セット取ってくるね! あ、今日は自分で着替えるから手を出さないでよ。あと自分で洗うから」
「背中は洗ってもいいんだろ?」
「ん、そうだね。背中なら…いいよ。僕だけやってもらうのもあれだし、クライスのも洗ってあげる!」
「ああ、マッサージのオイルは俺が持つから貸せ」
「ふふ、ありがと。でも…あんまり恥ずかしいとこは触らないでね」
「どこだ? 恥ずかしいとこって」
「えと、それは……」
(ちょっと、待ってください、言わせるんですか?)
俺は慌てて耳を塞ぐ。聞きたいけど。ちょっとこれ以上は色々とやばい。またトイレに行くハメになる。よし、大浴場へ行ってくれた。これで今日一日はほとんど終わったようなものだ。
「ロイル、お疲れさま。明日は私がお二人の警護をします。何か引き継ぐことはありますか?」
爽やかな笑顔で問いかけるリオンに、お前はあれに耐えられるのか? と心の中で呟いてしまう。
今日一日で山盛りの砂糖を食べた後のように、胃もたれしている。
「そうだな、胃腸薬を用意しておいた方が、いいかもな」
引き継ぎ終了。俺はもう寝よう、そうしよう! と決意した。隣からガタン、バタバタと音がする。どうやら大浴場から転移で戻ってきたらしい。
「はぁ、はぁ…ん…はぁ…」
キルナ様の、吐息? (しかもやたら艶かしいな。どうしたんだろう)
この時間ならまた魔力操作の練習だろうか。テアの病室から戻ってきてからまた始めたようだし。
「ああ…動かしちゃ…ん…だめぇ」
「キルナ…理事長室にえらく長い時間いたな。何をしていた?」
「ない…しょ。…あ、そんなとこ…触っちゃやぁ……ていうかクライス、僕…服もう着たいよぉ」
「また内緒か…まあ、理事長室なら安心……もできない。なにせあの理事長がいる場所だからな。何をしていたんだ? なぜ俺が入ってはいけないんだ? まさか大人の魔道具の勉強をしているんじゃないだろうな」
「違うよ。でも…だって……知られたくないから。はぁはぁ。ああ、そんなとこ指入れちゃだめだってぇ!」
もう完全に違うことをしているな……。
「ギア、すまない…俺はもう力が尽きそうだ」
「あ、ああ。無理するな」
「ありがとう」
「はぁ…はぁ…ふふっ。ナデナデしてくれるのうれしい。もっともっとぉ。もっとちょうらい…ん、すごぉい…僕たちの魔力、あまぁくなってきたね……」
「ああ、お前のキスはいつも甘い。何よりも……」
そこから先は聞くことができなかった。
すまない、ギア。あとは頼んだ。
俺はその夜、砂糖と蜂蜜がたっぷり溶け込んだミルクの中に放り込まれ、グツグツと煮込まれる夢を見た。
クライス様が重い口調で告げた。
『すごい美人だった。本当に天使だった』
『あれはもう学園の彼とは別人』
『本当に別人なのでは?』
『眼鏡を外して本物かどうかたしかめたい』
『気になる、何でもいいから素顔を見てみたい』
彼の言う通り、俺も学校で彼に纏わるたくさんの噂を聞いた。このままでは、学園に復帰したときキルナ様の身が危ぶまれる。みんなの意見は一致していた。彼をなんとしても守らなければならない。
「隠すほどに見たくなるという衝動はわかる。俺だってキルナを知らず、初めてパーティーで出会ったりしていたら、何がなんでも探し出す。だが、キルナは俺の婚約者なんだ。奴らに見せたくない」
「本当に、キルナちゃんへの愛はレットルよりも重いですね~」
「もちろん協力します」
ノエルが茶化し、ギアがガッツポーズをしてみせる。
リオンは一人、危険な場所やタイミングをシミュレーションし、見守るポイントをまとめている。
「教室にいる間はもちろん、移動中や、訓練場、あと、トイレの中なども注意したほうがいいでしょうね」
真面目な顔でそう進言するリオンに頷くクライス様。
キルナ様…またトイレの個室まで一人で入れなくなるのか。
可哀想な気もするが、うさぎのルームウェアを着てトテトテと歩く彼を見た後では、異議を申し立てる気分にはならない。
(あの可愛いうさぎ天使の素顔を変な男が見たら……最悪な未来が待っているに違いない)
『も、やめてぇ~ゆるしてぇ~!!』
脳内でうさぎ様が泣き叫んでいる。やばい!
「ロイルお前、トイレに行ったほうが」
横でギアがそう教えてくれ、俺は電光石火の早業でトイレに向かう。
そんなこんなで、昨日から登校してきたキルナ様の護衛作戦が始まった。昨日は主にギアが護衛担当だった。今日は俺、明日はリオンその次はノエルと順番で請け負う。大変であろうことはある程度予想していたが、一日べったりと付くことがこんなに辛いとは……。
想像を遥かに超えた一日が幕を開ける。
朝の登校時
「キルナ、俺から離れるなよ」
「ん、ずうっと一緒にいるから大丈夫。離れないよ」
昼食時
「部屋に戻って昼ごはんを食べに行こう。何が食べたい?」
「んと、オムライスぅ~!」
休み時間
「トイレか?」
「そ…だけど。え、一緒に来る気? んもう、それは駄目だってばぁ!!」
「心配なんだ」
「…………わかった。絶対絶対目を瞑っててね」
入浴前
「キルナ、そろそろ風呂に行こう」
「待って、お風呂セット取ってくるね! あ、今日は自分で着替えるから手を出さないでよ。あと自分で洗うから」
「背中は洗ってもいいんだろ?」
「ん、そうだね。背中なら…いいよ。僕だけやってもらうのもあれだし、クライスのも洗ってあげる!」
「ああ、マッサージのオイルは俺が持つから貸せ」
「ふふ、ありがと。でも…あんまり恥ずかしいとこは触らないでね」
「どこだ? 恥ずかしいとこって」
「えと、それは……」
(ちょっと、待ってください、言わせるんですか?)
俺は慌てて耳を塞ぐ。聞きたいけど。ちょっとこれ以上は色々とやばい。またトイレに行くハメになる。よし、大浴場へ行ってくれた。これで今日一日はほとんど終わったようなものだ。
「ロイル、お疲れさま。明日は私がお二人の警護をします。何か引き継ぐことはありますか?」
爽やかな笑顔で問いかけるリオンに、お前はあれに耐えられるのか? と心の中で呟いてしまう。
今日一日で山盛りの砂糖を食べた後のように、胃もたれしている。
「そうだな、胃腸薬を用意しておいた方が、いいかもな」
引き継ぎ終了。俺はもう寝よう、そうしよう! と決意した。隣からガタン、バタバタと音がする。どうやら大浴場から転移で戻ってきたらしい。
「はぁ、はぁ…ん…はぁ…」
キルナ様の、吐息? (しかもやたら艶かしいな。どうしたんだろう)
この時間ならまた魔力操作の練習だろうか。テアの病室から戻ってきてからまた始めたようだし。
「ああ…動かしちゃ…ん…だめぇ」
「キルナ…理事長室にえらく長い時間いたな。何をしていた?」
「ない…しょ。…あ、そんなとこ…触っちゃやぁ……ていうかクライス、僕…服もう着たいよぉ」
「また内緒か…まあ、理事長室なら安心……もできない。なにせあの理事長がいる場所だからな。何をしていたんだ? なぜ俺が入ってはいけないんだ? まさか大人の魔道具の勉強をしているんじゃないだろうな」
「違うよ。でも…だって……知られたくないから。はぁはぁ。ああ、そんなとこ指入れちゃだめだってぇ!」
もう完全に違うことをしているな……。
「ギア、すまない…俺はもう力が尽きそうだ」
「あ、ああ。無理するな」
「ありがとう」
「はぁ…はぁ…ふふっ。ナデナデしてくれるのうれしい。もっともっとぉ。もっとちょうらい…ん、すごぉい…僕たちの魔力、あまぁくなってきたね……」
「ああ、お前のキスはいつも甘い。何よりも……」
そこから先は聞くことができなかった。
すまない、ギア。あとは頼んだ。
俺はその夜、砂糖と蜂蜜がたっぷり溶け込んだミルクの中に放り込まれ、グツグツと煮込まれる夢を見た。
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